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マリー・グランヒルは愛を教えたい  作者: kwkou
三章 マリー・グランヒルの友達への道
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38話 もう一つの手紙

様々なものにハマりすぎてペースが死んでる




 その後、お母さんに呼ばれご飯を食べるものの何故か味がしない。

 理解が追いつかず、脳がボーとしている。手紙の最後の一文、何故、彼らが口を揃えてクラメルを揃えていうのだろう?

 一番考えやすいものは彼女がそのチームのリーダー的存在であること。

 しかし、少ししか関わってなくても彼女がそんな人であるとは思えない。

 それにあの日あんな絶望の瞳をしていた人がそんなことをしているとは到底思えない。

 では、一体…


「マリー様、大丈夫ですか?箸が止まってますが」


「…あ、いや大丈夫。ちょっと考え事してただけ」


「早く食べないと冷めてしまいますよ」


「うん、」


 ルイちゃんに呼ばれようやく現実に意識が戻る。そうだ、まだ決めつけるのは早い、まずはご飯を味わってマオさんの手紙をよもう。


 今日のご飯はグラーム家からお詫びとしてもらった青椒肉絲だった。


***


 私は部屋に戻り机の上に置かれているもう一つの手紙を手に取る。

 まだ、手紙を読んだ衝撃は消えていない。それでも私にはこれを読む義務がある。

 自分で知りたいと頼んだのだから読まないなんて選択肢はないのだ。


「マオさんの手紙、これにはメリーちゃんの過去がのっているんだよね。」


 メリーちゃんが過度にクラメルを恐れる理由、そのヒント、もしかしたら答えがここに書かれている可能性が高い。そして当然、それにはクラメルが関係しているはずだ。

 あの時、あの優しい彼女が本当にそんな人なのか、その真偽が少しでも分かれば…


 私はより大きな不安と怖さとほんの少しの好奇心を抱えつつも、覚悟を決め、深呼吸をして私はマオさんが送ってくれた手紙を開いた。


***


「…」


 それから手紙を読み終えた私の頭には3つの疑問と共にいろんなことが駆け巡っていた。


 調査の報告書のように書かれた手紙にはメリーちゃんに関する情報が箇条書きで書かれていた。

 まず書かれていたのはメリーちゃんの家族構成、名前、年齢などの私も知っている情報、その中で知らなかった情報としては彼女の父親がマーガレット家の大半の業務を担っているということだけである。

 そして前メリーちゃんが休んだ時に知った、彼女の母親がすでに亡くなっているという情報。

 そして今、メリーちゃんは使用人などを一人も雇わず父親と二人暮らしでいるということが前提知識として書かれていた。


 私もここら辺の話は彼女と関わっているうちに知っていたことであり、彼女についての確認のようなものだと思われる。

 ここで一つ疑問があるとすれば、何故彼女もまた使用人を一人も雇っていないのか、ということである。

 彼女の父親は前述した通りマーガレット家の仕事の大半をこなしている人で基本的に家にいない、それすなわち彼女はほとんどの時間を大きな屋敷で一人で過ごしているということになる。

ー何故使用人を雇わないのか、これがまず一つ目の疑問だ。


 …そして本題、メリーちゃんの過去について、手紙に書かれてた情報、それは…


 メリーちゃんの母親が死んだのは約5年前、それにはクラメルもとい「シャドウメモリー」が関わっているということ。


 今までの彼女の言動や態度からある程度予想はついていたものの、それが外れていることを心の中で祈っていた。

 もしかしたら本当にクラメルは極悪非道の最低な人間なのかもしれない、そんな思いが心のどこかで溢れてきた。

 彼女は間違えなく皮をかぶっている、あんな絶望している瞳を一切表に出していない。だからこそ、もしかしたらその瞳さえ偽物だとしたら…

 そんな思いが、疑問が浮かんできてしまう。

ーこれが、二つ目の疑問。疑いたくもない話。

 

 そして3つ目、それは情報が少ないということ。

これだけ調べてもらっておいて何を言っているのかと言われるかもしれないが、何もおかしな話ではない。

 この情報を調べたのはあのマオさんなのだ。まだ出会ってから1年も経っていないとはいえ、ありとあらゆる面で天才と感じるほどできないことがない人。それに今回調べるにあたっておそらく彼女はテンサンス家という肩書きも使えるはずなのに、わかった情報の詳細がない。

 どこで、誰が、何人ほど、どんなふうに、どうして、そう言った情報が。


「そこまでわかったらおかしくない?当時の人でもないのにどうやって記録を残したの?」


「サルネ様が前別のことを調べた時はそこまでわかったって言ってて、それにマオさんもそこまで調べられるって」


「…へぇ、じゃあなんで今回はわからなかったんだろうね。」


「さあ、私の予想だと四大貴族関連だから規制がかかったとかなんじゃ………………え?」


 私は、今…誰と会話しているんだ?

手紙の情報整理に脳のリソースを使いすぎていて今のおかしな状況に気づかなかった。

 声は後ろからする、手紙が置いてある机の後ろに…


ーいつから後ろにいたんだ?

ーなんで話しかけてきたんだ? 

ーどこから聞いていたんだ?

ーそもそもこいつは誰だ?


 声に聞き覚えはある、だけど私の友達とはどれも雰囲気が違う。

 いや、予想だけでは何も変わらない。まずは確認しないことにはどうしようもない。


「…」


「…どうしたの?確認しないの?ただ振り向くだけだよ?」


 そうだ、振り向くだけだ、振り向いて誰か確認して、助けを読んで…

 ただそれだけのことなのに何故か体が動かない。

声も出ない、足も動かない、ただ鼓動が早くなる心臓の音と荒くなる呼吸の音を聞くしかできない。


「…やっぱりまだ、全然大丈夫じゃないじゃん。なのに休みもしないで…。なんで?」


「…」


「はは、もう声も出ないんだ。足も震えちゃって、…全てはあの女が悪いもんね。仕方ないよ。シャドウメモリーもクラメルもエレクトロ家も全て全て全て、壊さないと、消さないと、無くさないと、」


「…まって、どこでそれを!?」


 誘拐犯の情報は現在四大貴族クラスの秘匿となっている。グラーム家にとってもエレクトロ家にとっても不都合でさらに「シャドウメモリー」という危険な存在を明かしてみんなを混乱させるわけにはいかないと…そう言った理由で。

 そう、だから私は思わず振り向いた、あれだけ重かった体がスッと動いて後ろを向いた、そう向いてしまった。


「…え?」


「やっほー、マリーちゃん。来ちゃったよ」


「…メリー、ちゃん?」


 そこにいたのはこの世界の私の親友であるメリーちゃん、な…はずだ。

 しかし、頭でわかっていても同一人物とは思えない。雰囲気も声のトーンも違う。

 顔以外の何もかもが私の知っているメリーちゃんではない…だってその雰囲気はまるで


「ね、マリーちゃん。私とお話ししようよ」


 まるでこの世の全てを恨んでいる復讐者のようなそんな雰囲気だったから…

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