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マリー・グランヒルは愛を教えたい  作者: kwkou
三章 マリー・グランヒルの友達への道
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46話 おんなじ

 メリーちゃんの過去を聞いて、私は自分の心が削られるような感覚がした。

 彼女の過去はまさしく地獄と呼べるようなもので、私が気になっていた疑問が解明されるとともに、理解したうえで私にもしたいことがあったとはいえ、していたことに対する彼女の気持ちを考えて自分の軽率さに少し反省をする。


「メリーちゃん話してくれてありがとう。ごめんね、いままで心配かけてて。」


「いいよ別に、これは全部私の都合でマリーちゃんには関係ないことだから。」


「…でも、」


「そんな気にしないで。…あー、スッキリしたぁ。案外人に話してみると心が軽くなるもんだね。まあ、話す相手がマリーちゃんだったからなのかもしれないけど…」


 まだ雨は降り続けている、きっと彼女のトラウマは、心はまだ傷ついたままだろう。

 けれど、彼女の今の表情を見ているとそれはきっとなんとかなるのだろうな、と言う思いになる。

 彼女の今の笑みはきっとずっと久しぶりに出た心からの笑顔だとそう思った。


「…不思議だよね。こんなにさ、簡単に私の気持ちが変わるなんてさ。ずっとずっと苦しんで生きていくと思ってたのにね。」


「聞き齧った話なんだけどさ、人はみんな不幸なことが起きる、その大きさや重さは違っても人それぞれ苦しみは持ってるって。でも、どれだけ苦しくても生きていたら人はいつか幸せになる、なるべきだって。」


「…素敵な理想だね。」


「そうだね、でもそれが大切だと思うんだ。だからメリーちゃん。約束通り一緒に乗り越えようね。」


「…ふふ、そうだね。でも…それならまずは私、今回の騒動の責任色々取らないとだけど」


「…あ、そうか。そうなっちゃうのか。……ねぇ、この場合ってどういう処罰になるの?」


「んー、まぁ何事もなかったら退学処分プラス何かかな?まあ、普通に犯罪だし罰を受け入れるよ」


「…あ、」


 …そうか、……今回の件怖かったけれど結果的にな話、私自身はそこまで気にしていない。ようやくメリーちゃんのことをしれてよかったと思っているぐらいだ。

 けれど、世の中はそれだけではない。特に私の家族とかには2日とはいえ大きな心配をかけてしまっている。

 それに、彼女のやった行為が許されない行為であることは間違えがない。

 でも、だとしたら私はもうメリーちゃんと一緒に学校にいられないのか…?


「…そんな悲しい顔しないで、別に死んだりするわけじゃないんだよ。…さ、それよりもさ。このまま外にいると私たち二人とも風邪ひいちゃうよ、まずは家に一旦戻ろう?」


「うん、…そうだね」


 嵐が渦巻く空はゆらゆら揺れている。雲の中では落とされる雨粒が擦れ、摩擦が起きる。

 その摩擦は集まり電気となり、空から降り注ぐ稲妻となる。


「わっひゃあ!」


「わあぁ!」


 その光はまるで狙ったかのように私とメリーちゃんの間、そう前に進もうとしていたメリーちゃんの前に落ちた。


「…あ、やっば」


 驚いたメリーちゃんは雨の濡れた道路で急にUターンをしようとして足を滑らせる。そうして、雨で荒れ狂う海に飲まれ落ちそうになったその瞬間…


「…っ!!!」


 咄嗟に走り出し、マリーはその手を落ちていきそうなメリーの手をギリギリで掴んだ。


「…おわっ…とと。…はあ、危なかった。…マリーちゃんありがとう、本当に助かったよ。」


「…はぁ、はぁ。はぁ」


「………マリー…ちゃん?大丈夫…?」


 もし、その場にマリーを知っている人がいたらおそらくみんなその違和感に気づいただろう。

 彼女は胸を頭を抑え、ひどい過呼吸で、見るだけでも顔色が悪い。


 こんな話を聞いたことがあるだろうか。

 人はあまりに辛すぎること、苦しすぎることを体験した時、心をすり減らしすぎた時、鬱になった時、人はそれによって心が壊れてしまう前に脳が自己防衛を行う。

 そう、その記憶を自分の持っていた記憶を忘れるのだ。


 だけれど、その記憶がなくなったわけではない。ふとした時、その光景と重なってしまった時、その記憶はまた思い出される。…あの日、あの雷雨の日のことを…


「…あははは、大丈夫だよ。気にしないで少し頭が痛くなっただけだから。」


「…なら、いいんだけど。…でも、なんかマリーちゃんおかしいよ?」


「…んー、なーんもおかしいことなんてないよー?むしろ気分がいいくらいだもん。じゃあ早く風邪引く前に一緒にお風呂に入ってあたたまろうね。」


「…マリー…ちゃん?」


「安心して、私はもうどこにも行かないよ?ずっとあなたのそばにいるよ?ずっとずっとずっと一緒いるからね?あはは!」


 彼女が明るく、笑顔で、笑って、回って、踊って、メリーをまっすぐ重ねて見る。

 そんな時、メリーは見た…彼女の目を。彼女は知っていたその瞳の意味を…ずっと鏡で見ていたのと同じ瞳を…

 ーその瞳には光がない

 ーその瞳には色がない

 ーその瞳には今が、見えていない。

 ーそんな瞳をそんな心を持った人を人は「絶望」と呼ぶんだ。






…ずっと重ねてたのはあなただけじゃない。

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