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マリー・グランヒルは愛を教えたい  作者: kwkou
三章 マリー・グランヒルの友達への道
25/56

24話 点数アップ作戦

***


「…次は勉強についての案ですけど、私が死ぬほど頑張るというのを前提としておいて、効率よく点を上げる方法やミスを防ぐ方法について考えて欲しいです」


「そう、なら生徒会に行くといいわ」


「生徒会…ですか?」


「ええ。マリーさん、生徒会が優秀な生徒の集まりということは知っているかしら?」


「…あまり知らないですけど、こんな頭のいい学園ならなんとなく予想はできます。」


 完全に前世の漫画の知識が入っているのだが、こういう令嬢学校での生徒会は頭のいいイメージがある。

 それに前メリーちゃんに生徒会長が四大貴族のアレクトロ家とも聞いていたし優秀である予想は簡単にできる。


「実はその中に私の友人が何人かいて、一人とても頭がいい子がいるの。」


「…もしかして、教えてもらうということですか?」


「その通りよ。彼女ならきっとあなたの点をあげれると思うわ。…本当は私ができたらいいのだけどどうしても予定があるのと満点まではあげられないからね」


 彼女は少し悔しそうにそう呟いたのが聞こえた。

 私はいつものように彼女自身の優しさを感じつつ、頼りきりであることの罪悪感をほのかに覚える。

 しかし、他に方法も思いつかないので勉強についての作戦はそれに決まったのであった。


***


「…ここか、」


 私は手元の地図を見ながらサルネ様に言われた生徒会室に到着した。

 何故地図を持っているかというと、このバカでかい学園で見知らぬ校舎で特定の教室を探そうとすると普通に迷うからである。

 教室の場所が分かりずらいのは学校として致命的である気がするがどうしようもないことなので仕方がないと諦める。


 私は少し緊張とともに扉を二度ノックして教室に入った。


「失礼します…サルネ様の件で勉強を教わりに来ました」


「はい、いらっしゃい」


 扉を開けるとそこは両側に大きめのソファーがありその奥に事務用と思われる机や書類があった。

 そしてソファーに座りながら書類を整理している一人の令嬢が目に入る。

 その人は緑色の髪をもち鋭い眼光がメガネから覗いている。


あれ?なんか前どこかで見たような…あっ、

まっずい。


「あれ、あなた…」


「あ、ではこれで…」


「?!…待ちなさい!!」


 途端に気まずさと身の危険を感じた私はそっと扉を閉めて全力で逃げ出した。

 こういう時は逃げるが勝ちだ。


 さっき生徒会室にいた彼女の名前はミリー・グラーム。グラーム家出身の四大貴族の一人である。生徒会では副委員長兼書記長を担当しているらしい。

 彼女は生徒会の中でも特段風紀に厳しく、その鋭い眼光によって腰を抜かした人は多々いるらしい。


 ここまでの内容で気づいた人もいると思うが、彼女は前ハナちゃんとクラメルをストーカーしている時に屋上の階段で話しかけてきた人なのである。

 あの時、私は彼女の元を全力疾走で逃げたため、あの行為とともに何を言われるかわからない、たがらこそ私は逃げている。

 正直、今彼女といるのは気まずすぎるのだ。

 なので今度ちゃんと謝る準備と心の準備をしてから改め直したいのだ。


 …しかしまぁ、現実はそう甘くはない。

 先ほども言ったがこの学園はバカでかい。

地図がない状態で見慣れないところにいると余裕で迷う。

 もちろんサルネ様からもらった地図はまだ持っているものの、あまりに焦りすぎてそのことが頭から抜けてしまっている。

 つまりは大都会を一人で地図なしに目的地を目指すようなものなので…


「はぁ、はぁ、捕まえたわよ」


「ひっ…」


 道を間違え行き止まりに行ってしまうまでそう時間はかからなかった。


「はぁ、…全く、…人の顔を見てすぐ逃げ出すんじゃないわよ」


「す、すいません…」


