37話 ミリーの手紙
「ただいまー」
「おかえり。…あら、マリー今日は早いのね」
「うん、たまにはね」
「ルイちゃんもおかえり」
「はい、ただいま帰りました。」
家の扉を開けるとお母さんが私たちのことを迎えてくれる。
なんてことない、ただのただいまの挨拶もとても温もりを感じられる。
「ふふ、二人とも仲がいいのね。一緒に手を繋いで帰ってくるなんて。私羨ましいわ」
「あっ…」
しまった!私、手を繋いだまま馬車になってそのまま帰ってきちゃった。
いや、別におお母さんになら見られてもなんともないんだけど、なんかちょっと恥ずかしい…
私はその気恥ずかしさからパッと手を離す。
そしてルイちゃんの方を見るとどうやらルイちゃんも手を繋いでいることに無意識だったらしく、私と同じように少し顔が赤くなっている。
「ふふ、二人ともかわいいわね」
「…もう、揶揄わないでよお母さん。」
「…ふふ、ごめんね。…さ、これからご飯を作るから部屋で荷物とかおいて少し休んできなさい。」
「「はーい」」
***
「さて、ご飯ができるまでまだ少し時間があるし、もらった手紙でもみようかな」
「いいと思いますよ。…それでは私はここら辺で、別の仕事してきます」
「…うん。」
パタンと扉が閉まり私はまた一人になる。これがいつもの光景だったはずなのに何故か心細く感じてしまう。
どうやら私は本当にまだ心の傷が癒えていないらしい。
あの時間から1日しか経ったいないから当然と言えば当然なのだが、こう言ったトラウマを持つのは初めてで慣れていない。
「…でも、ルイちゃんだって忙しいんだ。私の都合でずっと縛るわけにもいかないよね。気持ちを切り替えてまずは手紙を読もうじゃないか」
さて、ルイちゃんによるとどうやら手紙は2枚来ているらしい。
一つはミリーさんからもう一つはマオさんからだ。
マオさんからはメリーちゃんのこと、そしてミリーさんからはおそらくあの夜話そうとしたいことについてだろう。
開けなくてもわかる、この二つはきっと私にとって大事な情報だ。
それなりの覚悟をもっていかないと…
「まずはミリー様の方からみようかな…」
私はどんなことが書かれているのか少し不安を覚えながらも一歩を踏み出し手紙を開いた。
ーーーー
マリーさんへ
まずはこんな形で伝えることになってごめんなさい。
本当は私の口から伝えたかったのだけれど、色々あったからどうしても時間がなかったし、私にも勇気が足りなかったわ。
この話は私、いえ私の家グラーム家が大きく変わった時間だったの。
私の家はもともと4人家族の家で私には3歳上の姉がいたわ。
姉は家では口が悪かったのだけれど外では容姿端麗、上品で完璧令嬢として振る舞っていたわ。
そして何よりも正義感が強くて、本当にすごい人だったわ。
私は彼女をとても尊敬していて、彼女も私を妹として愛してくれていたわ。
家族ともメイドたちとも仲が良くて本当に幸せだったわ。
だから私はこの幸せがなくなるなんて絶対にないと思っていたわ。…そう、あの日までは。
前にも言ったけれど、あの日私は姉と専属メイドのリネと一緒に買い物に街に出かけていたの。
それでみんなで服を買った帰り道、私は路地裏に入っていく猫を見つけたの。
私は猫が好きで当時3歳ぐらいだった私は何も考えず、その猫入って行った路地裏に行ってしまったの。
そしたらね、上から急に二人、人が降ってきて、いきなり私に向かって剣で切り掛かってきたの。
私はあまりに突然のことに何も反応できず、恐怖から目をつぶったの。
そしたら切られた音がして…それなのに私の体はどこも、痛く、ない。
それで…ゆっくり目をかけたらお姉ちゃんが私を庇って切られていて、もう一人はリネが飛びかかって止めていて…
ーーーー
紙に書かれている文字がところどころ震えている、書いているところ見なくてもわかるぐらいその文字にはその時の恐怖が刻み込まれている。
読む手が、止まってしまった。あの夜の途切れ途切れの言葉でもここまでは予想できていた。
でも、それでもやはりその時の光景が頭に浮かんできて、読みたくないという気持ちが生まれてくる、
しかし、結末を知らなくてはミリー様の覚悟も大切な情報も全て逃してしまうことになる。
だから、私はその止まってしまっている読む手を進める…
ーーー
目の前には地獄が広がっていたわ。お姉ちゃんもリネも私を庇って怪我をしてそれでも抵抗して…
…もうそこから先は覚えていないわ。ただ気づいた頃には騒ぎを聞いた人が周りに集まってきていて、そこにはいろんなところを切られたリネが倒れていて、もうお姉ちゃんの姿はなかったわ。
その後、すぐに捜索隊が出されたんだけれど、結局どこにもお姉ちゃんの姿はなくて…
リネは一命は取り止めたんだけどもうメイドができる体ではなくなっていたわ。
…前言った、うちのメイドの中にスパイがいるとわかったのはその事件の後メイドが一人減っていてそのメイドの部屋からたくさんの私たちに関する情報が見つかったから。
ボディガードだけになったのはそれでお父さんが恐れて二度と同じことが起きないようメイドをクビにして守ってくれるボディガードを雇ったから…
なのに…ね、またうちで誘拐されて…私たち何を学んだのかしら?
ごめんなさいねマリーさん、私たちが悪かったわ。
そして最後にその誘拐してきたチームの一員を捕まえた時の情報を…
彼らは「シャドウメモリー」この国で指名手配されている犯罪集団、そして彼らは口を揃えていう、「我らがボス、クラメルに栄光あれ」と
ーーー
「…え?」
手紙を読んで感じたミリーさんの辛い過去も、やっとわかったいろんな疑問も、読んでいてなった悲しい気持ちも、最後の一文で全てが消し飛んでしまった。
この手紙が真実だとするなら、ミリーさんを襲い、私を誘拐したグループのリーダーは…
「クラ、メル…?」
思考が追いつかない私はその場に落としてしまった手紙を眺めることしかできなかったのであった。




