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79 新学期3「クラスメイト」

 天川さんに問われた、なにかに取り憑かれている事への心当たり。


 そりゃもう盛大にあって、美少女ストーカーに取り憑かれ……じゃなくて、いや違いもしないけど今はその話ではなく、多分魔族絡みの話だろう。


 天川さんは神社の娘さんなので、霊感とか強かったりするのだろうか?

 とりあえず巫女姿は死ぬほど似合いそうだけど……。


 ……一瞬あらぬ方向へ行きかけた意識をなんとか引き戻し、考えを巡らせる。


 最近得た知識によると魔族=妖怪っぽいけど。妖怪が人に取り憑くのかとか、妖怪と幽霊って微妙に違うよなとか、霊感って妖怪の気配も感じ取れたりするのだろうかとか。色々な疑問が頭をよぎるが、それはともかく今は眼前にいる天川さんへの対応だ。


『夏休み中に心霊スポットへ行った』と言ったが、イマイチ納得してくれている気配がない。


「ええと……ほら、元々弱いのが憑いてた所に、それにかれて強いのが寄って来て入れ替わったとか?」


「そんな話は聞いた事がないけれど……」


 そう言いながら、天川さんはキレイな顔を近づけてくる。いかん、それ以上は潮浬が……。


「――っ!」


 急に天川さんが弾かれたように飛び退すさり、周囲をキョロキョロと見回した。

 多分だけど、潮浬さん怒りの殺気に触れたのだろう。


 天川さんは冷静さを取り戻すように軽く頭を振ると、改めて口を開く。


「なるほど、事情はともかくこれは強敵ね。でも大丈夫。私がおはらいをしてあげるから、今日うちに来て。放課後一緒に帰りましょう、待ってるから」


 厳しい表情で俺を見ながらそう告げると、天川さんは身をひるがえして教室に戻っていく。10分の休みはそろそろ終わりの時間だった……。



 昼休み。俺達は特別補習室という名のプライベートルームに集まって、お昼ごはんを食べながら天川さん対策会議を開いている。


 いつも昼ごはんを一緒に食べる笠井は、なにやら『若槻潮浬シークレットプレゼント抽選会を緊急開催』というメールが公式ファンクラブから来たらしく。四時限目の途中からお腹が痛くなってトイレに行ったまま帰ってこない。


 多分今頃、必死にスマホをポチポチしているのだろう。


 ものすごく意図的に遠ざけられた感があるが、まぁ実際そうなんだろうね。


 潮浬に訊いたら抽選は公平に行われるらしいので、笠井の幸運を祈るのみだ……。



 そして俺の方は、天川さんへの対応である。

 まずは状況確認からだ。


「ねぇ千聡。天川さんが言っていた『良くないものが憑いてるよ』って、魔族の気配と言うか、魔力みたいなものの事でいいのかな?」


「まず間違いなくそうでしょうね。そして魔王様から以前に比べて強く感じられたのであれば、魔王様のお力が人間に感じられやすくなったという事だと思います」


「人間と魔族で魔力の感じ方って違うの?」


「はい。加えて、魔族の中でも上級と下級で違います。魔王様のように一見小さくても質の高い魔力を鋭く感知できるのは、上級の魔族だけでしょう」


「……て事は、俺の魔力は質が落ちて代わりに大きくなったの?」


「その点は先程潮浬とリーゼにも確認しましたが、我々には変化を感じられません。人間や低級の魔族には何かあるのかもしれませんが……」


「そっか……有紗さんに訊いてみたらわかるかな?」


「――――」


 人間枠という事で名前を出したのだが、千聡達三人は露骨に表情をけわしくする。

 ホントに嫌いだよね有紗さんの事。


 空気がピリピリするのを感じ、俺は慌てて話を戻す。


「俺の魔力に変化がないなら、こないだ行った魔族の地下都市あったじゃない。あそこに滞在した事で魔力が染み込んで、残り香みたいに漂ってる可能性は?」


「その可能性は薄いと思われます。あの空間における魔力自体、魔王様の魔力に比べれば微々たるものでした」


「う~ん、じゃあ他になにか考えられる原因ってある?」


「あるいは、我々から放たれる魔力も全て魔王様からのものだと誤認している可能性があります。先程も潮浬が発した殺気を魔王様から……魔王様に取り憑いていると思っている物からだと誤認していたようですし、精度が低いのかもしれません」


