28話 気まずい空気
我ながら執筆のペース遅すぎてやばいわ
私が質問した瞬間、目に見えて空気が凍った。
さっきまでの雰囲気が嘘だったかのように重くなり、彼女たちの表情からは笑顔が消える。
「…あ、なんでもないです。気にしないでください。」
「…」
沈黙の気まずさから焼石に水だと分かっていても私はありきたりな言葉で空気を誤魔化そうとする。
もちろんこの空気に何か変化が起きるわけもなく以前変わらず冷たい空気が漂っている。
私としては軽い疑問のつもりだったのだが、まさかこうなるとは思いもしなかった。
わかりやすい違和感に飛びついた結果、地雷を踏んでしまったのだろう。
本当は原因について考えたいところであるがこんな空気の中で黙ったままなのは耐えられない。
少し勿体無いが、こういう時は…
私はさっと箸に手を伸ばして残りのご飯をかき込む。少し行儀は悪いがやむをえないというものだ。
「ごちそうさまでした!先に部屋に戻ってます!」
「…あっ、私もご馳走様。」
そう急いでご飯を食べ、私はこの気まずい空間から逃げ出すように部屋をでた。
そして、ミリーさんもそんな私の姿を見て同じようにさっとご飯を食べて部屋をでたようだ。
そして私たちはそそくさと部屋に戻って行った。
「ふぅ、やっと息が抜ける」
「ごめんなさいね、マリーさん。変な空気にしてしまって…」
「いえ、こちらこそすみません、聞いてほしくないことだとは思っていなくて…察しが悪くてすみません。」
「それは……」
「「…」」
まずい、せっかく気まずい空気がいやで部屋まで逃げてきたのに、またこんな空気になってしまっている。
これでは逃げてきた意味がない。何か空気を戻すことを話さなければ……
えーと、何か、何か、話題転換になる話は…
「な、なんでボディーガードしかいなかったんですか?」
って、ちがーう!!何を聞いているんだ私!?
この話題で空気が気まずくなったのになんでまた聞いているんだ!?
確かに気にはなるけど絶対今じゃないし、混乱と焦りでわけかわからなくなって…
とりあえず誤魔化さなければ…
「す、すみません。空気を誤魔化そうと思ってさっき言ったことは気にしないでください。」
「…そんなに、気になるのかしら?」
「いえ、別に話を広げようとちょっと感じたことを言っただけです」
嘘です、気になってます。話を広げるつもりだったのは本当だが、気になっていないわけがない。
四大貴族の令嬢の家に世話係のメイドが一人もいないなんて普通じゃ考えられないし、やたらボディーガードが多いのも気になる。
でも、話せないレベルの事情ならば聞く必要なんてないし、そこまで踏み込むのは失礼に値する。
ーうん、そこまでわかっているのになんでさっき言ったんだ?私
おそらく彼女にも私が誤魔化しているのは伝わっているだろうが、彼女も流石に自分の家系の秘密なんて言えないだろう。
できればこれで空気を一転して最初の目的である勉強に移りたいのだがどうだろうか?
そう思い彼女を見ているとおそらく彼女もそれを察したようで…
「…そうね、ならいいわ。今いうべきことでもないし…」
「どうしました?」
「なんでもないわ。さあ、気持ちを切り替えて勉強しましょう」
「…!。そうですね、そうしましょう!」
そうしてようやくあの空気から解放されたことに安心し、ようやく当初の目的である勉強会が始まったのだった。
***
「すいません、ここはどうやるんですか?」
「ここは、この公式を変形してこっちに代入して…」
「ああ、なるほど、えーと…できた!」
「そう、正解よ」
学校から帰った初日の今日は今日やったテストの直しをやっている。
もともと帰ったのが夜遅めだったので今日はあまり勉強ができないため、いつでも終われる直しをやっているというわけだ。
当然、勉強を気持ちよく始めるためにお風呂は先に済ませてある。
そして勉強すること2時間、時間はもうそろそろ
24時を回ろうとしていた。
「さあ、マリーさん。そろそろ寝ましょう。休むことも立派な勉強よ」
「あ、はい。わかりました。あとこの問題やったら寝ます」
「…やっぱり、真面目なのね。あなた…」
「はい?どうしたんですか急に…」
「いえ、さっきはまだ早いと思ったけれどクラメルとこれから絡もうとするなら知っておくべきと思ったのよ」
「…なんの話ですか?」
彼女の表情はまた、いつもと同じ怖い顔つきになっている。
けれど、今までとは、また違う本当に真剣であるということが伝わってくる表情をしている気がする。
そのため、私はさっきの言葉とその表情からなんとなく話の察しがついてしまった。
私の勘が間違っていなければ彼女は…
「うちにボディーガードしかいない理由教えてあげる」
そう、彼女は私が踏んでしまった特大の地雷であるだろう話題を話そうとしていた。