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「結菜ちゃん、今年はチョコ、どうするの?」


陽斗の妹の陽奈ひなちゃんに聞かれるまで

来週がバレンタインだなんて、すっかり頭から抜け落ちていた私は

ポカンとして陽奈ちゃんの顔を見つめた。


そんな私に、陽奈ちゃんがワザと大きな溜息をついてみせる。



「やだなぁ結菜ちゃん。お兄ちゃん、きっと待ってるよ?」



陽奈ちゃんは私たちの2つ年下で中学3年生だったけど

陽斗に似て長身でスタイルも良くて、大人びた彼女は

高2と言っても十分通用するだろう。


元々、私と陽斗がお腹にいた時、最初の子は女の子と決めていた

うちの母親と陽斗のお母さんが、「双子のように」と

「結菜」と「陽奈」という名前を生まれる前に話し合って決めていたのに

生まれたのは、片方は男の子だったというわけで。



陽斗がよく


「どうせ俺は望まれてなかった男の子なんだよな」と

恨みがましく言ったりするのはそのせいで。

もちろん、冗談半分におばさん――陽斗と陽奈ちゃんのお母さん――を

からかってるだけなんだけど。



そんな背景もあって、私と陽奈ちゃんは仲がいい。

早紀と陽奈ちゃんも同じ年なのに、あの2人はあんまりそりが合わなかった。

性格が似ていたからかもしれない。


陽奈ちゃんに言わせると、私は「守ってあげたいタイプ」なんだそうだ。

確かに、家族を事故で亡くすまでの私は、寂しがり屋の甘えん坊だったけど

今は、一人でも立派にやっていける・・・と思ってるのに。




「陽斗・・・待ってないよ。私のチョコなんか・・・」



あの日以来、まだ仲直りできていなかった私は

陽奈ちゃんから目を逸らして呟いた。



「やっぱり・・・お兄ちゃんと喧嘩したの?」



「喧嘩ってワケじゃないんだけど・・・」



「お兄ちゃんこのところ、すっごい不機嫌なんだよ。

 お母さんが『結菜ちゃんに愛想着かされたの?』って聞いたら

 本気で怒っちゃうし」



陽奈ちゃんから陽斗の話を聞いていると

ますます寂しいって気持ちが強くなってくる。



「結菜ちゃんがチョコあげたら、絶対お兄ちゃんの機嫌直るから」



陽奈ちゃんは自信満々だけど

そんなに簡単にいくとは、私にはどうしても思えなかった。







「チョコ、買いに行く?」


「ううん。材料もあるし、家で作るよ」


「わー、結菜ちゃんのお菓子、久しぶりだね!

 トリュフ?チョコレートケーキ?」



なんだか、自分が貰うみたいに目を輝かせてる陽奈ちゃんが可愛くて。

私はニッコリして言った。



「そうだなぁ、フォンダンショコラにしようかな。あれなら簡単だし、失敗しようがないし」


「ねぇ、お兄ちゃんだけ?」


「ふふ、もちろん、陽奈ちゃんにもあげるよ」


「やったー!バレンタインが楽しみ~!」



もしかして、「今年はどうする?」は友チョコの催促だったのかな?

久しぶりに、私の顔には微笑が浮かんでいた。








陽斗の分と陽奈ちゃんの分、それともうひとつ・・・

3つのラッピングされたフォンダンショコラを思い浮かべた私は、ハッとして頭を振った。





あんなこと言っておいて、今更チョコなんて・・・私の顔から微笑が消えた。




 

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