表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
豪腕令嬢は恋を知らない  作者: 馬輩騎
21/28

隣国からのお客様ーその4ー



「…っ///まじか…」


「どこか変ですか?」


「いや、違う。違うけど…」


「フィオーネが想像以上に綺麗で驚いてんだよな!兄弟!」




顔を真っ赤にしたユリウスの肩を叩きながらサジが笑う。時刻は夕方、もうそろそろ夜会が始まろうとしていた。日中城内を軽く案内し、早々に準備のためといって切り上げたユリウスは、夜会用にドレスアップしたフィオーネを見て先程のセリフを吐いたのだ。ナターシャ王妃とショップのマダム力作のドレスは想像以上に素敵な仕上がりになっている。

濃紺の生地で拡がりすぎていないフレアなライン。フィオーネの髪色と同じ銀糸で葉の模様が刺繍されている。胸元から上は濃紺のレースで手首までの袖になっている。しかし背中はレースにはなっておらず傷が見えることはない。首元はレースが無く鎖骨が少しだけ覗く。首元には派手すぎないネックレスが飾られイヤリングはごくシンプルなものだ。緩くウェーブをかけた髪は片側から胸元を通り腰近くまで垂れている。夜会用にメイクアップされたフィオーネの表情は酷く魅力的だ。今日のフィオーネを美しいと思わない人はいないだろう。もちろんユリウスもその1人な訳だし、今日の俺役得!!とか内心で思っていたりする。

そしてユリウスも正装である。つまりは普段より容姿端麗度がうなぎ登りな訳だ。紺色を基調とした詰め襟のジャケットは銀で縁取りされている。金の縁取りは国王のみが許される。片側の肩にかかるマントは臙脂色だ。身長が高いから余計に様になっている。

ここでフィオーネが気付く。


これ、完全なペアルックって奴でよね?ユリウス殿下の正装に王妃様合わせましたね?確信犯ですよね?


ニコニコ嬉しそうに笑っているナターシャ王妃を見てしまい怒る気も失せる。




「やっぱり似合うわねー。頑張ってマダムと試行錯誤した甲斐があったわ!!」


「よく似合ってるよフィオーネ。ユリウスもそう思うだろう?」


「そうですね。」


「ありがとうございます。」




やっと復旧したユリウスも同意する。


こうなったらヤケですヤケ。とりあえず役目は果たしますよ。


今日ユリウスの婚約者が同席するというのは風の噂で広まっている。誰も口にしていないはずなのにどうして広まるのかフィオーネには理解しかねる所であるが、誰かしらが漏らしたと考えるのが一番妥当である。

ユリウスとフィオーネは後から会場に入ることになっているため夜会会場の手前の控え室で待つ。サジも今日ばかりは側近としての正装に身を包んでいる。

不意に視線を感じてそちらを見やるとユリウスと目が合う。すぐに逸らされた。


感じ悪ー。




「何ですか?」


「何でもねーよ。」


「何でもない時に私の方なんて見ないでしょう?」


「別にいいだろ。」


「訳がわかりません。」


「フィオーネは分からなくていい。」




サジの笑い声が聞こえてフィオーネの眉間にシワが寄る。

ユリウスが何を考えているか、はたから見ればフィオーネに見惚れていたと分かるが何せフィオーネは枯れっ子だ。こと恋愛においては初心者も初心者、何それ美味しいの?ぐらいの勢いだ。




「さて、そろそろ時間か。」


「そうですね。」


「よろしく頼むよ婚約者殿。」


「受けて立ちます。」


「2人してそんなに気張らなくても大丈夫だって。お似合いの2人にしか見えねーから。」


「気張ってるように見えますか?まぁ、久々にこの格好で夜会に参加しますしヘマしないように気は張ってますが…。」




近衛に入隊してこのかた公爵家令嬢としてではなく、一警備としてしか夜会には参加していない。ユリウスが戻った時の夜会もユリウスの警護として参加している。

ドレスを着るとその分気をつけなければならない事が増える。


はっきり言うと今すぐ脱ぎたいですが。


フィオーネの言い分が通る訳もなく。自分から引き受けたことを放棄する人でもない。




「じゃぁ行くか、婚約者殿。」


「わかりました。エスコートはお任せしましたよ?」


「もちろんだ。」




いざ、出陣。











ざわざわ


ざわざわざわ


「え、どういうこと?」


「フィオーネ様が!?」




ユリウスの腕にフィオーネが手を添えエスコートのもと会場に入ると、一瞬の内に広がるざわめき。あまり心地良くない雑音の中顔面に微笑みを貼りつけて歩みを進める。国王陛下と王妃の元に向かうと満面の笑みの2人が待ち受けていた。




「やっと来たな。」


「お待たせしました、父上。」


「うむ。」




陛下の元へ挨拶に来ている貴族達の目線が痛いほど刺さる。中には悔しそうに顔を歪める令嬢達の姿もある。それもそのはず、第一皇子の婚約者という立ち位置は誰もが狙っていたはずだ。ため息をつきたくなるのを抑えてフィオーネは微笑みを維持する。

それからしばらく挨拶の波を受け入れ解放されたのはどれほどたってからだろうか。ダンスパートに移行した会場は先ほどのざわめきを少しだけ残して皆各々ダンスを楽しみ始める。




