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暗黒の森

その森は臭かった。死体の腐敗した臭いと血の臭いがただよっていた。




医者という職業上、佐渡はこの環境に耐えられたが、アリスの方は限界が近づいていた。









「止まって・・・ください。」




アリスはその場にへたってしまった。




「アリスちゃん、大丈夫かい?チェシャ猫、少し休もう。」






チェシャ猫はUターンして戻ってきた。







「この森は危険。もう女王の手下はウサギだけじゃないんです。急がないと、煮るなり焼くなり好きにされちゃいますよ?(笑)」






笑いごとではない。






「今のうちにこの森について、教えてくれ。」




チェシャ猫は静かに語った。




「ここは暗黒の森。混沌の国の最も大きな部分を占めます。女王陛下の手下のすみかにもなっていますので、一ヶ所に長居すれば危険ですね。


特に・・・帽子屋には気を付けなければ、簡単に殺されてしまいますよ。」




チェシャ猫は、暗い話をまるで楽しい話でもしているかのように明るく話した。




「そうか。まあここが危険なことは充分伝わった。」















「アリス・・・アリス・・・」




背筋に電流が走った。

アリスを呼ぶ声と共に足音が聞こえてきた。




「ウサギ!!??アリスちゃん、走れるかい?」




アリスは木に手をついて立ち上がった。




「はい・・・なんとか。」




「それでは、ついてきてください。」




チェシャ猫は走りだした。2人はそれを追いかける。


足音は遠ざからない。

それどころか、近づいてくる。






「チェシャ猫!!追い付かれる!!!」




チェシャ猫は急に足を止めた。






「やむを得ません、ウサギを足止めします。佐渡様、コートのポケットの中を見てみなさい。」




佐渡はポケットの中に勢いよく手を突っ込んだ。


何か硬いものを掴んだ。

佐渡はポケットから銀色に輝くモノを取り出した。






「拳銃・・・」




遂にタキシードの男の姿が目に入った。




佐渡はゆっくり銀色を握りしめた。






「アリス・・・アリス・・・アリス・・・アリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリス!!!!!!」













森に響きわたる金属音。

手に伝わる重い衝撃。



目の前に上がる赤い液体の柱。




それを発した主はその場に倒れこんだ。













「・・・殺した・・・のか?」




「ウサギはすぐに生き返ります。急いでここを離れましょう。」




そう言ってチェシャ猫は猛スピードで駆け出した。



アリスと佐渡はそれを追いかける。






しばらく走り、3人はスピードをゆるめていった。




「チェシャ猫さん・・・ウサギが生き返るってどういうことですか?」



アリスが口を開いた。




「ウサギは拳銃なんかじゃ死にません。ウサギを殺せるのは女王陛下の城にある首斬り鎌だけです。」







ウサギが死なない。

ということは・・・




「もうじきウサギがここに来ます。急ぎましょう。」




「待って!」




アリスがチェシャ猫を呼び止める。




「なんですか?」






「ウサギはなぜ私たちの場所まですぐに追いつけるの?この森は広いし、道らしき道はないわ。私たちを見つけるのにもっと手こずってもいいんじゃないかしか?」







「あぁ、それなら・・・」












佐渡はチェシャ猫の言葉に絶句した。













「ウサギにはアリスが見えてますから。どこにいるか。」







状況は絶望的だ。




「ってことは・・・いくら逃げてもダメってことか?」









「はい。」




こいつは本当に味方なのだろうか・・・






「じゃ、じゃあどうすれば・・・」






チェシャ猫はニヤリと笑った。




「ウサギは耳がいいです。ウサギの耳は混沌の国中の足音まで聞くことができます。それだけだと、曖昧な場所しか特定できませんが。しかし、アリスがどこにいるかはハッキリわかるんです。」







「そ・・・んな・・・」




アリスは涙目になった。













「姿なら隠せますよ。」










「え?」









「ウサギに場所が特定されないことはできますよ。あるモノがあれば。」




佐渡とアリスは希望に目を輝かせた。




「本当か?チェシャ猫。その場所はわかるのか!?」










「だから今から向かうんですよ。










ウサギの家へ。」






2人は言葉を失った。







「ウサギの・・・家だと?危険じゃないのか!?」









「とても危険ですよ。でも姿が隠せないのはとてもとても危険です。」







確かにそうだ。

銃の弾には限界がある。

ウサギに見つかるたびに銃で対処していては弾はすぐに尽きてしまう。




危険をおかしてまでウサギの家へ行く方が懸命だ。









「さあ、わかったら急ぎましょう。」






チェシャ猫は走りだした。




3人はウサギの家に向かって進んだ。






ウサギの家で更なる恐怖を味わうとも知らずに・・・

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