5/6
夏のおわりに
「ずっとなくしていたものはこれだったのか」
「わあ……ほんとうにきれい。まるで……」
「まるで……なに?」
「ん……ん。わすれてしまった。なにか、とてもきれいなものがあった。それをわすれてしまった」
「なくしてしまったんだ。思い出して、すぐに思い出して。とりかえしのつかないことになるよ」
「もう、いけない……あんなに……とおくへいってしまった……」
「なくしてしまったんだ」
「……」
「……かなしいのかい」
「ううん。またこれであたらしい旅がはじめられる」
「……うん。そうだね。そう思うと……なんとなくうれしい」
「わたしも……うれしい」
「……」
「……」
「……このいまぼくが手にもっているものはなに? がらくたみたいだけど」
「わからない。でも、もういらないものの気がするわ」
「ぼくらは旅にでるんだ。旅のはじまりにはなにもいらない。旅のおわりにきみがなくしたものをみつけるだろう」
「すてていこう。いらなくなったものは、みんな、すてて……」