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110 魔王の資質

 エミクーシさんに冷静になってもらっている間。俺は気になっていた事を口にする。


「ねぇリーゼ、足大丈夫?」


「え、足ですか? 別になんともありませんよ?」


 リーゼが確認するように自分の足に視線を向けるが、足首より先はなにも覆う物がなく、完全な素足すあしである。


 リーゼが履いていたブーツは、戦いの中で破れて吹き飛んでしまったのだ。


「それならいいけど、裸足はだしだから気になってさ」


「――あ、もしかして目障りでしたか? すみません……」


 そしてリーゼは何を勘違いしたのか、申し訳なさそうにソファーの陰に隠れてしまう。


「いやいや全然目障りとかじゃないよ、頑張って戦ってくれた結果なんだからさ。ホントに平気かなと思っただけだから」


 むしろリーゼの素足とか、キレイで魅力的ですらある。


 頑丈そうな盾を蹴り砕いたのに、アザどころか傷一つないのは不思議だけどさ……。


 俺のフォローが功を奏したのか、リーゼは嬉しそうな笑顔を浮かべてソファーの陰から出てきてくれた。うん、やっぱりリーゼは笑っている顔が一番かわいい。


 まぁ、リーゼに限らず大抵の女の子がそうだけどね。……千聡に関しては、冷たい視線を向けられるのもそれはそれでなんかグッとくるものがあったりしそうだけど……。


 そんなちょっとアレな事を考えていると、いきなり隣から千聡の声が聞こえてきてビクッとしてしまう。


「車に予備の靴があります。取ってきましょうか?」


 その質問はなぜか、リーゼではなく俺に向かって発せられた。


 ……ここで『俺が行ってくるから、千聡はゆっくりしていてよ』と言うのは通常最も正解に近いだろうが、魔王の立場でそれを言うといらない気を使わせてしまう上。潮浬とリーゼが護衛についてきて、結果的に千聡を一人で留守番させる事になってしまう。


 そして一人でお留守番はなんか置いてきぼり感があって、一人でお使いよりも寂しい気がする。


 なのでここでの正解は……。


「じゃあ、よろしくね」


「はい、かしこまりました」


 そう言って地上へ戻っていく千聡を見送り。その間に俺は、もう一つ気になっていた事を訊いてみる……。



「そういえばリーゼの刀折れちゃったね。なんか高価な品だって言ってなかったっけ?」


「うちの宝物庫から持って来たので高価かもしれませんが、閣下のお役に立てたのなら問題ありません! ……ただ、折ってしまったのは自分の腕が未熟だったせいなので、そこは申し訳ないです……」


「いや、あんな分厚い盾とぶつかったら折れちゃうのは当たり前じゃない?」


「そんな事ありませんよ。上手にやれば鋼鉄でも斬れたはずですし、そもそも受け止められている時点で未熟です。もっと修行しないと……」


 なにやら落ち込んでいる様子だが、俺としては十分すぎるくらいに凄かったと思う。……でもそうか、武器をなくしてからの方が強かったのも確かだよね。どのくらい違うのだろう?


「ねぇ、剣を持った時のリーゼと素手のリーゼって、強さどのくらい違うの?」


「え、それは……どうなんでしょう?」


 そう言って困惑の表情を浮かべるリーゼ。

 なるほど、こういうのは本人には分かりにくいか。


 視線を潮浬に向けると、少し考えて答えてくれた。


「素手で制約なく戦う時のリーゼちゃんを100とすれば、さっきの状況だと相対評価で70くらいでしょうか」


「へぇ……ちなみに他の人はどのくらい?」


「……やりを持ったわたしが70、シバが80、エミクーシ殿が60、千聡が10くらいですかね。単純な戦闘力の話なので、そのまま戦いの結果に反映される訳ではありませんが」


 なるほど、千聡はなんか頭を使う担当っぽいもんね。そしてシバそんなに強いんだ……。


 リーゼとエミクーシさんが一割以上違うのに序盤互角っぽかったのは、潮浬が言う所の単純な戦闘力以外の部分が影響したのだろうか?


