表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
豪腕令嬢は恋を知らない  作者: 馬輩騎
17/28

隣国からのお客様

仕事の隙間に投稿してます。

とりあえず新章って感じですかね。



「よぅ!久しぶりだな兄弟!!」


「サジ?何故お前がここに?」


「国王陛下がユリウス殿下の戦友にと、呼び寄せられたのです。」




戦友、曰く教育係。教育係といっても皇子としての統治や人付き合い、隣国の政治や動きについて学ぶ為に用意された。

ユリウスと親しげに話すサジと呼ばれた彼は、ユリウスの乳母の子。年はユリウスと同じ17。爵位の号は持たないがその才能を買われ、外務省で国の為日々精を出している。

フィオーネからユリウスの変化を聞いた陛下が、忙しいのにわざわざ呼び出したのだ。次世代の宰相と謳われているため殿下の側で仕えていてもなんら不思議はないと判断したためだ。




「フィオーネ、聞いてないぞ。」


「言ってませんからね。」


「おい!」


「アハハハハ!陛下からなかなかいいコンビだとは聞いていたけど、その通りだな!とまぁ、そんな訳でこれからよろしく頼むよ。」


「側近として俺につくのか?」


「まぁ、立場上はそんなとこかな?」


「えー、…絶対やだ。お前何かとやらかしそう。」


「うん、俺もそう思う。だから俺は口出すだけ!」


「……苦労をかけるなフィオーネ。」


「お安いご用です。」




フィオーネは微笑みながら答える。

実際問題フィオーネとサジは昨日挨拶を済ませ側近としての仕事をどう分担するか打ち合わせ的な事をしていたのだが、サジが不器用すぎて話にならなかったのだ。紅茶を入れようとしてもカップを割り、書類の整理をしようとすると紙を破り…。


むしろ口だけの方がありがたいです。


剣術と外交、それだけに秀でたサジという男が仲間に加わりまた賑やかになったユリウスの日常。

確実にフィオーネの仕事は増えている気がするが。






サジが城での生活、ユリウスの側近として何と無く慣れてきた頃、国王陛下から召集がかかった。




「来たかユリウス。」


「只今参りました父上。」


「うむ。」




執務室に入ると大量の書類に埋もれた陛下が出迎えてくれる。促されてソファーに腰掛けたユリウスは陛下から1つの資料を渡される。




「これは?」


「来月隣国から王太子とその婚約者が友好の証としてこの国にいらっしゃる。滞在される期間は未定だが、予定表だ。お前にも接待してもらうことになるからな。」


「わかりました。」


「サジも居る事だ、隣国についてよく学んでおけ。婚約者であられる令嬢への接待はフィオーネに助言を受ければ良いだろう。」


「そうですね。」


「そして問題が1つあるのだ。」




頭を抱えるように額に手をついて項垂れる陛下。




「王太子の妹君も共にいらっしゃるようだ。」


「はぁ。それはまた。」


「ある筋からの情報だが、お前の婚約者に推薦しようとしているらしい。」


「はっ?!」


「冷静に考えてみろ?ユリウスお前も17だ。婚約者がいて然りだろう?しかし居らんのだ。付け入る隙というやつだ。今からでも遅くない。婚約者を探してこい。」


「ち、父上それは流石に厳しいです。」


「お前のその顔と猫被りでどうとでもなるだろうよ!」


「ち、父上?」




普段とキャラの違う陛下に困惑するユリウス。

どうやら仕事のし過ぎでおかしくなってきているようだ。




「陛下は公務続きであまり寝ておられません。正常な判断が出来かねるようです。」




淡々と告げるエンヴィーにフィオーネは笑いそうになる。

しかし婚約者問題は早急に対策を練る必要がある。

隣国との友好の証として王太子と姫君が結婚というのはよくある話だ。しかしラムネス王国はそれを必要としていない。経済的にも軍事力的にも周辺諸国家より圧倒的に秀でているからだ。その状況で隣国の姫君と婚約を結べば贔屓しなくてはいけなくなる。つまり、付け入る隙を与えるという事だ。


第一皇子の婚約者となると身分が限られてきますし、早急に選び出さなくてはいけませんね。


フィオーネがユリウスの後ろで思案していることなど露知らず、ユリウスがトンデモ発言をし始めた。




「私はまだ婚約者を選ぶつもりはありません。縛られたくはないですし、まだまだ未熟です。隣国から王太子一行がいらっしゃった間だけ代理で婚約者のフリを誰かがすればいいではないですか?例えばフィオーネとか。」


「は?」




思わず出でしまった声を飲み込むようにしてユリウスを睨む。


何を言い出しやがるこの人は!


