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始まりの部屋

私はアリスの身元を調べた。


しかし彼女のデータはどこにもなかった。




「佐渡さん・・・迷惑かけてすみません。」




「アリスちゃん、謝ることはないよ。」




佐渡は窓の外を眺めた。




急に病室の戸が開いた。




「誰だ?」




そこにはタキシードの若い男が立っていた。




「アリスを迎えに参りました。」




佐渡は胸を撫で下ろした。



「よかった。身元がわからずに困っていたんだ。これで家族を探す必要もなくなったな。」




その時




「来ないで!!」




アリスが突然叫んだ。




「アリス・・・ちゃん?」




アリスは震えていた。




「アリス・・・何を怖がっているのです?帰りましょう。ワタシたちの場所へ。」




タキシードの男はにじりよってくる。




「来ないで・・・」




佐渡は男の前に立った。




「アリスちゃんは嫌がっている。引き取ってくれないか。」




男は不気味な笑みを浮かべた。




「アリス・・・・・・アリス・・・・・・アリス・・・アリス・・・アリス・・・アリス・・・アリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリス!!」




佐渡の体に衝撃が走った。




血が滴る。




「佐渡・・・さん?・・・佐渡さん・・・佐渡さん!!!」




アリスは佐渡に駆け寄った。




「アリス・・・ちゃん・・・逃げるんだ・・・」




アリスは泣き叫んだ。




「佐渡さん!!!起きてよ!!佐渡さん!!!」






タキシードの男は佐渡を蹴り飛ばした。




「アリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリス」




「来ないで〜!!!」




























アリスちゃん・・・




俺はどうなってるんだ?




アリスちゃん・・・












体に激痛が走った。



佐渡は目を開けるとそこは見たことのない世界が広がっていた。




家の中の一室のような場所だった。



隣にはアリスが倒れていた。



「アリスちゃん!!大丈夫か!?」




「ん・・・佐渡・・・さん・・・」




アリスは体を起こした。




「佐渡さん・・・ここは・・・一体・・・」




二人は辺りを見回した。




「どこかの部屋みたいだ。・・・とりあえず早くここから逃げないとさっきの奴に会うかもしれない。」




「・・・そうですね。」




部屋にはいくつも扉があったが、どれも鍵が掛かっていた。



部屋にはガラス製の三本足のテーブルしかない。



上には小さな金色の鍵が置いてある。




「これ・・・サイズ的に普通の大きさの扉の鍵穴には入りませんよね。」




確かに・・・言われてみれば。







「窓・・・窓を探そう。」



佐渡は部屋にあるカーテンを片っ端から開けていった。




「ん?なんだこの小さな扉は。」






そこには60センチほどの小さな扉があった。




「佐渡さん・・・この扉・・・」




「・・・アリスちゃん。鍵を貸してくれないか?」




「・・・はい。」




佐渡は鍵を射し込み、回した。




ガチャンという音をたてて扉は開いた。




「開きました!!」







「よし、これで逃げられそうだ・・・60cmの人間なら」




「あ・・・」




考えてみりゃそうだ。

扉は自分たちより遥かに小さい。




「どう・・・しましょう・・・」




佐渡は部屋を見渡した。




「・・・あれ?さっきはあんなもの・・・」




三本足のテーブルの上に可愛らしい箱があり、中にはクッキーが入っていた。








「私・・・どこかでこの場面を知ってる気がする。」












「Alice in WONDERLAND・・・不思議の国のアリスだよ。物語の中の少女はこのクッキーを食べて縮んだ。」




佐渡はアリスの方を向いた。




「不思議なことに君の名前もアリスだよ。」






「でも私・・・」




アリスは不安そうにうつむいた。




「ここにいても仕方ないよ。これを食べて、扉の向こうに行こう?」










「・・・はい。」




2人はクッキーを口に運び、ゆっくり噛み、飲み込んだ。













「!!!」




体に激痛が走った。

痛みに声を出すことさえできなかった。













「う・・・縮んだ・・・みたい・・・だな。」




アリスも苦しそうな顔をする。




「・・・きゃ!!」




佐渡も異変に気付くのに時間はかからなかった。




2人は服を着ていなかったのだ。






「しまった!!よく考えてみれば服のサイズは変わらないんだった・・・アリスちゃん大丈・・・」




バチンという音と共に佐渡は吹き飛んだ。




「見ないでください!!」




佐渡は体を起こす。




「ご、ごめん。アリスちゃん女の子だもんね・・・じゃあ、アリスちゃん見ないように歩くから、ちゃんとついてきてね。」







佐渡は扉をくぐった。




その瞬間、佐渡の視界は光に包まれた。



















「こ・・・こは・・・」




佐渡が目を開けるとそこは廃墟であった。




「佐渡さん・・・あそこに・・・」




アリスの指さした方面には可愛らしいプレゼントの箱が2つ置いてあった。




「・・・アリスちゃんはここにいて。俺が取りに行くよ。」




佐渡は箱に近づいた。



箱には時間の経った血のようなものがベットリついていた。




佐渡は箱を開けた。




「・・・服だ。」




そこには2着。

黒と赤を基調としたゴシックロリータと、白いYシャツと黒い裾の長いコートが入っていた。




「アリスちゃん。こっちへおいで。」




アリスは佐渡のもとへ駆け寄った。




「この服に着替えなさい。ないよりはマシでしょ?」




「はい。」




2人は服を着た。




真っ暗な廃墟の中、2人は自分たちの場所を探して、歩きだした。

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