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71 初めての地下世界

 色々と……本当に色々とあった夏休みも終わりに近付いたある日。

 千聡が毎日の情勢報告の後に意見を求めてくる。


「魔王様。玉藻殿からこの国の魔王勢力を再統一した祝いの宴を開きたいと申し入れがあり、ぜひ魔王様にもご出席頂きたいとの事ですが。いかがなさいますか?」


 あぁ、そういえばそんな話あったな……。


「今月中なら時間あるから別にいいよ」


「承知いたしました。では8月の30日から31日にかけての二日間、お時間を頂戴してよろしいでしょうか?」


「うん。ちなみに今度はどこへ行くの?」


「魔族が人間との接触を避けて暮らしている地下空間。その中でこの国最大の規模を持つ紀伊山地の地下になります」


 そういえばそんな設定……だと思っていたものもあったな。

 ともあれ紀伊山地は近くて助かる。同じ近畿地方だしね。


 そんな訳で、俺は夏休みの最後を魔族の地下都市……地下集落かな? とにかくそんなような場所で過ごす事になったのだった……。




 8月の30日は、残暑厳しい暑い日だった。


 現地へ向かう車の中で千聡が色々と説明をしてくれ、俺も質問を返す。


「魔族の地下都市みたいなのっていっぱいあるの?」


「都市と呼べる規模ではありませんが、この国で大きいものはこれから行く紀伊山地の地下と、東北地方の奥羽山脈地下の二つです。大きいと言ってもどちらも千人規模で、他に数人から数十人規模の小さいものが全国各地に28ヶ所あります」


「へー、地下の秘密基地って言うと富士山の下みたいなイメージがあるけど、あそこにはないの?」


「残念ながらありません。あの山は活火山ですから、下を掘るのは危険が伴うのでしょう。穴を掘るのが得意な魔族は多いですが、その彼等かれらが今まで手をつけていない事からしても、適地ではないのだと思われます。人間が多くやって来ますから、隠れ住むにも適しませんし」


「ああ、なるほどね」


「ちなみに世界では、アジアのヒマラヤ山脈からチベット高原にかけて。ヨーロッパのアルプス山脈。北米のロッキー山脈と南米のアンデス山脈。アフリカのエチオピア高原の五ヶ所に大規模なものが。他に中小規模のものが私の知る限り329ヶ所ありますが、全てを把握できてはいないと思います」


「海の底にもあるしね」


 潮浬がちょっと得意気に話に入ってくる。この前湖に行って以来、ずっとゴキゲンだ。

 潮浬の機嫌をとるには、三日に一回くらい水に浸けるといいのかもしれない。


 そんな事を考えながら車に揺られていると、窓の外の景色は次第に山がちに。山林の中を曲がりくねって走る道へと変わっていく。



 ギリギリ二車線あった道から細いわき道に入り。進入禁止のゲートを門番みたいな人に招待状を見せて通過する。


 そしてさらに走ると、大きな鳥居とりいをくぐってわりと立派な神社に出た。駐車場には車やバスが何台も停まっている。


 魔族の集会なのにツアー旅行の観光地みたいだなと思ったが、全国から集まるとなるとそれが効率いいのだろう。

 玉藻さんが送迎を手配したのかもしれない。


 話を聞く限りだと力を持っているのは一部の魔族だけで。多くの魔族は人間から逃れて地下暮らしをしているらしいから、いきなり集まれと言われても困るのだろう。


 バス以外の車もあるが、黒塗りの高級車からワンボックスカーや軽自動車まで幅広い。

 妖怪が軽自動車に乗って魔族の集会に来るかと思うと、なんかほほえましいな。


 そして、よくあの道通れたなと思うサイズの大型トラックもあるが、うたげ用の荷物を運んできたのだろうか?



 ……俺達が乗った車は駐車場ではなくおやしろの前に横付けし、先に降りた千聡がドアを開けてくれて車を降りる。

 なんかVIP待遇だ。さすが魔王様。


 て言うかドアくらい自分で開けられるのだが、千聡によると宴の前からすでに集会は始まっているのだそうで。人目がある所では魔王としての威厳いげんを意識した行動を心がけて欲しいと言われているのだ。


 実際はもっと丁寧に。ひざまずいてお願いされてしまったので、頑張ろうと思う。


 なので今日の威厳ある俺は、珍しい色をしたバッタがいたけど追いかけたりしないのだ。


 10円玉が落ちていても拾わないくらいの覚悟を決めて、俺は堂々とお社の前に立つ。


 ……50円玉だったら拾ってもいいよね? ちなみに交番に届けるのは100円以上が俺のマイルールだ。


 そんな大人物とはおよそかけ離れた事を考えていると、お社の中から案内人だろう。巫女みこさんが姿を現した。

 多分だけど、本物の巫女さんである。


「どうぞこちらへ」


 柔らかくも凛とした物腰の巫女さんに、早くも威厳が怪しくなりながらちょっと見惚みとれていると、ふっと潮浬の視線に気がついた。


 ――視線は痛いとか冷たいとかではなく、むしろ熱い。

 なんだろう? これはもしかして、近日中に潮浬の巫女さんコスプレが見られたりする流れだろうか?


 ……とはいえ潮浬に関しては、魔族の存在に真実味が増しただけに『子供を産むと寿命じゅみょうまっとうして死んでしまう』という話が気にかかって仕方がない。


 ちょっと考え込んでいる間に俺達はお社の奥へと案内され。気付いた時にはおごそかな雰囲気の神社にはあまり似つかわしくない、金属製のエレベーターの前にいた。



「最下部まで500メートルほどくだりますので、しばらくお待ちくださいませ」


 巫女さんがそう説明してくれるが、500メートルって結構な距離だと思う。


「ここって標高何メートルくらいなんですか?」


「標高……でございますか?」


 巫女さんに聞いてみたが、知らないみたいだ。


 うんまぁ、いくら自分が普段いる場所でも標高とか普通知らないよね。


「先程の建物で812メートルになります」


 ……と思っていたら、横から千聡が教えてくれた。

 千聡はなんでも知ってるな。


 標高800メートルちょっとという事は、500メートル下がっても300メートルほど。それでもけっこう高いなという印象だ。


 そういえばさっきの神社、標高のおかげか森の中だからなのか、けっこう涼しくて心地よかったな。



 そんな事を考えている間に、エレベーターは時間をかけてゆっくりと。地下深くへと降りて行く。


 いよいよ地下世界で本場の魔族さん達とご対面だ……。




 現時点での世界統一進行度……0.24%

・日本の魔族勢力を全て配下に

・魔族の小勢力三つ

・イリスルビーレ公爵を正式に配下に


 千聡の主人公に対する忠誠度……100%↑ カンスト『ああ、臣下として魔王様のお世話をするこの時間。なんと幸せな事か……(車のドアを開けながら)』忠誠度上昇

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