国王陛下もフィオーネの隣に立つサジもフリーズして動かない。エンヴィーだけが平然と立っている。

回復してきた陛下は眉間をもみほぐしながらユリウスに問う。




「それは、どういうことだ?」


「だから期間限定でフィオーネに婚約者のふりをしてもらうんです。」


「そこまでして婚約したくないのか…。」


「まだ嫌です。」


「フィオーネ、ユリウスがこんな事を言ってるんだが何か言いたいことはあるか?」


「話をふってくださりありがとうございます陛下。ユリウス殿下、貴方馬鹿ですか?」


「なっ!これでも考えたんだぞ!?」


「考えてそれですか?」


「仕方ないだろ婚約者なんてもんまだいらないし、かといって隣国に諦めてもらうには婚約者は必須だろ?なら気心知れた奴に婚約者のふりをしてもらうのが1番手っ取り早い、と俺は思った。」


「ユリウス殿下陛下の前でその話し方は感心しませんよ。」


「ぅぐっ。」


「よいよい。2人が仲良しなのは良い事だからな。して…ふむ、フィオーネ、強行策ではあるが、下手な身分の娘と婚約されるより今回だけの演技の方が良いと判断したが、どうだ?引き受けてはくれぬか?」


「陛下、許可なさるんですか?」


「もうよい。どうにでもなれじゃ。付け入る隙さえ与えなければよいのだ。」




諦めたそして疲れ切った表情の陛下に言われてしまえば、フィオーネに拒む権利はない。しかし一度婚約者のふりをすれば確実に噂はながれる。というか夜会にも婚約者として出席せねばならないだろうし、盛大に広まるだろう。フィオーネ的には面倒臭い事この上ない訳だ。そして目に見えるティエリアス公爵の行動。

ユリウスを見れば懇願するような瞳で見てくるし。


何故私がやらなきゃいけないかは疑問ですけど、今回ばかりは仕方がないですかね。




「わかりました。」


「おぉ!引き受けてくれるか!」


「ですが、私の父に陛下から説明していただけますか?」


「……えー……」


「よろしくお願いいたします。暴れないとも限りませんし。」


「あいわかった。」




ホッとしたようなユリウスの背中に一撃後で食らわせてやろうと心に決めたのは秘密だ。

その日のうちに陛下はティエリアス公爵に事情を説明し殺気にあてられながら渋々了承を得たらしい。


まさか父上から呼び出されるとは思いませんでした。


フィオーネが了承したのであればそれでよいと言ってはいるが暗殺者の目つきになっていた。




「ということは隣国の方がいらしている間は私は側近の仕事は出来ませんね。」


「まぁ、そうなるな。」




第一皇子の執務室に戻ってきたフィオーネは思い立った事をそのまま告げる。フィオーネが側近の仕事を出来ないとなると、誰がやるか、もちろんサジな訳で。




「大丈夫!そういう時はちゃんとやっから!」


「やれるなら今からでもやってください。」


「ほら、俺は兄弟に隣国について教えなきゃいけないし?陛下からの命令だからな。」


「後で覚えておいてくださいサジさん。」


「兄弟!フィオーネがめっちゃ怖い!!」


「フィオーネは敵に回すなよ、終わるから。フィオーネも無理言って悪いな。」


「隣国の方々が帰った後、どうするか考えておいて下さいね。」


「そ、そうだな。」


「では隣国について、サジさんの講義を聞いてください。ちょうど書類も片付いたところですし。」


「フィオーネってさ、なんつーか、出来る女って感じだよな。」


「馬鹿にしてますかサジさん。」


「してないしてない!!」




逃げるように執務室から出て行ったサジと苦笑いのユリウス。ため息をついたフィオーネは紅茶と軽食を準備するためにキッチンへと入って行った。




一旦ここで区切ります。長くなりそうです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