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106 前時代の戦い方

 俺達と体勢を整えての全面戦争をしようと提案してくるエミクーシさん。


 個人的にはそんなの断固お断りなので、考えを巡らせ。一つ思いついたので、そっとリーゼのとなりに移動する。


「ねぇリーゼ。リーゼとエミクーシさんってどっちが強い?」


「どっちが強いかは分からないですけど、戦って負ける気はしませんよ!」


 ……うん、リーゼが言う事もイマイチよくわからないよね。やっぱりエミクーシさんによく似ている。


「ええと……戦ったら勝てそうって事でいいのかな?」


「戦闘力だけならもちろん勝てますが、全体でとなると戦ってみないとわかりません!」


 ……これは個人の戦闘能力なら負けないけど、軍勢を率いた場合の指揮能力とか、統率とか知略みたいな部分は自信がないという事でいいのだろうか?


 ――うん、それなら問題ない。頼もしい答えだ。


「リーゼ、エミクーシさんと一騎討ちしてって言ったらやってくれる?」


「一騎討ちですか……はい、もちろんです!」


 一瞬戸惑った様子を見せたが。テンション高く、いい返事を返してくれる。


 リーゼの了解が取れた所で、話を千聡に向ける。……なぜかちょっと驚いた表情を浮かべていた。


「千聡。リーゼとエミクーシさんで一騎討ちをして勝負を決めてもらおうと思うんだけど、どうかな? もっといい方法あったりする?」


「――いえ。勝率も高く、期間も短くて済み、犠牲も少なく、手間もかからない。最高の方法であると考えます。……ですが、相手が乗ってくるでしょうか? 一騎討ちは主に、小勢力同士の戦いにおいて用いられた方法であったと聞いております。エミクーシ殿は大陸一つの魔族をべる大勢力のおさですし、そんな大きな戦いの勝敗を一騎討ちだけで決めた例など、寡聞かぶんにして存じません」


 あ、そうなんだ……。そういえば、大きな戦いの決着を一騎討ちだけで決めた話とか聞いた事ないな。俺あんまり歴史に詳しい訳じゃないけどさ……。


 ……でも、なんとなく今回に限ってはいける気がする。

 俺の印象だと、エミクーシさんはリーゼに似たタイプなので。


「とりあえず訊くだけ訊いてみようか。断られたら別の方法を考えるって事で。――潮浬、俺の言葉を適当に魔王っぽく。威厳を持たせる感じで訳してくれる?」


「はい、お任せください」


「うん。じゃあ、『そちらの意見は分かりました。ではここは一つ、一騎討ちで決着をつけるというのはどうでしょう? こちらは、そこにいるリーゼがお相手します』」


 俺の言葉に対して、訳してくれる潮浬の言葉は長めだったので。なんか威厳を持たせる飾り言葉とかを多用しているのだろう。


 ともあれ意図は伝わったらしく。エミクーシさんはちょっと驚いた表情を浮かべて言葉を発する。


『一騎討ちだと? そんなもの1000年以上前か、伝承の中にしか存在しない戦い方だろう』


 あ、やっぱりそういう認識なんだ。でも……。


『お気に召さないですか?』


『…………いや、面白い。最近の戦いはやれ作戦だ、情報だ、数だ、物資だ、資金だ、輸送だと、面倒でいかん。時代遅れの戦い大いに結構!』


 そう言って、子供のような笑顔を浮かべるエミクーシさん。

 うん、やっぱりこのタイプだよね。


『ではそれで。戦うのは今からでいいですか?』


『もちろんだ! ――ここは手狭だな。広い場所……倉庫でもかまわんか?』


 リーゼに確認したら問題ないとの事だったので、そう返事をしてもらい。一騎討ちは一時間後に倉庫でと決まった。


 詳細な条件はその間に詰める事になり。俺達は一旦武器回収も兼ねて、来る時に通った控え室へと向かう。


 途中で戦いが行われた部屋を通ったが。しっかり気絶させられているようで、まだ全員気を失っていた。


 ……死んでないよね?