 彼女はもう逃すまいと強く私の腕を掴み私に迫ってきた。

 さらに私をその鋭い眼光が睨みつけており本能的に逃げられないと悟る。

 こんなことなら逃げずにすぐに謝ればよかったなと思いつつ、こうなってしまったからには、と怒られる覚悟を決めた。


「…ここでは話しずらいからまずは生徒会室に行くわよ」


「はい…」


****


「それで?何で逃げたのかしら?」


「…前のことでどうしても気まずくて一回心の準備をしてからにしたいと思って…」


「…その気持ちは分からなくないけど逃げてはダメよ。そういう時はまずは謝るのが大切なの、わかる?」


「はい、すみませんでした」


「ええ、それでいいのよ」


 生徒会室に戻ってから私は案の定怒られた。しかし、予想と違ってミリーさんは私に対してまるで先生のように優しく注意してくれた。

 終始眼光はキランと光っているようで怖かったもののこちらをきちんと思い遣っているような注意の仕方で噂からのイメージよりも優しいと感じた。

 私は自分の行いをきちんと反省しつつ、これから始まるであろう勉強に対して気合を入れた。


「…あなた、案外素直なのね。」


「へっ?」


「いえ、何でも。さあ、とりあえず勉強を始めるわよ」


「はい、」


***


「まずは目標の確認ね。あなたはクラメルよりも良い点を取る、つまりうちの学園のテストで満点を取り合いということで間違えないかしら?」


「大丈夫です。」


「良かったわ。そうと決まればまず、あなたの現状を知るのが大切ね。マリーさん、まずはこれを解いてちょうだい。」


 そう言って彼女は机の上に置いてあった封筒の中から紙を取り出して机の上に置いた。

 紙を見るといつも学校でテストと酷似しているプリントになっている。


「これは?」


「簡単な模擬試験よ。私がいつもテスト対策で使っているやつを一つ家から持ってきたの」


「すごいクオリティ高いですね。」


「ありがとう。グラーム家は商人の家系なだけあってこういうプリントを作るのが得意なの。」


「へぇー」


 確かに商人の家系ならば書類などをよく使うイメージがある。

 このプリントの問題の配置が普段のものより見やすく感じるのはそういうところからきているのだろう。


「…それはともかく、今日は国数英の3つをやるわよ」


「了解です」


「準備はいいわね?よーい…」


***


ー第一回模試結果ー


国語 95点

英語 93点

数学 98点


合計 286点


「なるほど、話は聞いていたとおりきちんと点はよれるようね。」


「まあ、頑張ってはいるので…」


「そうね、確かにこの点は努力の証だと思うわ。でも、わかっているわよね?」


「…はい、満点には届いてないんです」


 本来、前世パワーを使っているとはいえ、これだけ点が取れているのなら十分である。

 今回のテストで点を落としたのは難しい応用問題がほとんどである。

 実は、応用問題は基本学園側が100点を取らせないために他のものより特段に難易度を上げていることが多く、基本みんな取れないため取らなくてもいいことが多いのだ。


 しかし、私の目標はテストで高得点を取ることではなくクラメルよりも高得点、つまりは満点を取ること。

 だから、今回のテストはそれ基準で言って全く足りていないと言えるのだ。


「マリーさん、今日はもう遅いからまた明日来てくれる?」


「大丈夫ですけど、ここから満点まであげられるんですか?」


「ええ、この点でこの間違えた場所なら全然可能性があるわ。もちろんあなたの努力の上だけど」


 私はその話を聞いて安心した気持ちになった。

 気は抜けないとはいえ可能性があるだけやる気も出るし、やるだけの価値を見出せるからだ。

 さあ、明日からも頑張ろう!!


 …しかし私はまだ知らなかった、

いや忘れてしまっていた。あと一問を正解するということがどれほど大変だということかを…




春だー

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