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109 武人の名誉と頭目の責任

 リーゼとエミクーシさんの一騎討ちはリーゼの勝利に終わったが、エミクーシさんは自分の死をもって戦いの決着にしようとしている。


 だがそれは一騎打ちの提案者である俺にとって受け入れがたい事なので、断固阻止しようと言葉を発する。


『どちらかの戦闘不能をもって決着とする取り決めだったはずですよ』


 俺の言葉を潮浬が魔王っぽくアレンジして魔族語に訳し、反対に先方の言葉を通訳してくれる。


『戦闘不能かどうかは俺が決める事だ! 武人として最高の戦いをやれたのだから、そこを死に場所にと望んでなにが悪い!』


 息は乱れているが、それでも訳してもらう前から言わんとしている事が伝わってくるような。すごい気迫である。


 多分武人の覚悟とか名誉の問題で。正直それはよくわからないが、でも俺としてもここは譲れない一線だ。


 ……でもよく考えてみると。戦闘不能を判定する審判がいないので、たしかにまだ勝敗は未確定だと言えなくもない。


 時間無制限なので、意識を奪っても目を覚ました時に負けを認めなければ同じ事だ。


 これはどうしたものだろう……。


 リーゼに頼んで間違いなく戦闘不能にしてもらう手もあるが、それは最後の手段にしたい。


 …………よし。


『今は戦いの興奮で冷静な判断ができないのでしょう。少し時間を置いて……そうですね、一時間後に改めて返事を聞きましょう。リーゼ、帰るよ』


「はい!」


『ま、待て!』


 エミクーシさんは俺を……と言うよりリーゼを引き止めようとするが、リーゼはエミクーシさんには目もくれずに、俺の元へと戻ってくる。


『まだ決着がついていないのに逃げたとみなすなら、そちらの勝ちでもいいですよ。それで納得いくと言うのなら、こちらが配下になりましょう』


『――――』


 ちょっと言い過ぎたかなと思ったが、エミクーシさんの性格的に勝敗をひっくり返したりはしないと思う。それこそ名誉の問題だ。


 まぁ、ひっくり返されても俺的には問題ないしね。


 頑張って戦ってくれたリーゼと、苦労が増えそうな千聡にはごめんなさいしなきゃいけないかもだけど……。


 そんな事を考えながら一方的に席を立ち。エミクーシさんに背を向けて控え室へと向かう。


 千聡と潮浬とシバがすぐに続き、駆け戻ってきたリーゼも後に続く。


 部屋を出る時。千聡が振り返って言葉を発した。


『武人の名誉や誇りも結構ですが、自分の立場を忘れない事ですね。貴方は仮にも、一つの勢力をまとめる頭目とうもくなのですから。周りをよく見てみる事をお勧めします』


 さすが千聡。俺の意図を正確に汲んで、ナイスなフォローをしてくれる。


 息子さんをはじめ、部下の人達はみんなエミクーシさんに死んで欲しくなさそうだったので、必死に説得に当たってくれるだろう。


 それを聞き入れて考え直してくれる事を祈りながら、俺は控え室へと足を進めるのだった……。



 ……控え室に戻ってきてとりあえずソファーに落ち着くが、微妙に気まずい。


 特にリーゼに対しては、せっかく激闘の末に掴んだ勝利を無にしかねない事を言ってしまったので、目を合わせ辛い……。


 とはいえこのまま知らん振りを決め込む訳にもいかないので、意を決して口を開く。


「あの、リーゼ」


「――はい!」


 待ちかねていたように勢いよく返事をして。ペタンと勢いよく俺の前に正座するリーゼ。


 あれ、これは……。


 謝るつもりで呼んだのだが、なんか違う事を求められている気がする。


 俺を見上げるキラキラした目は、待ち伏せしていた人達を撃退した時と同じ目だ……。


「……よしよし、リーゼよく頑張ったね。凄かったよ、えらいえらい」


 一瞬の躊躇ちゅうちょの末。俺は求められていると思った方の対応をとる事にした。


 そしてそれは正解だったようで。リーゼは幸せそうに、気持ちよさそうに目を細めて撫でられている。


 とてもさっきまで死闘を演じていたのと同一人物とは思えない……。



 リーゼを撫でていたら不意にあごを持ち上げたので、シバの時みたいにのどを撫でてあげたりしながらしばらく過ごし。一通り撫で終わった所で、改めて話を切り出す。


「ねぇリーゼ、怒ってないの?」


「え、なにをですか?」


「いや、せっかくリーゼが頑張って勝ってくれたのに。逃亡扱いで負けでもいいとか言っちゃったからさ」


「そんなの、閣下が決めた事ならそれでいいですよ!」


「え、いいの?」


「はい。自分は閣下の剣として戦えて、剣としてお役に立てたのならそれでいいです! いっぱい褒めてもらえましたし!」


 ……褒めたって言っても撫でただけで、働きに全然見合っていないと思うんだけど……やはり千聡の仲間だけあって、こういう時の言動はよく似ているのだろうか?


 そしてなにやら絶大な信頼を寄せられているようで。それに応えられる自信が全くなくてプレッシャーだが、でも今回に限っては間違っていなかったと思う。


 この先のエミクーシさんの反応次第ではあるけど、多分……。



 エミクーシさんからいい返事が来る事を祈りながら。俺はゆっくりと時間が過ぎるのを待つのだった……。




 現時点での世界統一進行度……0.25%

・日本の魔族勢力を全て配下に

・魔族の小勢力三つ

・イリスルビーレ公爵を正式に配下に

・天川さんを仲間に


 千聡の主人公に対する忠誠度……100%↑ カンスト『これはよもやの、即日一人の犠牲もなく事が済むかもしれない。圧倒的な戦力を揃えて敵の戦意をくじこうと考えていた私の浅知恵など、魔王様の深慮しんりょの前にはなんと稚拙ちせつであった事か……』忠誠度上昇

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