 エミクーシさんの部下達がついてきて救護に当たっていたので、後で訊いてみよう。



 そんな事を考えながら控え室に戻ってシバと合流し。武器を回収する。


 シバは嬉しそうに尻尾を振って俺達を迎えてくれ。千聡が確認した所、30人くらいが俺達を後ろから襲おうとしていたらしいが、シバが威嚇いかくしたら驚いて逃げて行ったそうだ。さすが伝説級の魔獣。


 千聡がカバンからお茶を出してくれ。一息ついた所で改めて状況を確認する。


「リーゼ、勝率ってどのくらいだと思う?」


「純粋な一騎討ちなら、あと二回変身を残していても負ける気しませんよ!」


 ……そういえばリーゼ、漫画好きだって言ってたな。


「それは頼もしいけど、もしダメだと思った時には構わないから降参してね。怒ったりしないし、リーゼの命の方が大切だから」


「閣下……はい、わかりました! そのご温情に応える為にも、命をかけて戦います!」


「う、うん……」


 ホントに分かってくれたのか大いに不安になるが、とりあえずそれで納得して、話を千聡に向ける。


「千聡、条件どうしよう?」


「おそらく向こうはエミクーシ殿本人が出て来るでしょうから、中途半端な条件では折り合わないでしょう。負けた方が勝った方に服属する……というのが順当な所であると考えます」


「なるほど……うん、それが妥当だろうね」


 諸々(もろもろ)の話が一気に片付くので、俺としてもありがたい。


 俺が同意を示した所で、潮浬が言葉を発した。


「それって、向こうが一騎討ちに負けて服属する事になったとして。向こうの部下達はちゃんとついてくるの?」


 どうやら、すでに勝った後の事を考えているらしい。……フラグにならないよね?


「それはエミクーシ殿の統率力と人望次第ですが。大義名分がこちらにあれば、押さえ込むのはさして難しくないでしょう。やり方も硬軟こうなん色々あります」


「そっか、その辺はあなたの得意分野か……」


 潮浬が納得して言葉を引っ込めた所で、ドアがノックされてエミクーシさんの使いが入ってくる。



 ……一騎討ちの条件は数度の往復の末、以下のように決定した。


1.対決するのはリーゼとエミクーシさん


2.武器ありの時間無制限


3.どちらかが戦闘不能になるか、降参する。もしくは双方のあるじが降参を宣言する事で決着とする


4.敗者側は勝者側に服属を誓う


 という事で決定した。


 三つ目の条件の後半は、俺が特に頼んで入れてもらったものだ。


 向こうはトップのエミクーシさんが直接戦うので関係ないが。リーゼはどんなに不利になっても降参とかしそうにないので、俺にも戦いを止める権利を与えてもらったのだ。


 ……リーゼが信用されていないと思って気を悪くするかと思ったが、『閣下が見ていてくれるなんて嬉しいです!』と、むしろゴキゲンだった。



 そうして50分ほどが過ぎ、俺達は立ち上がって決戦の場へと。

 リーゼとエミクーシさんの一騎討ちが行われる倉庫へと、足を進めるのだった……。




 現時点での世界統一進行度……0.25%

・日本の魔族勢力を全て配下に

・魔族の小勢力三つ

・イリスルビーレ公爵を正式に配下に

・天川さんを仲間に


 千聡の主人公に対する忠誠度……100%↑ カンスト『さすが魔王様。相手の本質を正確に読み取り、一騎討ちという古代の戦い方を承諾させるとは。いかに相手を圧倒する戦力を揃え、最小限の戦いで降伏させるかしか考えていなかった自分の未熟さを、ただ恥じ入るばかりだ』忠誠度上昇

※誤字報告をくださった方ありがとうございます。こっそり修正しておきました。

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