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マリー・グランヒルは愛を教えたい  作者: kwkou
二章 マリー・グランヒルは友達になりたい
18/56

17話 鎖

ー頭が騒ぐ、思い出すな、と

ー頭が騒ぐ、忘れるな、と

ー頭が探る、何故知っているのか、と

ー頭が叫ぶ、考えるな、と


「誰かいるのかしら?」


 私は自分に渦巻く謎の感情や情報を処理しきれずその場で停止してしまっている。

 そのため私はクラメルから声をかけられたことにすら気づかない。

 私は彼女から目を離すことができない。

心が揺さぶられる。頭が巡り続ける。

思考が回り続ける。


「あなた…マリーさんね。どうしてここにいるのかしら?」


「…」


「聞いているのかしら?」


 クラメルに声をかけられる。彼女が近づいてくる。しかし、私はそれを認識することはできない。

 私の視界が揺らぐ、心が揺れる。

ー鼓動が早くなる。思い出そうとする。

ー本能がそれを止める。思い出そうとする。止める。思い。止める。お。止める。止める。止める。

ーぜったいにおもいだしてはいけないー


「マリーさん!?大丈夫!?」


 私はもう立ってられなくなりとうとう倒れてしまう。

 暗闇に意識を落とす瞬間に見えたクラメルの心配した表情を見てそんなのもできるんだ、と思いながら…


***


「う、うーん」


「あら?起きたかしら?」


「あ、あれ?ここは…。えっと…確かクラメル様の話を盗み聞きにしていて、そのあと、目があったら眩暈がして…今は横にクラメル様が…って、クラメル様!?」


 私は頭を整理するために声に出して今の状況を言った。

 そうして周りの状況を確認し、私はクラメルの目の前で倒れたことを思い出す。

 そして目覚めた今、彼女は私の隣にいることを認識し、ある一つのことに気づく、

 それは…盗み聞きしていたことを堂々と本人に話してしまったことである。


「あっ、あの違う…いや、すみません聞いてました、わざとではないんですが聞いてしまったのは事実です。ごめんなさい。」


 私は咄嗟に誤魔化そうとしてしまうが、すぐにそれをやめ、謝った。

 言い逃れをすることもできるのだが、事実は変わりないし、彼女にあまり嘘をつきたくないと思ったからだ。


「別にいいわよ。ごめんね、見苦しいもの見せて…」


 私が怒られたり、恨まれたりするのを覚悟して構えいたのに関わらず、彼女から帰ってきたのは見苦しいものを見せたことによる謝罪だった。

 そして顔をあげ少しの笑みを浮かべた。おそらくもう気にしていないと言うことを表しているのだろう。

 しかし、その笑みはやはり本物ではない。彼女は今も偽物の笑みを常に彼女は浮かべている。目だってもう細目になっている。…何故いつも笑顔で接しているのだろう?


「クラメル様、どうして人嫌いなのにいつも笑顔で接するんですか?親にも言われてたのならもっと切り離せばいいのに」


「人に接する時怖い顔だと失礼でしょ。それに、笑顔をされて嫌な気持ちをする人はいないもの」


 なるほど、と私は頷くが私はそれが本当の理由ではないことを察する。

 これは勘でしかないのだが、彼女の笑みにはもっと他に大きなものがあると思うのだ。

 しかし私はまだそこまで踏み込めるほど仲良くない。


「それではマリーさん、私はそろそろ帰るので、お気を付けて。あっ、さっきの家族との会話ですが別に話しても構わないですよ。

…もう慣れていますから」


 彼女は公園のベンチから立ちその場を去ろうとする。きっとここで見送れば明日からまた拒絶される日々が始まるだろう。

 私がここでするべきなのは彼女を引き留めて"友達になりたい"と言うことなのだと思う。ここでチャンスをものにしなければ次の機会が来るのがいつになるかはわからない。

 …しかし私はそこから動くことができなかった。

声をかけたいのに足や体が動かない、話すべきとわかっているのに何もできない、何かが鎖のように私の体を縛り付ける。


「…あっ、まっ…て」


 かろうじて声を出しても彼女に届くことはない、私は去っていく彼女の背中を見ることしかできない。

トラウマの鎖は絶対に私を離さない。



リアルの影響で3〜4日に1話の投稿になります。

そこのところよろしくお願いします。

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