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99 千聡の誕生日

 千聡の誕生日である10月10日は日曜日だったので、俺は朝から準備にかかる。


 会場はいつもの執務室という名の居間ではなく、隠れて準備ができるように俺の部屋。一応サプライズ誕生日会の予定だ。


 本当はケーキとか作りたかったのだが。自炊歴半年の俺にはまだ早い気がしたので、ケーキは市販品を用意し。代わりに料理に力を入れる。


 潮浬に『千聡が好きな料理知らない?』と訊いてみたら。『料理ではありませんが。陛下が食べたあとのフライドチキンの骨とか与えたら、溶けてなくなるまでしゃぶっていると思います。わたしも欲しいです』と全く参考にならないアドバイスを頂戴したので、今まで見ていてなんとなく好きそうな印象がある卵料理を多めにしておいた。


 誕生会のメンバーは主役の千聡の他、俺・潮浬・リーゼ・シバ。

 天川さんにも声をかけたら来てくれる事になった。


 有紗さんはどうしようか迷ったが。勇者への警戒感は依然として衰えていないようなので、今回は見送り。


 いつか一緒に、仲良くテーブルを囲める日が来たらいいなと思う……。



 みんなにも手伝ってもらってお昼頃には準備が完了したので、リーゼに千聡を呼びに行ってもらう。


 ちなみに千聡が入ってきた瞬間。開幕クラッカーをやろうと思ったのだが、潮浬に『不意の破裂音は襲撃と誤解させる可能性があるので、やめた方がいいと思います』と言われて却下になった。


 そっち方面のサプライズがしたい訳じゃないからね……。


「魔王様、お呼びで――『千聡、誕生日おめでとう!』


 ――クラッカーがダメらしいので拍手はくしゅで迎えると。部屋に入ってきた千聡は一瞬硬直したように立ちつくし、目を見開いて固まってしまう……。


「……こんな千聡を見るのは珍しいわね」


 潮浬がポツリと言うが。そういえば乗っている船にロケット弾が撃ち込まれた時でさえ、一瞬の躊躇ちゅうちょもなく次の行動に移っていた。


 これはサプライズ成功……と言っていいのだろうか? とにかく千聡が全然動かない。


「千聡?」


 あまりに硬直時間が長いので思わず声をかけると。千聡は我に返ったように再起動し、言葉を発する。


「……あ、あの……誕生日とは私の……この世界でのでしょうか?」


「うん。……あ、もしかして元の世界での誕生日の方が馴染みがあった?」


 そこには考えが及ばなかったとちょっと焦るが、千聡は『いえ、そのような事は』と言って首を振ると、そのまま倒れ込むように土下座ポーズに移行する。


「恐れ多くも私などのために祝いの席を設けて頂き、魔王様直々にお祝いの言葉をたまわるとは光栄の極みです。臣千聡、身に余る幸福と感激のあまり言葉もございません――!」


「お、おう……」


 なんか、俺が想像していたサプライズ誕生会とちょっと違う流れになってきた。


 そして言葉もないわりには、わりとしゃべる。


 ……床にひれ伏す千聡は潮浬やリーゼには見慣れた光景だろうが、初めて見る天川さんはわりとドン引きだ。


 気持ちはよくわかる……。



 ――とはいえ主役が入り口で土下座していては誕生会にならないので、手を取って立ち上がらせ。テーブルへと誘導する。


 俺の部屋にあったテーブルはコタツ兼用で一人用の小さい物だったので、今日のために潮浬と家具を選んだ時にちょっと大きい。長方形の物に買い換えた。


 と言うか潮浬が『陛下のお部屋で使われる物、ぜひともわたしに買わせてください!』と顔を2センチくらいの距離に近付けて迫ってきたので、勢いに押されて買ってもらったんだけどね……。


 なお、天板の裏には潮浬の大きなサインが書き込まれている。


 本人が自慢気に『わたしはあまりサインをしませんので、貴重品です。オークションに出したらいい値が付くと思いますよ』と言っていたが。売っていいのだろうか?


 ……いやまぁ、そんな事しないけどさ。


 そんな事を思い出しながら、長方形のテーブルの線が短い方。いわゆるお誕生日席に千聡を座らせようとしたら、『魔王様を差し置いて上座など、あまりに恐れ多いです……』とまた土下座されてしまい。なぜか俺がお誕生日席に座る事になった。


 俺が知っている誕生会となんか違う。


 ……ともあれみんな席に着いたので、俺が全員分の飲み物を注ごうとすると『そのような雑事ざつじは私が』と千聡にペットボトルを奪われてしまった。


 やっぱり俺が知っている誕生会となんか違う……。



 ……開始までに色々あったが、ともかく準備が整い。俺の『千聡、誕生日おめでとう!』の言葉で誕生会が開始された。

 思い返してみると。ここにたどり着くまで結構長かった気がする……。


 誕生会と言っても、ケーキがある他はいつも俺が作っている夕食を少し豪華にした程度なのだが。千聡はとても恐縮した様子で。それでも嬉しそうに料理を食べてくれる。


 嬉しそうな千聡を見ると、俺も嬉しくなれて幸せだ……。



 だんだんと場が馴染んできて、千聡の恐縮具合も徐々にやわらぎ。リーゼのバイオリンと潮浬の歌も披露ひろうされて、誕生会は順調に盛り上がっていく。


 天川さんは潮浬のアイドル業を知らなかったようで。すごく驚いて、うっとり聞きれていた。


 ……そんなこんなで誕生会は順調に進み。いよいよプレゼントを渡す段になる。


 ちなみに潮浬に訊いたら、『どうしてわたしがあの子にプレゼントをあげないといけないのですか。必要性を感じませんし、向こうもわたしからもらっても嬉しくないでしょう』との事だった。


 リーゼも『物って上の立場の人が下の人に与えるか、お願いやお礼をする時に渡すものじゃないんですか?』と微妙にズレた価値観を披露してくれたので、渡すのは俺と天川さんだけだ。


 リーゼの価値観は一応訂正しておいたけど、直ったかどうかは分からない。


 そんな訳で、まずは天川さんがカラフルでかわいらしい包装がされた包みを渡し。千聡が『ありがとうございます』と言って受け取った。


 ――うん、ここに来て初めて俺が知っている誕生会っぽい光景だ。


 続いて俺が、(ラッピングしてもらえばよかったな)と思いながら、お店の袋に入ったままの犬シールを渡すと。千聡は『ありがたく拝領はいりょういたします……』と言って受け取り。正座をしたまま床に着くまで頭を下げる……。


 俺が知ってる誕生会と……。



 ……疑問に感じる点はいくつかあったものの、ともかくパーティー自体は盛況のうちに終了した。


 千聡も喜んでくれたようなので、多分結果オーライだ。


 涙目で『ここまでして頂いたのです。せめて後片付けは私にやらせてください』と懇願こんがんされたので、後片付けは千聡に任せる事になり。


 やっぱり俺が知ってる誕生日パーティーと違うなと思いながら、その日は過ぎていくのだった……。




 現時点での世界統一進行度……0.25%

・日本の魔族勢力を全て配下に

・魔族の小勢力三つ

・イリスルビーレ公爵を正式に配下に

・天川さんを仲間に


 千聡の主人公に対する忠誠度……100%↑↑↑ カンスト『私のような一臣下のためにこのような事をしてくださるとは。嬉しいを通り越して申し訳なくなるのも通り越して、また嬉しいに戻ってきた。この偉大な主君のために、私は命を含むあらゆるものを捧げてお仕えしよう』忠誠度大幅上昇

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