35話 傷跡
「おはよう。」
「あ、マリーちゃん。聞いたよ誘拐されたって、大丈夫だった!?」
「あ、うん。ミリーさんたちのおかげで助かったよ」
今日は月曜日、色々あったお泊まり会の次の日で私は何事もなかったように学校に登校していた。
親からは今日ぐらい休んだらと言われたが休んでいるよりいつもの日常に戻っている方が安心するので登校することにした。
どうやら私が誘拐されたことは噂になっており、開始早々メリーちゃんに心配された。
どこから情報が漏れたか知らないが、知り合いにはだいぶ心配をかけていそうで少し申し訳なく思う。
「マリーさん!無事だったのね。よかったわ、私も話を聞いた時すごく心配していたもの。」
「サルネ様…はい、大丈夫ですもうなんともありませんよ」
「…そう、まあ今日一日いつもの日常を楽しむといいわ」
「?」
「じゃあ私は用事があるから失礼するわ」
「あ、はい。心配してくれてありがとございました。」
サルネ様の耳にも届いていたのか…うーん、これはしばらくみんなに心配かけそうだな…
とてもありがたいがなんかちょっと申し訳ない…
「マリーさん、」
「ん、?あ、クラメル様」
「私も聞いたわ、誘拐されたって…大丈夫だっ…」
ーバシンッー
「触らないで!!」
「え?…メリーちゃん!?」
クラメルも噂を聞いたようで、彼女もまた私を心配してきてくれた。
そして、少しこちらに手を伸ばそうとした瞬間、メリーちゃんがクラメルの手を叩き落とした。
だいぶ力強くやっており少しクラメルの手が少し赤くなっている。
「メリーちゃん!?何やってるの!?」
「…いいのよ、マリーさん。…無事でよかったわ」
それだけ言うとクラメルは少し申し訳なさそうな顔をしてその場を去っていった。
「メリーちゃん。…なんであんなことしたの?せっかく心配してきてくれた人の手を叩くなんて…」
「マリーちゃんは、知らなくていいよ」
「いや、でも…」
「あなたには関係ないから…」
「メリーちゃん…」
いつもの明るい性格が嘘のように彼女からは負のオーラを感じる。
先週まではこんなことはなかったのに、何かあったのだろうか…
ーキーンコーンー
「あ、チャイムだ。席に戻らないと」
「うん、今日一日中頑張ろうねマリーちゃん。」
新しい一週間が始まり、また少しずつ変わっていっている日常でいつも通りなチャイムに私はなぜか安心感を覚えるのであった。
***
放課後、今日も今日とて私は生徒会室で勉強をするためにそこへ向かっていた。
あんなことがあったあとなのでミリーさんからは休んでもいいと言われたが、ここで休んでいてはクラメンの点を超えるなんて無理だ。
だからこそ、少し無理してでもやらなければならない。…ただ…
「…やっぱりこの時間、一人でいるのは怖いや」
時刻は夕方、日も沈み始めて空には赤い光が差し込み始めている。
だんだん暗くなっていく時間で私はどうしても不安が残っている。
誘拐されたときの不安はまだまだ健在だ。何もないとわかっていても、心のどこかでもしかしたらを考えてしまっている。
「…少し、足震えちゃってる…。」
ミリーさんに会うまでそこまで距離はないのにその距離が無限に続くように感じてしまう。
私の心はまだ、全然癒えていないのだ。
「ふう、深呼吸して心を落ち着かせないと…」
「スー、ハー、スー、ハー」
「…よし、気合いを入れて勉強するぞ」
あとはこの曲がり角を曲がればそこが生徒会しただ。
「ばぁ、!」
「わっ!?ひゃあ!?」
「ふふふ、驚いた?」
角を曲がろうとした瞬間、目の前から一人の少女が出てきた。
その少女はちんまりとした見た目をしており、ショートヘヤーで子供みたいな見た目をしていた。
「あ、あ、あな、たは?」
「…あれ?どうしてそんなに震えているの?まさか驚きすぎて腰抜かしちゃった?」
「ち、ぢかう。」
ただ、一瞬思い浮かべてしまっただけだ、角から急に襲われる光景を…
だから、今私は体が震えて、腰が抜けて、足に力が入らない…
助けて欲しいが今一番近くにいる人はただイタズラでこけた私の反応を見て笑っているだけだ。
私はこの少女に怒りも湧いてきているものの、やはり体の力が抜けているため動くことはできない。
「ははは、面白いねおねーさん。…そんなにまだ怖いのになんで帰らないの?」
「え?」
「ただ驚いただけで襲われるかもって、思っちゃったんでしょ?そんな状態で君の目的は達成できない。君に今必要なのはできるだけ心の傷を癒していつも通りに戻ることだ。」
「…」
「今の君が無理していることはみんなにバレているんだ。たとえ表面上で隠してもサルネもミリーも彼女らの目を通せばわかるんだ。心配かけたくないと思いながらそんなことをするなんてバカのすることさ」
彼女は淡々と私に話をしてくる。さっきまでの雰囲気が嘘のように彼女からは迫力のあるオーラが流れてくる。
言葉の一つ一つは正論で反論の余地のないような正しいことを話し、こちらの全てを見通したような目をしている。
「あ、なた、は…?」
「私かい?私はミラ、ミラ・アレクトロだ。何、君がよく通っている生徒会のしがない生徒会長さ」
目の前にいるこの子供みたいな少女はなんと四大貴族で最も力を持っているアレクトロ家のご令嬢だったのであった。
あー、ゼンゼロやってみたかったなー(容量不足人間)




