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マリー・グランヒルは愛を教えたい  作者: kwkou
三章 マリー・グランヒルの友達への道
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33話 光

 コツ、コツ、とこちらに足音が聞こえてくる。

まず間違えなく誰がきていることがわかる。

 また、誘拐犯のみわまりだろうか?それとも、助けがきたのだろうか、それとも…


「…」


私は静かに扉に耳を当てる。足音から大体二人ぐらいが歩いているのがわかる。少したつと距離が近づき話し声が聞こえる。


「…だ、そちらの様子は?」


「はい、以前入口共に異変なしでございます。」


「そうか、引き続きネズミが来ないか見張をしておけ」


「了解しました。」


 片方は下っ端のような口調でもう片方が命令をしている。…わかっている。命令口調な方は間違えなく、ここの上司に値するタイプの人だ。


 コツ、コツ、コツ、と一歩、また一歩と近づいてくる。

 その後はまるで死神の足音にも聞こえ、体の震えが止まらない。

 コツ、コツ、コツとその足跡はとうとう扉の前まできてしまった。


「おい、聞こえてるか?ミリー。」


「ひっ、」


「どうした?そんな怯えた声出して。ははは、いい気味だよ全く。ようやくあの時の借りを返せるぜ。」


「…なんだよ無反応かよ。つまんねぇなぁ。…ちぇっ、本当はお前の怯える顔がみたかったんだが…、

ボスの命令で扉開けれねえんだよなぁ…」


「…ま、明日にはお前の惨めな顔が拝めるし、それを楽しみにしておくか…、せいぜい最後の時間楽しめよ〜」


 また、耳を澄ますと一歩また一歩と遠ざかっているのが聞こえる。

 そして足音が聞こえなりようやく私の緊張の糸は切れる。


「…はぁ、はぁ。…よかった。バレてない」


 一息、もう一息と肺に酸素を取り込む。私は彼にミリーさんではないとバレないために一か八かで息を殺すことにした。

 運の良いことに相手は相手のボスから扉を開けるなと言われていたようで…本当に助かった。


「…まだ、体が震えてる」


 ひとまずの安心もやはり長くは持たない。今、私は常にいつバレるかという恐怖に狩られ続けている。


「…明日には私は絶対に偽物だとバレる」


 さっきの男の話が本当ならば私は明日には顔を見られて偽物だとバレるだろう。

 つまり、私は今必ずくる終わりと、いつ来るかわからない終わりの恐怖で挟まれている状況と言える。


「…あ、…れ?…なんか……涙が…」


 どうしたんだ私…、なんで急に…

……ああ、そうか…


「心が…壊れ始めちゃってるんだ」


 死の恐怖ってこんなに怖いんだ。前世で死んだ時とは比べ物にならないぐらい怖い。

 不思議だよな、前世では働きすぎてずっと死にたいと思っていたのに、今、私はこんなに死にたくないと思ってる。


…だって、この生活は本当に楽しいから。






ーガチャー




「…え?」


 なんの前触れもなく突然扉の鍵が開いた後がした。

 隣の扉とかそういうのではなく本当に私の部屋の扉の鍵が開いた。

 そして扉はゆっくり、ゆっくり開いてゆく…


 私はもう部屋の隅で怯えることしかできない。

 きっと、私が偽物だとわかった誰かが私を殺しにきたのだろう。…そうだ、そうに違いない

 本当なら私は角で開けられるのを待って少しでもチャンスを掴みに行くべきなのかもしれない、

…でも、もう私には部屋の角で震えることしかできない。


 扉が開くまでの時間が無限にあるように感じ、扉が開いていくたびに私の恐怖は膨れ上がって行く。

ガタガタ震える体にもう私は目も開けれず、その時を待つしかない。


 ゆっくり、ゆっくりと足音はこちらに近づていき、そして次の瞬間…


ーボフー


 私の体を包み込むように私は抱きしめられた。


「…もう、大丈夫ですよ。マリー様」


 すごく聞き覚えのある、温かい…ずっと望んでいた声がする。

 私がゆっくり目を開け上を見るとそこにはやっぱり見覚えのある顔があった。


「…ルイ、…ちゃ、ん」


「はい、マリー様専属メイドのルイです。マリー様助けに来ました」


「ル、イちゃん。ルイちゃんルイちゃん!ルイちゃん、ーうあぁぁぁああん。怖かったよ〜」


「よしよし、大丈夫ですよ。マリー様、私はここにいます。…さあ、一緒に逃げましょう」


***


「…合図がきたな…。さあ、お前らいくぞーー!!」


「「おお〜」」


 外で合図を受け取った騎士団が次々と敵のアジトに入っていく。

 すでに入り口の奴らは気絶させれており、この圧倒的な数の前では相手が捕まるのも時間の問題だろう。


「はあ、よかったわ。…ルイさん、マリーさんを見つけられたのね。」


 それからしばらくして、マリーさんはルイさんと共に建物を出てきて、誘拐犯はほとんど確保された。

 しかし、一部勘のいい奴らは先に逃げてしまっており、情報を得ることはできなかったのであった。


***


暗闇の路地裏で一人の男が走って逃げていく。…まるで何かに追われているように…。


「…くそっ、なんでこうなったんだ!俺はただ俺に恥をぬった、グラーム家のやつを…」


「…おい、待てよ、」


「ちっ、もうきたのかよ。…くそっ、お前はなんなんだ!?」


「はっ、まさかお前自分が恨みを持っている相手すらも顔が少し変わったらわからんのか」


「…何言って、ってまさ…」


「気づいてももう遅せえよ。お前ももうお縄だ」


 その女性は一瞬で男との間合いをつめ、一撃で気絶させた。

 あまりの速度につけていた眼帯が吹っ飛んでしまっている。

 その緑髪の彼女は慣れた手つきでその男を縛りながら、空に何かを呟く。


「…ミリー、元気にしてっかなー」


 その言葉はここではどこにも届かない。

彼女の左目には剣で付けられたような傷が一本入っていた。





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