表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/322

73 魔族の宴

 玉藻さんから招待された、日本の魔族勢力統一を祝う祝宴。


 俺が会場に用意された一段高い場所に座り。

 護衛役の潮浬が右後方、リーゼが左後方に立ち。

 一段下がった右前に玉藻さんが。左前に千聡が立った所で、玉藻さんから宴の開始が宣言された。


 宣言と共に、立って俺を迎えてくれた全員が腰を下ろし。料理やお酒が次々と運ばれてくる。


 料理は俺の前には普通の懐石料理だが。所によっては大きな肉の塊や、植物の山。なにか分からない液体や、ふわふわした綿みたいなものが運ばれていたりもする。


 ……魔族さん達の食性も色々なのだろうが、玉藻さんの『祝いのうたげじゃ、大いに食べて飲んでくれ!』という言葉にもかかわらず。大半の人は硬い表情のまま俺達を。特に千聡と玉藻さんの間で視線を行ったり来たりさせている。


 元気よく食事にかぶりついているのは、俺のヒザの上にいるシバくらいだ。そういえばシバにも視線が集まっていて、千聡達と人気を三等分している。


 さっきお肉の塊を持ってきてくれたタヌキみたいな耳が生えた女の人なんか、ものすごくおっかなびっくりで。全力でこしが引けた状態で最大限遠くから恐る恐るお皿を置き、逃げるようにして戻っていった。

 大人しくてかわいいワンコなのにね……。


 そう思いながらシバをでるが、食事中に触っても怒りもしない。

 一瞬俺を見上げた後、すぐにお肉に興味を戻す。普通の犬よりも大人しいくらいだ。


 ……まぁ、生肉をかじっている光景はちょっと迫力があると言えばあるけどさ。


 そんな事を考えている間も場の張り詰めた空気は少しも変わらず。料理やお酒に手をつける人もほとんどいない。


 俺にもなんとなく空気が読めるが。これは多分、この場の力関係を量ろうと必死になっている。もしくは気が気ではないのだろう。


 そしてその焦点は、千聡と玉藻さんのどちらが偉いのか。自分達が直接従う相手は誰なのかという事だと思う。


 もし『魔王>千聡>玉藻さん』という力関係であれば、千聡に取り入って直属の部下になる事で、玉藻さんと同格の地位を得る事が可能になる。


 だがもし千聡が玉藻さんと同等かそれ以下であれば、玉藻さんと並ぶには直接魔王に取り入る必要があり、その難易度は桁違いに高くなる。


 その辺りがどうなのか。玉藻さんに従ったばかりの東日本の魔族達は機会をうかがい、長年玉藻さんに仕えてきた西日本の魔族達は警戒をしているのだ。


 会場を見渡してみると、不安そうな表情を浮かべている人が5割ほど。なにか含む所がありそうな人が3割。表情が読めない人が2割といった所だろうか。


 表情が読めない人はポーカーフェイスばかりではなく、白い火の玉みたいな人とか、大きな綿毛の塊みたいな人とか。表情以前に顔がどこにあるのかわからないパターンもある。


 そういう特殊な例は別にして。見た感じ玉藻さんの支持層が多数派だが、圧倒的というほどでもない。


 場合によっては日本の魔族勢力を再び二分……とまではいかなくても、独立した小勢力をいくつか立てるくらいは可能があるかもしれない。


 仮に千聡と玉藻さんが同格であっても敵対ライバル関係であれば、牽制けんせいのための別勢力存在の目が出てくるしね。


 そんな感じでそれぞれが様々な思惑を秘め、この場の力関係を探ろうと必死なのだ。


 俺としては、この手のややこしい話は全部千聡に丸投げしてあるので一緒に様子をうかがう立場だが。千聡はどうするつもりなのだろうか?


 ちょっと興味を持って見ていると、千聡が自分のおぜんから急須きゅうすのようなものを持って立ち上がり。玉藻さんの元へと向かう。


 急須みたいなものは俺のお膳にもあるが、お酒が入っているらしい。古いタイプのお銚子ちょうしみたいなものだろうか?


 千聡はそのまま玉藻さんの前に座り直すと、軽く頭を下げてから言葉を発する。


「このたびは偉大なる魔王和人様の庇護ひごの下。この国の魔族勢力を統一を成し遂げられた事、まことに喜ばしく。お祝い申し上げます」


 なんか時代劇みたいな台詞せりふを口にして、持って来た急須のようなものから玉藻さんのさかずきにお酒を注ぐ。


 玉藻さんはそれを飲み干し。『お祝いのお言葉痛み入ります。共に魔王様の配下として、忠勤ちゅうきんに励みましょう』と言って、自分も千聡の杯にお酒を注ぎ。千聡がそれをあおる……。


 いや千聡未成年……200何歳らしいからいいのだろうか?


