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マリー・グランヒルは愛を教えたい  作者: kwkou
二章 マリー・グランヒルは友達になりたい
19/56

18話 一歩

その日の夜、私は家でずっとクラメルのことを考えていた。

 あの時、倒れた理由も、何故最後に動けなくなったのかも全くわからない。

 ただ心が"関わるな"と叫び続けているのを感じ続けている。


「今まではこんなことなかったのに…」


 部屋のベットの上でお茶を飲みながら考え事をし続ける。

 今まではどちらかと言うと"関われ"と心が言っていたと思う。モヤモヤの正体を突き止めるためだったり、サルネ様の頼みもあって関わる必要があったからだ。


「どうもあの瞳を見た時からおかしいんだよな、何かモヤモヤが強くなってるのに関わってはいけない気がするっていう…」


 あの瞳を見た時、思い出した時、何故か体が震えてくる。

 私はあれが絶望を表していると気づいたのは覚えているがその先の記憶がない。

 ただわかるのは彼女の何かが私になんらかの大きな影響を及ぼしたことだけである。


「…もういっそのこと関わるのをやめるべきなのか?」


 実際、この問題は全てクラメルから来ている。

もし彼女と関わるのをやめたらそれは全部関係がなくなる。モヤモヤは残るかも知れないがそれもきっと時間が解決するだろう。

 でも、それでも私は諦めてはいけないと思う。

きっとそれは、それは………. それは……………

それは…………?















……何故だ?












 ?何故私は理由が咄嗟に出てこない?サルネ様に頼まれたとか、さらにモヤモヤの理由を探したいとかいろんな理由をつけれたはずだ。

 それなのに私はそんな理由がすぐ出てこず、直感的にそれが本当の理由ではないと感じる。

 ただ一つ諦めては、関わるのをやめてはいけないと何かが訴えているのを感じ続けている。


「なんなの?この気持ち?」


 訳のわからない感情が渦巻き続ける。私の心を何かが蝕み続ける。私は一体どうしてしまったのだろうか……


ーコンコンー


「マリー様、お茶のおかわりを持って参りました。」


「…どうぞ」


 色々悩んでいるとルイちゃんがお茶を持ってきてくれた。私はとりあえず今の感情を隠してルイちゃんを中に入れる。

 それはルイちゃんにはなるべく心配をかけたくないと思ったからである。それにお茶を飲めば少しは落ち着くだろう。

 そう思いながら、私はベットに座りルイちゃんがお茶を入れるのを待つ。


「はいどうぞ、こぼさないでくださいね」


「うん、ありがとう」


 私はルイちゃんの入れてくれたお茶に口をつける。それはいつも通り、とても温かく美味しい。

 少し落ち着くことができた私は、まずは一息をついて、

せっかくきてくれたルイちゃんとの会話を楽しもうとルイちゃんを横に呼びながらもう一杯お茶を啜る。


「…で、マリー様。クラメル様のことで何を悩んでいるんですか?」


「!?、ゴッホ、ゴッホ。……何故?…それ…を?」


 唐突に核心を突かれ驚いた私は飲んでいたお茶が変なところに入ってしまい咳き込む。

 なにせルイちゃんは私が悩んでいることを当てただけでなく、それがクラメル関連であることまで見抜いてきたのである。これに驚かないのは無理がある話だ。

….私としては、普段通りを心がけたのに一体何故ばれたのだろうか?


