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68 魔族の確信

 水着に着替えた俺は、湖へと向かう。


 足を浸けてみると少しヒヤッとしたが、夏の日差しが照りつける地上が暑いので、ちょうどいいくらいかもしれない。

 水は澄んだ青色で、とても綺麗だ。


 そのままヒザの深さまで進んでいくが、ここで一つ問題に気がついた。


 俺が今立っているのは地面と見せかけて水竜さんの背中なので、この先は徐々に深くなる訳ではなく、がけのように一気にストンと落ち込んでいるのだ。


 俺は泳げない訳ではないが得意でもないので、足が着かない所はちょっと怖い。


 この湖の主なのであろう水竜さんが味方だし。千聡達も後ろで見守ってくれているから、溺れても大丈夫そうな気はしないでもないが。それでもやっぱり、これ以上進むのは勇気が必要だった。


「陛下、よろしければわたしに乗りますか?」


 どうしようかと悩んでいると、すぐとなりから潮浬の声が聞こえてくる。

 見ると、少し前かがみになって上目使いで俺を見上げている、水着姿の潮浬がいた……いかん、すごくかわいい。


 一瞬変な気が起きそうになるが。俺が好きなのは千聡なのだと心の中で念じて、冷静さを取り戻す。


 冷静になった頭で改めて考えてみるが、『乗る』ってどういう意味だろう?


 まさかこの状況で卑猥ひわいな事を言ってくるとも思え……ない事もないが、今回は違う気がする。


 経験上、潮浬がその手の誘いをかけてくる時には色香と言うか妖艶ようえんさと言うか、そんな雰囲気を感じるのだが、今はそれがない。


 という事は純粋に『乗りますか?』と訊いているのだろうけど、それはそれでやっぱり意味がわからない。水竜さんみたいな大きさがあるならともかく、潮浬は俺よりも小さいのだ。


「……もしかして、潮浬は変身できたりするの?」


「残念ながら、この体に変身能力はありません。ですからこのままの姿で背中にどうですか? お望みであれば、上を向いてお腹にでもいいですが」


「えっと……それはつまり、潮浬をサーフボードみたいにしろって事?」


「それでもいいですし、またがって乗るほうが密着でき……安定感が増すのでオススメです」


 今絶対『密着できるので』って言おうとしたよね?


「でも、いくら潮浬が泳ぐの得意だからって人一人乗せて泳ぐのはさすがに無理じゃない? イルカじゃないんだからさ」


「わたしは遊泳力でイルカやシャチなんかに負けるとは思いませんよ」


 自信満々に言い切る潮浬。いくらなんでもそれは盛り過ぎだと思うが……いや待てよ。もし本当に潮浬が魔族なら、そういう事もあるのだろうか?


 ……これは、試してみるべきなのかもしれない。


「わかった。じゃあお願いしてみようかな」


「――はい、喜んで!」


 居酒屋の店員みたいな事を言って、潮浬は俺の前で両手とヒザを着く。

 ギリギリ顔だけ水面に出している姿は、カメみたいだ。


 そしてそんな状態の潮浬に乗るのはなんか気が引けたが。本人がとても乗り気で嬉しそうなので、恐る恐るまたがって腰を下ろす。


 潮浬の背中は細くて、大きさ的には乗りやすい。公園にあるバネでゆらゆら揺らして遊ぶ遊具みたいだ。


 おまけにとても軟らかくて、すごく肌触りがよくて、いけない事をしている気になってくる……。


「んっ――」


 ……ただでさえ妙な緊張感があるのに、変な声出さないで欲しい。


 なにはともあれ潮浬の背中に乗り。ゆっくりと足を浮かせて体を預けてみるが、潮浬の体はビクともしない。


「陛下。準備はよろしいですか? ちなみにわたしは水中でも声が聞こえますから、なにかあったら遠慮なくおっしゃってください」


「うん……」


 俺の返事を受けて。潮浬はゆっくりと、体を沖へと進めていく。


「潮浬、間違っても潜ったりするのではありませんよ!」


「わかってるわよ! ……陛下、しっかり掴まっていてくださいね」


 後ろから聞こえてくる千聡の声に返事をし。潮浬は顔を水に浸けて、平泳ぎをするように手を大きく動かす。


「……おお!」


 潮浬の泳ぎはとても力強く、ひとかきで水竜さんの体から大きく離れる。


 俺の体はヘソの辺りまで水に沈んだが、かなりの余裕を持って水上に体を出せていた。


 潮浬が泳ぐスピードは思っていたよりかなり速く。しっかり肩に捕まっていないと流されてしまいそうになるが、それ以外はとても快適で気持ちいい。気分は浦島太郎だ。


 潮浬はきりの壁から出ないように、ギリギリの所を大きく二回・三回と回ってくれる。なんかすごく楽しくてテンションが上がる。



「……って、潮浬。息大丈夫なの!?」


 俺が我に返ったのは、周回四周目。多分10分近く経ってからだったと思う。人間ならとっくに危ない時間だ。


 だが潮浬は、潜ったまま右手を水面から突き出して、指で丸を作って見せる。


 大丈夫のサイン……だよね?


「潮浬、一旦陸に上がって」


 それでも心配になってそう言うと、潮浬は方向を水竜さんに向け。ゆっくりと水から上がってくれる。


「どうかされましたか、陛下?」


 潮浬が髪から垂れるしずくをぬぐおうともせず、心配そうに訊いてくる。


 むしろ心配しているのは俺の方なのだが。潮浬は酸欠どころか、息一つ乱していない。


 10分近くも水に潜り。しかも結構な速さで泳いだはずなのにだ。


 シュノーケルや空気ボンベをつけていなかったのは、背中に乗っていた俺が一番よく知っている。



 これはもう、潮浬は人間ではない事確定なのではないだろうか……。




 現時点での世界統一進行度……0.24%

・日本の魔族勢力を全て配下に

・魔族の小勢力三つ

・イリスルビーレ公爵を正式に配下に


 千聡の主人公に対する忠誠度……100%→

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