 ……それはともかく、これでこの場の空気が一気に決まった。


 玉藻さんは『共に魔王様の配下』と言ったが、先に挨拶あいさつに行って頭を下げたのは千聡であり。千聡の方が格下なのは誰の目にも明らかだ。


 あまり詳しくはないけど。王の下に貴族がいて、貴族の中で玉藻さんが侯爵で千聡が伯爵みたいなイメージだろうか?


 改めて会場を見渡すと、玉藻さんの部下だったのだろう人達は安堵あんどの表情を浮かべ。玉藻さんと同列の地位を狙っていたのだろう人達は、面白くなさそうな表情をしている。


 多分実際の力関係だと、千聡の方が玉藻さんより影響力が強いと思うのだが。この場では、『魔王>玉藻さん≧千聡』という事にするらしい。


 一番平和に治まる選択肢には違いないが、そのためには自分の立場を下げる事もいとわない辺り、千聡はさすがである。


『魔王様さえ一番上なら、あとはどうでもいい』とか考えていそうではあるけどね……。


 ともあれ俺は、戻ってきた千聡に笑顔を向けて軽くうなずいて見せる。

『お疲れ様』の意思表示だが。千聡はなんか雷にでも打たれたように硬直し。しばらく完全停止した後、勢いよくひざまずいて床に頭を着けた。


 ……なんだろう? 部下をねぎらうとか初めて自主的に魔王らしい事をした気がするが、効き過ぎたのだろうか?


 千聡はそのまま一分以上も平伏へいふくしていたが、やがて頭を上げ。なぜか目を潤ませて俺を見た後、自分の席へと戻っていった。


 俺の左前に座った千聡の後姿はなんとなくウキウキしているように見え。微妙に左右に揺れたりしていたが、しばらくするとハッとした様に停止し。両手でほほをパンパンと叩いて気合を入れ。ピンと背筋を伸ばしたキレイな正座姿に戻る。


 千聡が浮かれている姿とか、初めて見た。



 ……宴会はその後。代表者が順番に俺と玉藻さんに挨拶あいさつに来たが、俺の分は千聡が代わりに対応してくれる。


 中には千聡を諦めて魔王に直接取り入ろうと試みる猛者もさもいたが、案の定千聡に全員排除されていた。千聡のお眼鏡に適う人がいればワンチャンあったのかもしれないが、残念ながらいなかったらしい。



 挨拶が一通り終わると、緊張が解けたのか参加者の皆さんはようやく宴会モードに移行したようで。あちこちから楽しそうな笑い声や歓声が聞こえてくる。


 俺は他所で出されたものを飲み食いするのは千聡に止められているのだが、今回は千聡が一品ずつ丁寧に毒見をしてくれ。食べるお許しが出た。


 ちなみに俺のお膳に乗っていた急須のようなものには、お酒ではなくもものジュースが入っていて、甘くてとても美味しかった。

 千聡が飲んだのもこれだったのだろうか?



 そんな感じで宴会は次第に盛り上がり。海坊主さんだと思う大きな人が、ドラム缶くらいある容器のお酒(多分)を一気飲みして、歓声を受けたりしている。


 後ろで護衛の任についてくれている潮浬とリーゼも交代で食べたり飲んだりしていたが、さすがに油断してはいないらしい。大きな人影が近付いてくると、とたんにピシッと緊張した空気が張り詰めて注意が向けられる。


 ――近寄ってきたのは、俺をここまで運んでくれた鬼さん達の中でも一際体が大きかった人。


 お酒に酔っているのか顔が赤いので、とりあえず赤鬼さんと呼ぼう。


「魔王様はさぞかしお強いのでしょうな。我輩わがはいも力に関しては少々自信があるのですが、一つ手合わせを願えませんか?」


 ……うん。確かにいかにも力自慢な外見をしてるよね……って、いやいや。力比べは困る。


 赤鬼さんの身長は優に2メートル50はあって、全身ムキムキの筋肉だるまだ。


 二本生えたツノとキバ。そしてある意味テンプレなパンチパーマのせいもあって、とんでもない迫力である。


 正直、俺なんか一撃で粉々にされてしまいそうだ。



 どうしようかなと思って千聡に助けを求める視線を向けようとした刹那せつな。千聡よりも早く、リーゼが大きな声を上げる……。




 現時点での世界統一進行度……0.24%

・日本の魔族勢力を全て配下に

・魔族の小勢力三つ

・イリスルビーレ公爵を正式に配下に


 千聡の主人公に対する忠誠度……100%↑ カンスト『魔王様に方策をお褒め頂き、ねぎらって頂けた。あまりに恐れ多く、名誉であり幸福に過ぎる……』忠誠度上昇

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