表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
108/322

108 古(いにしえ)の戦いの作法

 リーゼとエミクーシさんの戦いが始まって、どのくらい経っただろうか?


 スマホを取り出して時間を見る余裕もないほど、俺は戦いに釘付けになっていた。



 ……最初は互角に思えた戦いの様子が変わり始めたのは、リーゼが打ち込んだ刀とエミクーシさんの盾がぶつかり。刀が折れ砕けた所からだったと思う。


 ちなみに折れた刀がまっすぐ俺の方に飛んできて、一瞬血の気が引いた。


 潮浬がやりはじいてくれ。後ろの壁に刺さって事なきを得たが、同時に千聡もスッと手を出し、シバも身構えたので。もし潮浬が弾いてくれなかったら、千聡やシバに当たっていたのかも知れない。


 そう考えると、背筋が寒くなる。


 一方戦いの方は……なぜか武器を失ったリーゼが押しはじめていた。


 エミクーシさんが守勢に回る場面が増え。何度もリーゼの攻撃を受け続けた盾は、ついに完全に割れ砕けて投げ捨てられた。


 鉄棍棒こんぼうはリーゼのこぶしと正面からまともにぶつかってへし折られ。よろいは何か所も破損してボロボロだ。息も上がってきている。


 対するリーゼは、ブーツこそキックの衝撃で破れてしまって裸足はだしだが。体には傷一つないし、呼吸にも余裕がある。


「……ねぇ潮浬。リーゼ、なんか刀をなくしてからの方が強くなってない?」


「そうですね。本来の戦い方に近付いたからでしょう」


「本来の戦い方?」


「はい。リーゼちゃんは元々己が肉体のみを武器とし、本能に任せた戦い方をするタイプで、そういう戦い方をする時が一番強いのです。武器を使った戦いは、無理やり型にはめたものなのですよ」


「なんで型にはめたの?」


手懐てなずける一環としてです。仲間になった頃のリーゼちゃんはそれはもう、手がつけられないほど尖っていたのですよ。自分を倒した陛下にだけは懐いていましたが、他の相手には文字通り、狂犬のようでした。それで、調教の手段として剣を教えたのです」


「調教?」


「はい。――あ、この場合の調教はわたしが陛下にして欲しいやつではなくて、猛獣を飼い慣らす方の調教ですよ。まずは戦いイコール殺し合いではないんだよという所から始まって、真っ直ぐ相手の命を取りに行く以外の戦い方や、手加減という言葉の意味などを順次教えたのです」


「……潮浬の特殊な趣味は置いておいて、剣を使ったら余計危ないんじゃないの?」


「リーゼちゃんの打撃の方がよほど危ないですよ。剣は練習用に柔らかい物を使えば、致命傷は避けられますから」


 ああなるほど。グーパンチよりもハリセンの方が痛くないようなものか。


 その理解で合っているかどうかは知らないが、俺は改めて戦っているリーゼを見る。


 なるほど言われてみれば、刀を使っていた時よりも動きが滑らかだ。

 そういえば一番最初の一撃も、刀を持っているのに回し蹴りから入っていたな……。



 そんな事を考えて納得していると、部屋の中心でリーゼとエミクーシさんが激しくぶつかり。俺の所までその風圧が届く。


 一旦距離をとって体勢を立て直す二人を見て、潮浬が口を開いた。


「戦機が熟してきましたね。そろそろ決着がつきそうです」


 そしてその言葉通り。力を溜めるように一呼吸置いたリーゼとエミクーシさんは、すでに武器もないので渾身こんしんの力をこぶしに込めて床を蹴る――。


 部屋の空気を揺らすすさまじい音と共に、二人の拳が中央でぶつかり合う……なんか、バトル漫画とかで見かける光景だ。


 そんな事を思っていると、エミクーシさんの体がグラリと傾き……それでも一度踏み留まって、最後の力を振り絞った頭突きを繰り出す。


 ――迎え撃ったリーゼと互いのひたいがぶつかり。エミクーシさんは反動で大きくけ反って、仰向あおむけに倒れ……そのまま動かなくなった。


「決着ですね」


 潮浬がそう言い。エミクーシさんの部下達が顔色を変えて走り寄る。


『来るな!』


 ――が、予想外に強く大きなエミクーシさんの声に、全員が足を止めた。


 気を失った訳ではなかったらしい。わずかに首だけを動かして、言葉を続ける。


『一騎討ちの約束だ、手出しは許さんぞ。……はは、おまえ強いな。伝承に語られる戦士達のように、純粋で誇り高く。そして楽しい戦いであった……この時代にこのような機会に恵まれた事、望外ぼうがいの喜びだ、礼を言うぞ』


 エミクーシさんは満足そうにそう言うと、笑顔を浮かべたまま静かに目を閉じる……。


 どうやら、戦いはリーゼの勝利に終わったらしい。


 ホッと息をついて、体から緊張と力が抜けていくのがわかる。……が、次の瞬間周囲の緊張が全く解けていない事に気付き、慌てて気を取り直す。


 部屋の中央に視線を戻すと、リーゼがゆっくりと。大の字になって横たわるエミクーシさんに向かって歩み寄る所だった。


 その向こうではエミクーシさんの部下達が動揺を露わに主を見つめ、目に涙を浮かべている人もいる。


 あれ、これって……


「――リーゼ、ストップ!」


 とっさに声を張り上げると。エミクーシさんの脇に立って右手を持ち上げつつあったリーゼの動きが、ピタリと止まった。


 ……そしてエミクーシさんが、抗議のこもった視線を俺に向ける。


『なぜ止めた!』


 いや、そりゃ止めるだろう。これはどう見ても、エミクーシさんの死をもって決着にする流れじゃないか。


 それはエミクーシさんにとっては本懐ほんかいなのかもしれないし。一騎討ちという戦い方における一つの作法なのかもしれない。


 だが俺にとっては、寝覚めが悪い事この上ない。そもそも一騎討ちを提案したのは俺なのだ。それが原因で人が……人じゃないかもしれないけど、とりあえず誰かが死ぬのは、到底受け入れがたい。



 エミクーシさんから殺意のこもった視線を向けられながら、それでも俺は自分の主張を通すべく。決意を硬く持って言葉を発するのだった……。




 現時点での世界統一進行度……0.25%

・日本の魔族勢力を全て配下に

・魔族の小勢力三つ

・イリスルビーレ公爵を正式に配下に

・天川さんを仲間に


 千聡の主人公に対する忠誠度……100%↑ カンスト『完璧に想定通りに。理想的な形で事が運んでいる。さすがは魔王様が立てた策だ』忠誠度上昇

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