 ああ、俺達はいつも一塊で行動しているから、その可能性はありそうだ。



「……ところでちょっと話変わるけど、霊感が強いと魔力って感じやすくなるの?」


「人間が言う霊感の定義が曖昧あいまいなので断言はいたしかねますが、それに近い認識でよろしいかと。先祖に魔族がおり、その血の影響が比較的強く出た個体を『霊感が強い』と表現しているのでしょう。神社や陰陽師おんみょうじ、貴族の家系などにはよくある事です」


 よくあるんだ……。


「……ってちょっと待って。それだと天川さんは、ごく弱い魔力を持った魔族の仲間って事にならない?」


「人間の血の方が圧倒的に濃いでしょうが、広い意味ではおっしゃる通りですね」


「でも、魔力を『良くないもの』って言ってたよ?」


「それは本質を正しく理解できていないのでしょう。自分よりもはるかに強い魔力を持った相手に畏怖いふを感じて震えるのを、良くない物に触れてゾクリとしたと勘違いしているのだと思います」


「なるほど……」


 千聡の解説で大体状況が把握できた気がするが、これだとお祓いしてもらってもなにも変わらない。

 でも天川さんの性格上、効果がなかったら手を変え品を変え色々やってきそうな気がする。


 仮に遠慮したとしても、やっぱりぐいぐい来そうである。


「具体的な対応としては、お祓いのお誘いどうするのがいいと思う?」


 この質問は全員に対して投げたが、こういう時決まって真っ先に反応するのは千聡である。


「無視でよろしいかと。なんの効果もないでしょうし、おそれ多くも魔王様がわざわざ足を運ばれるに値する案件ではありません。もし必要なら、私の方で適当に誤魔化しておきます。幸い全員親戚という事になっていますから、そういう家系だとでも言えば納得するでしょう」


 千聡の言葉に、潮浬も無言でうなずく。


 納得する……かな?

 ほとんど話した事はないけど、天川さんはわりと頑固がんこ一途いちずなイメージだ。


 かといってお祓いをしてもらっても、多分なんの効果も得られないのだろう。二・三回試してダメだったら諦め……てくれそうにもないよね。


 天川さんは気が強くて負けず嫌いなイメージもあるので、満足のいく結果が得られるまで永久にリトライして来そうな気がする。


 説得の方なら、千聡の事だから多少強引な手を使ってでも無理に納得させるかもしれないけど……。



 そんな事を考えて迷っていると、ふっとリーゼがなにかを言いたそうにしているのに気がついた。


 そういえばリーゼ、こういうややこしい系の話題の時には、基本しゃべらないよね。


「リーゼ、なにか言いたい事があったりする?」


「え? いえ、自分は荒事担当なので難しい話は……」


「いいから、なにか少しでも気になる事があるなら言ってみてよ」


 遠慮するリーゼにそううながすと。いつもの快活さはどこへやら、おずおずと口を開く。


「えっと……あの人間に、少しだけ違和感がありました」


「違和感ってどんな?」


「分かりません、ほんの少しだけだったので……」


 千聡と潮浬に視線を回して確認してみるが、二人共なにも感じなかったようで微妙な表情をしている。


 でもたしか、リーゼは気配を察する事に関してはこの中で一番だと千聡が評していた。


「……うんわかった。じゃあ違和感の正体を探りがてら、お祓いしてもらいに行ってみようか。千聡、それでいい?」


「魔王様の御意向であれば、私などが反対する理由はございません」



 千聡はそう言って頭を下げ、放課後天川さん家の神社に行ってみる事が決定した。


 と言うか正直、ちょっと行ってみたいと思ってたんだよね。お祓いってどんな事するのか興味があるので……。




 現時点での世界統一進行度……0.24%

・日本の魔族勢力を全て配下に

・魔族の小勢力三つ

・イリスルビーレ公爵を正式に配下に


 千聡の主人公に対する忠誠度……100%↑ カンスト『さすが魔王様。配下全員の様子に細かく気を配っておられ、わずかな変化も見逃さない。本当に上に立つ者にふさわしいお方だ』忠誠度上昇

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― 新着の感想 ―
[良い点] この作品は日常から非日常の世界へ展開して物語が綴られていましたが、ここにきて再び日常……それも学校という比較的身近な環境に舞台が移ることで、非常に読みやすいように感じます。舞台の転換がもの…
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