「だから夜会は嫌いなんだよ。」


「ユリウス殿下、誰かにその口調聞かれてたらどうするんです?」


「そんなヘマ俺はしない。」


「ああそうですか。」


「フィオーネも疲れたんじゃないか?」


「それはもう大いに。どちらかというとメンタルの方ですが。」


「だろうな。っと、王太子一行がいらっしゃるぞ。」




ユリウスが対外向けの笑顔を顔面に貼り付けてるのを合図にウイグ王太子がこちらへ話しかけてくる。隣には婚約者ルカの姿もある。




「ユリウス殿下。」


「ウイグ王子、お楽しみいただけていますか?」


「はい、それはもう。このように華やかな席をご用意していただき感謝しています。もしかして、お隣の方は婚約者様ですか?」


「ええ、そうです。」


「よく似た方にお会いしたような気がするのですが。」


「フィオーネは私の側近としても働いていますから、昨日今日と顔を合わせていますね。」


「ご挨拶が遅れて申し訳ございません。フィオーネ・イザナ・ティエリアスと申します。普段は近衛に所属し、ユリウス様の側近としてお側に仕えています。」




目が点になったウイグとルカに対し、ユリウスは微笑みを向ける。




「驚いていらっしゃいますね。私に婚約者が居たことがですか?それともフィオーネの肩書に驚かれたのか?」


「いえ、失礼な態度をとってしまったことは謝ります。すみませんでした。驚いたのです、我が国では女性は庇護下にあるもの。自ら剣を持つことはありません。」


「とても綺麗な方と思っていたんです。ただ、腰に剣を持たれていたので男性なのかと…。でもそれにしては体型が…と失礼な事を考えていました。フィオーネ様、許していただけますか?」




謝罪の言葉を受け取り少しホッとしたような表情を浮かべた2人だったが、アガの登場によって場の空気は一瞬にして変わってしまう。




「そんな外見だけの女の何がよろしいんですの?」


「っ!アガ!」


「なぁに?お兄様。わたくしは本当の事を言ったまでよ?」


「ユリウス殿下、フィオーネ様、申し訳ありません!」


「お兄様が謝る必要なんて無いわ。だって事実ですもの。」




((ざわざわざわ))

再び会場がざわつき始める。

唖然として固まってしまったユリウス。遠くから般若の形相でこちらを見ている陛下、その隣で顔を青くしている王妃。何事かと野次馬と化した貴族達。

フィオーネだけは微笑みを保ち続け、動揺した様子はない。ユリウスの斜め後ろに控えているサジはそんなフィオーネの様子に戸惑っているようだった。

フィオーネからしてみたら痛くも痒くもないのだ。婚約者のフリをしているだけな訳だし、自身のことを美人だとか驕り高ぶった見方をした事はない。常に向上心を持って慎ましやかなのだ。




「あら、何も反論しないんですの?それとも認めていらっしゃるのかしら?」


「ええ、反論などいたしません、姫様。」


「あらそう。ではなぜこの場にいられるのかしら?その神経が知れないわ。」


「それはこの場にいる事が私の仕事だからでございます。」


「仕事?」


「はい。ユリウス様の婚約者として、近衛隊の騎士として、仕事を放棄する事は出来ません。アガ姫様も隣国からの使者としてこの国へ仕事をなさりに来たのでしょうから、私のこの気持ちもわかってくださいますよね?私よりも私の内面をよくお分かりのようですから。」


「はぁ?意味がわかりませんわ。」


「そうですか、それは残念です。」




終始にこやかに話すフィオーネに怖気付いたのか、ふんっ!と踵を返して会場を出て行ってしまった。その後ろから侍女2人と近衛隊2人がついていく。

アガが居なくなったことで会場は静まり返っていたが陛下からの再開の一声で再び活気に溢れ始める。

ウイグとルカがひたすら謝罪の言葉を述べる。そんな2人を見た陛下は夜会が終わった後執務室へ来るように言いつけて自らの仕事をしに歩き出した。仕事と言っても貴族達との世間話や牽制だ。




「フィオーネ。」


「大丈夫ですよ。」


「顔色悪いぞ。」


「…気のせいです。」


「フィーちゃん、今日はもう下がっていいわ。ユリウスも付いていてあげなさい。」


「わかりました。」




王妃に背中を押され会場から退席する。痛くも痒くもないアガからの暴言は、周囲から見れば傷の付く内容だろう。恐らくではあるが、フィオーネの顔色は実の所悪くない。痛くも痒くもないのだから。そしてユリウスもその事をわかっている。

フィオーネの手を引いて前を歩くユリウスの背中をじっと見つめる。少し離れてサジも付いてきてはいるが誰も何も話そうとしない。第一皇子執務室に入った途端…




「あー、疲れた。」


「やっと解放ー。ユリウスもフィオーネもお疲れー。」


「お二人とも…」


「嫌、ぶっちゃけフィオーネ顔色良かったけど。良かったけどあえてあそこはな。だって俺早く居なくなりたかったし!!」


「まぁ私もあの場にいるのはなかなか限界を感じていましたが。」


「なら結果オーライじゃん?な、兄弟!」




楽観的な2人にある意味尊敬の念を抱いてしまう。




「はい、今日はもう解散!確実自室にて休息を取るように。」


「はい隊長ー。」


「夜更かししないで下さいね。明日も早いんですよお二人とも。やる事は沢山あります、今日の事で増えましたね。」


「「…」」




絶望を背負ったような顔をした2人にお辞儀をして執務室を出る。


とりあえず早くこのドレスを脱ぎたい!!





なんかグダグダすいません

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