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107 一騎討ち

 エミクーシさんの部下に案内されて辿り着いた倉庫は、思っていたよりもずっと大きな部屋だった。


 広さは立派な体育館くらいあって、天井もすごく高い。

 サッカーとかできそうだ。


 荷物はわざわざ移動させたのか、ガランとしていてなにも置かれていない。

 部屋の向こう側にはエミクーシさんと、部下達が50人ほど並んでいる。


『おう、準備はいいか?』


 俺達の姿を見るや、エミクーシさんが待ちかねたように立ち上がった。


 濃い緑色をしたウロコのようなよろいを全身にまとっていて、よりヘビっぽさ……と言うよりトカゲっぽさが増している。


 そして右手には鉄製だろうか? 黒光りする大きくて重そうな棍棒こんぼうを。左手にはたたみくらいの大きさの盾を持っている。


 その姿はバジリスクと言うよりも、トロルやオーガをイメージしてしまう。すごい迫力だ。


『準備いいですよ!』


 一方こちらからはリーゼが。回収してきた刀を手に、意気揚々と足を踏み出す。


 部屋の中心で二人が睨み合うが。身長170センチちょっとのリーゼと、3メートルを超えるエミクーシさんとでは2倍も違う。


 さらに横幅と言うか体格も全然違うし、鎧を纏ったエミクーシさんはさらに大きく見える。


 まるで軽自動車とトラックが向かい合っているようだ……。


 刀一つを持って出てきたリーゼに、エミクーシさんが言葉を発する。


『鎧や盾はいいのか? うちにあるのでよければ貸すぞ』


『いりません。鍛えたこの体が鎧ですから!』


『ふん、言いよるわ』


 エミクーシさんは楽しそうに笑いながら言うと、巨大な棍棒を構える……って、あれ?


「ねぇ千聡。審判……と言うか、立会人みたいな人っていらないの?」


「決闘ではないので必要ないと思います……あえて言うなら、この場にいる全員が見届け人ですが」


「……今更だけど、一騎討ちと決闘ってどう違うの?」


「戦場において行われるのが一騎討ち。それ以外の場所で行われるのが決闘という理解でよいかと思います」


「なるほど……」


 そういえばルールらしいルールも決めていない、なんでもありの戦いなので、審判がいても出番がない。


 さっき交わしていた書類と、エミクーシさんの部下達が撮影している映像。あとは互いの誇りと矜持きょうじが、約束の履行を保証するのだろう。


 ……俺にそんなものがあるかは怪しいけど、とりあえずリーゼが負けた場合の約束は守ろうと思っている。


 俺としては魔王の地位とか、どちらが服従するかとかはわりとどうでもいいので。リーゼが危ないと思ったら申し訳ないけど、躊躇ちゅうちょなく降参する気でいる。


 リーゼの命と、魔王の地位や上下関係。どっちが大切かなんて、迷う余地もない選択肢だからね。


 そんな事を考えながら見ていると、リーゼの方もゆっくりと刀を構え。誰一人声を発しない張り詰めた緊張感の中、戦いが始まろうとしていた……。



『――キン』


 リーゼの刀とエミクーシさんの鉄棍棒がわずかに触れ。澄んだ金属音が響いたのを合図に、エミクーシさんがいきなり大きく棍棒を振り上げる――。


『ドン!』


 爆弾でも落ちたような音がして、床が揺れてヒビが走る。


 あまりに大振りに思えるその一撃を、リーゼは軽やかなバックステップでかわし。逆に床を蹴ってエミクーシさんに迫る。


『ゴン!』


 また大きく重い音が響き。リーゼの刀……ではなく回し蹴りがエミクーシさんが構える盾にヒットし。エミクーシさんの巨体を数メートルも後ろに押しはじく。


 回し蹴りを受け止めた盾は一撃で変形し。リーゼの右足は衝撃でブーツの足裏部分が吹き飛んでしまっている。


 ――お互い最初の一撃は相手の力を見定めようとしたのか、あるいは自分の力を見せようとしたのか。


 二人は満足気な笑みを浮かべているが、エミクーシさんの部下達と俺はあまりの光景に言葉もない。


「これは少し時間がかかりそうですね……陛下、こちらへどうぞ」


 潮浬がつぶやくように言い。控え室から運んできていた椅子いすを勧めてくれる。


 俺だけ座るのもどうかと思ったが、このままだと腰を抜かしてしまいそうなので。ありがたく申し出を受けて腰を下ろす。


 ……部屋の中央では次第に戦いが本格化し。二人の気合の声、武器がぶつかる鋭い音、打撃がぶつかる轟音が混ざり合って、絶え間なく響いてくる。


 ――リーゼのこぶしがエミクーシさんの盾と何度目かの衝突をした時。ついに盾の一部が割れ砕けて、破片がエミクーシさんの部下達の方へと飛んでいった。


 何人もが慌てて逃げ惑い、一人に当たって負傷させたらしい。


 近くで見ているだけでも危険な、そんな激しい戦いだ。


 俺の所にも床の破片が飛んできたが、隣に立っている潮浬が見事にキャッチしてくれた。……わりと怖い。


 部屋全体も断続的に大きく揺れ。崩れないか心配になるほどだが、巨大な岩山の地下深くだから大丈夫だと信じたい……。



「魔王様、お茶を飲まれますか?」


 千聡がわりと空気読めてない気がする事を訊いてくるが。気付いたら口の中がカラカラだったし、魔王として振舞わなければいけない都合上。落ち着くためにも悪くないかと思って、もらう事にした。


 手が震えているのを悟られないよう、カップを両手でしっかりと持って口に運ぶ。


 そんな俺を気遣ってか、シバがピョンとヒザに乗ってきてくれて、足の上に座る。



 フワフワしたシバを撫でると、少し緊張が和らぐのが感じられた……。




 現時点での世界統一進行度……0.25%

・日本の魔族勢力を全て配下に

・魔族の小勢力三つ

・イリスルビーレ公爵を正式に配下に

・天川さんを仲間に


 千聡の主人公に対する忠誠度……100%→

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