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63 東日本制圧作戦

 有紗さんが帰ってきて数日。有紗さんは毎日一緒に晩御飯を食べに……と言うかおかずを目当てにお酒を飲みに来るが、千聡達との仲は全く良くならない。


 相変わらず空気が痛いほどピリピリしていて、潮浬とリーゼのどちらかが常に両手を空けて臨戦態勢を維持している、厳戒モードだ。


 一方で有紗さん本人は特に気にしていないようで。平然と酔って、平然と寝るけどね……。


 ちなみに昨日は珍しく自分の足で部屋に帰っていったが、直後に階段を転がり落ちる音がしたので見に行ってみると。階段の下で足を上にしたアクロバティックな体勢で眠っていた。


 頭を打って気を失っているのかと思って焦るので、勘弁して欲しい。


 仮に聖光石だったかの効果が本当だとしても、自主的に階段から転げ落ちた場合は怪我けがをするはずなのだが。傷一つないのは千聡いわく『勇者の生まれ変わりだけあって、基礎能力が一般の人間よりも高い』のだそうだ。


 ちなみに千聡は有紗さんの事を色々調べたようで。それによると『危害を加えようとした人間が不思議な力で弾き飛ばされた』に当たる事例が、子供の頃から多数確認されたらしい。


 人間離れした身体能力を発揮した事例も、小学生の頃に友達を助けるために一度あったそうだが、それ以来変なうわさが立って周りから距離を置かれてしまい。それが続いた結果、大学は地元を離れ。しかも人が少ない所をと選んだ結果、ここに来たらしい。


 よく調べたなと感心するが。原因が本当かはともかく、有紗さんって暗い子供時代を過ごしていたんだね……。


 そして話を聞く限り。有紗さんは能力を隠して生きているという事らしいが、これはちょっとどうかと思う。


 俺のイメージにある有紗さんは能力を隠すどころか、人間として問題を生じかねないレベルでいいかげんなので。むしろ秘密どころか個人情報とかダダ漏れなんじゃないかと思っている。


 実際、入学して3年で学生証を7回もなくしたらしいし。他にも傘や上着はもちろん、くつやスマホもなくした事があるそうで、財布をなくした事がないのが自慢だと言っていた。


 自慢するような事じゃないと思う。


 と言うか夜中に裸足はだしで歩いている有紗さんを見た時には、正直ちょっとギョッとしたのを思い出す。


 本人いわく、『大学を出る時までは履いていた』そうだが、当たり前だと思う。


『その後公園で一人月見酒をはじめて、以降の記憶はない』という話を聞いた時には、本気で頭を抱えた。

 この人が他人の悪意から身を守ってくれる魔法の石を持っているという話は、今まで千聡達から聞いた話の中でもトップクラスに真実味がないが、現実感は一番ある……。



 ともかくそんな感じで数日が過ぎ、有紗さんに貰った北海道土産も食べつくした頃。

 いつものように執務室の机に座っていると、千聡が前に正座して遠慮がちに話しかけてくる。


「魔王様。ご足労願いたい案件があるのですが、二日ほど時間を取って頂く事はできませんでしょうか?」


 千聡との関係も徐々に変化し。ちょっと前までは話す時は全部正座、お願いする時は土下座して頭を下げながらだったのが。最近は簡単な報告や相談くらいは立ったまましてくれるし、お願いも正座までで、顔を上げたまま話してくれるようになった。


