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お父様反省会

「よくぞマリアを取り返してくれたな、ガリウスよ!」

城に戻れば、ひと目姫を見た者から、口伝えで勇者と姫の帰還が広まり、城前にはとてつもない人集りが。

王は民衆の前にガリウスと姫を連れ、高らかに喜びを分かち合おうと、また自らの宣言を復唱せんと、口を開いた。

「それでは約束の通り、この勇敢なる若者、ガリウスに謝礼金を与え、我が娘マリアとの婚姻を認めるものと」

「ちょぉっと待ったストぉップ!!」

しかし思いもしないところから制止の声が入り、王はぎょっとして声の主に目を移した。

「ちょっとお父様、あたしそんな話聞いてないわよ!? 何勝手に内々で決めたような話、本人無視して進めてんのよ!」

「……少々待たれよ」

王は姫を奥に連れていき、民衆はざわつく。勇者もおいてけぼりで唖然と眺める他なかった。

「……何じゃ。あの男では不服か?」

渋い顔を娘に見せる王。

「不服とかじゃなくて、逆に何でそこまで娘を嫁に出せるほど絶大な信頼ができるのよ。大体この国、今のままじゃあたしが継ぐことになんのよ!? それともあの人に王位継承権あげるの? その辺りの話彼は理解してるの!?」

「いや、そういった混み入った話は後でよいではないか。何も今日すぐ結婚しろっていうわけではないし、それにお前を魔王の元から助け出してくれたわけだし」

姫はビッと王を指さし、捲し立てる。

「恩人だからこそ王族との婚姻とはどれほどの重圧か教えてやんないとダメじゃない! お父様、お母様が何回病院行って、何年掛けて適応障害と戦ってるかまだ分からない!? そりゃ、彼はお金よりあたしだって魔王の前ではっきり言ってたから、イケメンだしいいかなって思ったけど、せっかくあたしと結婚したのに『こんなはずじゃなかった』って逃げられたら、惨めな思いするのあたしでしょ!? ここはせめて近衛兵とかからのスタートでしょーよ」

「そんなお友達からのスタートみたいに言われても……。だがそれしかなかったのだよ。財政逼迫の中出せる金額も限られとるし」

姫は赤い顔で更にがなりたてる。

「それで金貨1千万!? 何を削ったら出てくる額よ!? とにかくあたしは反対! まず今回の人集りをテキトーにごまかして散らして! 話はそれからよ!」

促す娘に恨みがましく踵を返し、王は渋々民衆の前にまた姿を現しては

「えっと、それでは解散」

より一層ざわめきを呼び、姫がやや足音をカンカン鳴らしながら躍り出て

「皆様、今回のこと、大変お騒がせ致しまして、申し訳なく思います。王家の一員として、そして王位を継ぐ者として、二度と同じことにならぬよう、留意して参ります故、何卒皆様のご協力を賜りたいと存じております。この度のわたくしの婚約については、わたくしは前向きに捉えておりますが、恐らくこの勇敢な御仁には負担の大きいこともございましょう。これからのことについては王家と彼の間で話し合いの上取り決めて参ります故、本日のところはここまでと致します。わたくしも帰ったばかりで少々疲弊しております故。皆様の歓迎のお声に感謝致します」

と優雅に会釈をし、王の腕を取り、美しい笑顔で城内へと歩を進めつつ

「お父様反省会」

と父親に噛みついた。

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