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104 探索、地下迷宮?

 俺達はここの主であるエミクーシさんの姿を探して、山の地下をさらに奥深くへと進んでいく。


 入り口からずっと一本道だった通路が、待ち伏せを受けた部屋から先はいくつかに枝分かれし、階段もあって上下にも分岐する。


 さながら迷路のようで、RPGのダンジョンを思い浮かべるが。千聡は迷う様子もなく、スムーズに歩いていく。


 下調べをしてあると言っていたが、どうやらかなりの精度なようだ。


 歩いているとたまにリーゼが敵の気配を察知し、千聡に命じられて排除に行くが。すぐに戻ってくるので歩みを止める必要もないほどだ。


 たまに敵とエンカウントするというのが、ますますダンジョンっぽい。


 とはいえエンカウントの頻度ひんどは低く。大勢力の本拠地らしいのでもっと沢山敵が出てきても良さそうに思うが、意外なほどに静かである。


 侵入者がいるのに警報みたいなものがビービー鳴る事もないし、隔壁みたいなもので通路が閉鎖されたりもしない。……アニメの観過ぎだろうか?


 たまにエンカウントする敵も俺達を迎え撃ちに来たというより、たまたま遭遇しただけという印象だ。


 情報が伝わっていないのだろうか?



 違和感を覚えながらさらに進んでいくと、不意に千聡が足を止めた。


「この階段を降りた所が第一候補です」


「……なにがあるの?」


「エミクーシ殿の執務室です。四ヶ月前の情報ですから、それから変わっていなければですが……リーゼ、気配は?」


「特になにも感じません!」


「そうですか、一応見てきなさい」


「はい!」


 元気よく返事をして、階段を全段飛ばしで一気に飛び降りるリーゼ。


 なんだか今日はとても活き活きしているし、楽しそうだ。


 戦うのが好きなのか、あるいは千聡達に比べれば少ない活躍の機会だからなのか……。なんとなく両方な気がするが、こればっかりは楽しそうなのは良い事だとも言いにくい。


 複雑な気持ちでいると、ドアを蹴破ったのだろう。『バン』ではなく『ドン!』と、大砲でも撃ったような音が響いてきて。地下通路全体が大きく揺れる。


「師匠、やっぱり誰もいません!」


 リーゼの声に俺達も見に行くと、豪快に吹き飛んだ大きな扉の向こうの広い部屋は、たしかに空っぽだった。


 ……ていうか、この扉って外開きだったんじゃないだろうか?


 かぎ蝶番ちょうつがいを壊したとかじゃなくて、ドア枠ごと内側に吹き飛んでいる。


 トラックでも突っ込まないとこうはならない気がするんだけど……リーゼキックはどんな破壊力なのだろうか?


「――いささか調度品が少ないですが、エミクーシ殿の部屋には間違いないようですね。では次に向かいましょう」


 軽く部屋を確認した千聡は事も無げに淡々と言って、次の目的地を目指して探索を続行する。


 潮浬も特に気にした様子はないので、リーゼキックの威力にドン引きしているのは俺だけらしい……。



 ……二つめの候補地は一番大きな会議室。三つめは武器庫と回るが、エミクーシさんの姿は見つからない。


 武器庫では少人数と戦闘になったが、リーゼが一瞬で倒してしまった。


 どうやら常駐の警備の人だったようで、俺達の侵入に応じて守りを固めていた訳ではないらしい。


 ただ、千聡が中を確認した所ほとんどカラらしく。どこかに武器を持った敵が集まっている可能性が高いとの事。


 俺の緊張が高まり。千聡もけわしい表情で言葉を発する。


「まさか貴重品を持って逃げたとは思えませんし。大人数で迎え撃つならある程度の広さが必要になるはずですから……食堂や倉庫を回ってみましょう」


 千聡は口調こそ普段通りだが。どこかあせっていると言うか、動揺している気配がする。


 潮浬やリーゼは普段通りだけど、なにか良くない状況だったりするのだろうか?