「いいですか、私はだてにあなた専属メイドをやっているわけではないんですよ。このくらいお見通しです」


 そう言いながらルイちゃんは私にグイッと顔を近づけてくる、すごく可愛いらしい顔の裏腹に、その瞳はまるで私の全てを見通しているようにも見える。

 それを見た私は隠すのは無理と悟り、両手をあげ降参の意を表した。


「マリー様、前にも言いましたがあなたはもうやるべきことわかっているはずなんですよ。」


「…そんなことないよ。だって私今の自分の気持ちすら説明できないんだよ」


「大丈夫ですよ。貴方はきちんと理解しています。今の貴方に足りないのは勇気だけです」


「…勇気?」


「はい、人にもう一歩踏み込もうとする勇気です。」


 彼女は私に足りないものを力をくれるように教えてくれる。

 一歩踏み出す勇気、その意味は私にはよくわからない。

なんとなく諦めてはいけないと言う意味なのだろうけどそれだけではない気もする。

 でも、その言葉は不思議と私の心を大きく揺れ動かす。

私に一歩を動かす勇気をくれる。


「ルイちゃん、私にできるのかな…?」


「もちろん。それに関しては貴方の専属メイドのこのルイ保証します」


 彼女は自信満々に胸を張っていってくる。

 いつもはあんな可愛い子なのにこうやってわたしが困っている時は力をくれるのだ。

………うん、やっぱりまだ諦めたくないや。

 私は心の中でそう呟く。だって、まだ諦めるのにも、焦るのにも早すぎるのだ。

 私はまだ彼女のほんの一部しか知らない。まだ、やってみる価値はある。

 この私の気持ちの答えを見つけるためにも、サルネ様の頼みを叶えるためにも、まだ頑張れるはずだ。

 そう私が思うと不思議と少し勇気が湧いてくる。さっきまでの感情が嘘のように私の中でやる気が出てくるのだ。


「ふふ、ありがとうルイちゃん。私もうちょっと頑張ってみるよ」


「はい、それでこそマリー様です。」


「ふぁ〜…、なんか悩みがなくなったら急に眠くなってきちゃった。」


「明日の学校も早いですしもう休んだ方がいいと思いますよ」


「、うんそうだね。おやすみルイちゃん」


「おやすみなさいマリー様、良い夢を」


 私は布団に入り眠りにつく。未だ、心のモヤモヤは強くなっているが私はもう気にしない。

 私の気持ちはまた一直線になる。私は頑張ってクラメル様に近づこうと決心をする。

 ルイちゃんのくれた勇気は私をまた突き進めてくれた。

きっとこれがあればうまくいくとなんとなくわかるような気がした。


****


 私は愛する主人であるマリー様の寝顔を見る。

とても安らかに気持ちよさそうに寝ている彼女の顔は本当に愛おしい。


「やっぱり、笑顔の方が似合ってますね」


 私が部屋に入った時彼女笑顔はどこか曇っていた。本人はあれで隠していたつもりのようだが私からすれば正直バレバレであった。

 そもそも彼女は普段から正直なため嘘をつくのが下手くそですぐに行動にボロが出てしまう。

 ポンコツとも言えるかも知れないがそこは素直であると言う一つの美点であると私は思う。


「うん、やっぱり変わってない。その笑顔も寝顔も私の知っているあなたのままだ。」


 彼女の性格や明るさは昔から何も変わっていない。いろんな経験や思いが増えたとしても本質は昔と同じなのだろう


「きっと、あなたならうまくいくはずだよ。あなたの愛はいろんな人を救えるから」


 その愛でその熱で、その優しさでかつての私は救われた。あの日拾われた時、いろんなことで優しくしてもらった時、最初に友達になった時。私は救われた。

 本当は私ももっと彼女の力になってあげたい。可能ならもっとたくさん関わって手伝ってあげたい。

 でもこれ以上の関係を望んではいけない。そんなことはできない。

 だって私にそんな資格はないから。一度裏切ってしまった私には…


****


 次の日、朝から雲が薄黒くなっており今にも雨が降り出そうな少しどんよりとした日。

 たとえそんな日でも私の学校生活は続く。また新たな日が始まる。

 今は朝のHR、今日の何故か先生は少し深刻そうな表情で私たちに話しかけた。


「今日はクラメル様がおやすみなので、誰かプリントを届けてください」


 その話を聞いた途端、クラスが騒いだのがわかった。

 おそらくは、そのプリントを誰が持っていくのかで口論しているのだろう。


「はい、私が行きます」


 そんな中で私は手を挙げそれに立候補する。周りの視線が一気に私に集中する。メリーちゃんも驚きの表情をして私を見つめているのがわかる。

 きっと今までの私でも最後には行っていたのだろう。

しかし、今回私は自分から率先して立候補することにした。

ーきっと、この勇気の一歩は良い方向に向かう、何故だか

そんな気がしたのであった。


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