 戦いには駆け引きとかフェイントとか、よく知らないけどなんかそんな類のものがありそうだし。もしかしたら、俺の希望に配慮して致命傷を負わせないように戦ってくれたせいかもしれない。


 それにしても、たしか潮浬は槍を使わせたら魔族随一の腕だと言っていた気がするが。それで力を制限されたリーゼと同等とか、やはりリーゼは規格外なんだね……。



「……そうだ。戦闘力以外に知力も比較できたりする?」


「シバとエミクーシ殿はわかりませんが、千聡を100としてわたしが70、リーゼちゃんが2くらいだと思います」


(2て……)


 まさかの一桁。それもかなり下の方だ。


 さすがに言い過ぎではないかと思うが。リーゼ本人を見ると特に異を唱える様子もないので、本人的にも納得の数値だったりするのだろうか?


「……ちなみに俺はいくつくらい?」


「今の陛下はまだ底を量りかねているのでわかりませんが、元の世界の陛下だと……80くらいでしょうか?」


 お、なんか上手くかわされた気がする。


 ホントは俺も一桁なんだろうけど、本人を前にして低い数字は言いにくいよね……リーゼには『2』とか言ったけどさ。


「元の世界の魔王って意外と高くないんだね。魔王って言うくらいだからもっと飛び抜けているのかと思ったよ」


「陛下の優れた所は直接的な能力ではなく、上に立つ者としての資質でしたから。わたしと千聡とリーゼちゃんなんて、本来同じ場所で肩を並べるなどありえない存在だったのです。それをまとめて配下にしていた統率力こそが、陛下の王たる資質の証明であり。魅力だったのだと思いますよ。そしてそれは、今の陛下にも間違いなく引き継がれています」


 ……なんか潮浬、俺を褒める時はすっごく饒舌じょうぜつになるよね。


 俺には全くピンとこないが。リーゼもうんうんうなずいているので、あちら側ではわかりみが深い話らしい。


「えっと……調整役として空気読むのに優れていたみたいな話かな?」


 それなら最近、ちょっとだけ自信が出てきた点ではある。


 千聡達への対応にも慣れてきたし、そこそこ空気を読んで魔王っぽい言動もできている……と思う。


 だが潮浬は、答えに悩むように少し首をひねり。ややあって言葉を選ぶように口を開く。


「部下の気持ちをよく察してくださるという意味では間違いではありませんが。もっとこう、全てを包み込むような抱擁ほうよう力があると言うか、『この人のふところに抱かれていれば安心だ』と思わせてくれるような、絶大な信頼感と心地よさがあるのです」


 ……なんだろう、俺からは魔族をリラックスさせる物質でも出ているのだろうか?


 に落ちない様子の俺を見てだろう。潮浬が言葉を続ける。


「さっきリーゼちゃんがのどを撫でてもらっていましたが、うらやましいのでわたしもやって欲しい……というのは置いておいて。リーゼちゃんは本来、喉みたいな急所を無防備に他人にさらしたりは絶対にしません。陛下に絶大な信頼を置いているからこその光景で、とても貴重なものだったのですよ」


 なんかさりげなく……でもないかな? 堂々と欲望を混ぜてきたが、俺の方でもそれは置いておく事にしよう。


 さっき空気が読めるようになってきたと言ったが。潮浬相手には空気を読んだ上で、あえてスルーする技能も必要だ。でないと大変な事になる。


 喉を撫でるくらいならいいけど、もっとアレな事を求められていたりするからね……。


 そんな事を考えながら潮浬の言葉を理解しようと努めるが、俺の心当たりとしては『信頼できる』イコール『無害である』かな? と思うくらいだ。


 いくらリーゼが無防備でも危害を加えたりはしないし。潮浬にはむしろ、無害すぎると思われているだろう。


 この理解で合っているかどうかは全く自信がないし、違うような気もするが。ともあれ俺の存在がみんなで仲良く一緒にいる役に立っているのなら、それはとてもいい事だ。


 必死の努力を捧げてでも守る価値があるものだし、千聡と親しい仲間ポジションになるという目下の目標。


 そして対等の恋人同士になるという最終目標にも、必要な事だと思う。



 そんな事を考えながら。俺はリーゼのブーツを取って戻ってきた千聡に『ご苦労さん』と親しげな感じで声をかけ。


『これしきの事でお褒めの言葉を賜るなど、恐懼きょうくの至りです……』と言って床に土下座する千聡を、遠い目をして眺めるのだった……。




 現時点での世界統一進行度……0.25%

・日本の魔族勢力を全て配下に

・魔族の小勢力三つ

・イリスルビーレ公爵を正式に配下に

・天川さんを仲間に


 千聡の主人公に対する忠誠度……100%↑ カンスト『恐れ多くも魔王様に褒めて頂いた』忠誠度上昇

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