 ……まぁ、敵の本拠地に四人で乗り込んで。それで平然としている方が本来おかしいんだけどね。


 そんな事を考えながら歩き出そうとした時。不意に潮浬が視線を動かして、口を開く。


「待って、なにか声聞こえない?」


 その言葉に多分全員が耳を澄ませたが、俺はもちろん千聡やリーゼもなにも聞こえないらしく、無言で顔を見合わせる。


 だが潮浬にだけはたしかに聞こえているようで、『こっち』と言って先頭に立って歩き出す。


 ……千聡達は身体能力全般。運動神経や体力以外に、五感なども普通の人間より鋭いみたいだが、今まで見てきた中だと千聡は視力。潮浬は聴力。リーゼは嗅覚と触覚を含む感覚感知全般が特に鋭いみたいだ。


 誰か味覚も鋭かったりするのだろうか?


 料理をする身としては、ちょっと怖い所である……。



「……大きな怒鳴り声ね。こっちから」


 俺が背筋を冷たくしている間に、潮浬はそう言ってどんどん通路を歩いていく。


 しばらくしてリーゼにも。もうしばらくして千聡にも声が聞こえるようになったみたいだが、俺にはさっぱり聞こえない。


 俺にとってはシンとした地下通路に足音だけが響く。ちょっと不気味な時間が過ぎていく。


 ちなみに聞こえてくるのは部下をしかる声らしく。千聡によるとエミクーシさん本人のものだろうとの事。


 いよいよ対面かと緊張が高まるが。千聡はなぜか、逆にさっきよりも平静に戻っているように見える。


 ……なんだろう? 敵の所在が判明したおかげだろうか? まぁ、相手の動向が不明なのは心配になるよね。


 そう理解して歩みを進めていると、しばらくしてようやく俺にも声が聞こえてくるようになった。


 なるほど怒っている声で。しかもすごく声量と威圧感があって、正直対面する前からかなり怖い。


 ――だが心を落ち着ける間もなく、すぐに千聡が『この部屋ですね』と言うとびらの前に到着してしまう。ドアを震わせるような怒鳴り声は、言葉が分からない分余計に怖く感じてしまう。


「……千聡、なんて言ってるの?」


「勝手な事をした部下を叱責しっせきしているようですね。ここは上級幹部の部屋のはずですから、その者が命令に反したようです」


「それってつまり、さっきの待ち伏せはエミクーシさんの意図じゃなかったって事?」


「漏れてくる声を聞く限りはそうですが、全部まとめて油断を誘うわなである可能性もあります」


 おおう、千聡は相変わらず用心深いな。

 こういう時には頼もしいけどさ。


 千聡はしばらく扉を観察していたが、やがて扉から目を離す事なく言葉を発する。


「リーゼ、蹴破りなさい」


「はい!」


「――え、ちょっと待って」


 予想外の流れに、思わず止めに入ってしまう。


「一応相手のトップがいるんでしょ? そんな乱暴な事していいの?」


「こちらは一度襲撃を受けた身ですから、ドアを蹴破ったくらいで責められる筋合いはありません……が、魔王様がやめろとおっしゃるのならそういたします」


「いや、そういう訳じゃないけど……じゃあ千聡に任せるから、なるべく穏便に済むように対応して」


「承知いたしました。リーゼ、蹴破りなさい」


「はい!」


 あ、それ穏便なんだ……められたら逆に交渉がしにくくなるとか、そんな感じかな? マフィアの世界みたいだ。



 潮浬に手を引かれて扉の脇に下がり。リーゼの綺麗きれいな回し蹴りが炸裂して長い足が扉を貫くのを、俺は遠い目をして見つめるのだった……。




 現時点での世界統一進行度……0.25%

・日本の魔族勢力を全て配下に

・魔族の小勢力三つ

・イリスルビーレ公爵を正式に配下に

・天川さんを仲間に


 千聡の主人公に対する忠誠度……100%↑ カンスト『敵情について魔王様から頼りにして頂いたのに、エミクーシ殿を探すのに手間取ってしまった。情けない、申し訳ない……だが魔王様は気を悪くされる事もなく。さらに任務を私に任せてくださる。なんと寛大でありがたい事か……』忠誠度上昇

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