ぼくをもう探さないで
夕ぐれの砂浜に、ひとつのちっちゃな子どもの骨があって、一度ずがいこつのすぐ近くにまで波が寄せた。
(夏、おわらせてもいいかい……)
子どもの骨は、かちゃかちゃ音を立てて、まだもう少しあそびたいの。でも、もう、行かなくちゃ……
もう一度波が寄せると、それはやさしく、でも一気に、骨をつつみこんで、去ったあとにはもう何もなかった。
ただ、骨があったあとの砂地にしわくちゃな模様が残っていて、それは遠い子どもの想い出のようでも、あるいはその子が実際どこかに負っていた傷痕のようでもあった。
まもなく夜が来ると、くりかえしていた波は皆、海の向こうへ行ったっきりもう戻ってこなくなった。
海は死んだ。
海水はすこしずつ、白く細かい粒になって、すべてくずれ去っていった。
魚も貝もすでにいなかった。
この海は命を抱くこととは無縁だったのだ。
やがて海底も、その下の砂も粒も、何もかもがくずれて消えていった。
何も、聴こえない。
世界は、いちばんはじめに戻された。
……戻された、はずだった。
だけど、ひとつのちいさくてしわくちゃな模様だけが、色も音も何もかもなくなった世界に、どうしても消えることができずに、焼きついていた。それは……それは、遠い子どもの――
――そう言えばもう、夏はおわったんだった」