 まだまだ対等の恋人同士にはほど遠いけど、少しずつでも進展があるのはちょっと嬉しい。


「二日なら、今月中いつでも大丈夫だよ」


「――ありがとうございます。では明日からと、週末金曜日から。週明け月曜からのどれが良いでしょうか?」


「明日からでいいよ。どこに行くの?」


 最近は執務室のこの机に座っている事が多く。千聡の姿を見て癒されるのと、シバと遊ぶくらいしかする事がなかったので、夏休みの宿題はほぼ終わっている。

 なので、夏休み残り全部とかでも大丈夫だ。


「以前に会って頂いた玉藻殿から応援の要請がありまして、行き先は秋田県の田沢湖になります」


「田沢湖?」


 湖なら近くに日本一大きいのがあるが、大きければいいという話でもないのだろう。


 スマホをポチポチやって調べてみると、田沢湖は日本で一番深い湖で。世界でも17番目の水深を誇る湖らしい。


 強酸性温泉水の導入で一時は多くの生物が死に絶えて死の湖と呼ばれ、固有種だったクニマスも絶滅したと思われていたが、近年別の湖で放流個体が発見されたのだそうだ。

 これはなんかニュースで見た記憶がある。


 日本一深いとか死の湖とか、いかにも千聡が好きそうな気がするワードだ。

 ちなみに今は水質が改善して、普通に魚がいっぱいいるらしい。


 旅行の段取りは例によって全部千聡がやってくれるらしいので、俺はせいぜい着替えを用意するだけ。


 引越しと転校が多かった俺は東北にも住んだ事があるが、あまり友達を作らなかったので連絡を取るような相手もいない。


 ちなみに潮浬もついてくるそうだが、仕事大丈夫なのだろうか? ただでさえ有紗さんの帰還以降、ほとんどの時間俺と一緒にいるんだけど……。



 とにかくそんな訳で、翌日の昼過ぎ。俺はいつの間にかとなりに出来ていたヘリポートから機上の人となり。どこかの空港で飛行機に乗り換えてどこかの空港へ。そこからは車で目的地へと向かう。


 今回は国内旅行だからパスポート問題はないし、最悪なにかあっても自力で帰ってこられる気がするので、色々安心だ。



 ……車は次第に山道に入り、湖に着いた頃には辺りはすっかり暗くなっていた。


 景色が綺麗きれいな所らしいのだが、ほぼ真っ暗でなにも見えない。

 車の照明がある周辺以外は、かすかに月明かりを反射して光る湖面と、辺りに広がる深い森をわずかに感じ取る事ができるだけだ。


 ちなみに道中千聡に訊いた所。今回の旅の目的はここで水竜と会う事らしいので、人目につかない夜がいいのだそうだ。


 水流かと思って二度聞きしたけど、水に棲むドラゴンで水竜らしい。


 元気になった玉藻さんが日本の魔族(妖怪)勢力の再統一を目指して勢力を広げているらしいのだが、ここにお住まいの水竜さんを中心とした東日本の魔族の一派が抵抗しているらしく。本日はその話し合い(場合によっては物理)に来たらしい。


 なんか穏やかではない感じもするが、水竜とかどんなのが出てくるのかちょっと楽しみでもある。


 先行していた玉藻さん達と合流して挨拶をするが、玉藻さんの病気はすっかりよくなったようで。そのお礼を言われて、改めて感謝の言葉を頂戴する。

 ホントに俺の血が効いたかどうかは極めて疑わしいけどね……。


 ちなみに玉藻さんの配下の人達が50人くらい来ていて何人かを紹介されたが、おおむね強面こわもてでガタイがよく。刀とか持っている人が多いのがちょっと怖い。


 以前京都のお宅を訪問した時にいた、俺の事を『竜神様』と呼んだ女の人がいるのが若干の癒しだ。

 目が合ったら、深々と頭を下げてくれた。


 ……まぁ、うちも潮浬が槍持って来ているし。リーゼのギターケースの中には刀が入ってるし。千聡のカバンにもなんか色々入っていそうなので。物騒な事にかけてはいい勝負なのかもしれないけどね……。



 とりあえず今の所水竜の姿は見えないので、千聡が玉藻さんに『状況は?』と確認をとる……。




 現時点での世界統一進行度……0.21%(+0.02)

・西日本の魔族と東日本の四割 ←

・魔族の小勢力三つ

・イリスルビーレ公爵を正式に配下に


 千聡の主人公に対する忠誠度……100%↑ カンスト『配下の願いを聞き届け、寛容に遠方まで足をお運びくださる。敬愛するに足る懐の深さだ……』忠誠度上昇

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