カシランの城
どこまでも続く、夏雲のいちばん深みに、カシランの城がある。
カシランの城はゼンマイ仕掛けで、とらわれた子ども達が永遠にそのねじをまきつづけているのだという。
子ども達は、うさぎやねこやいたちのすがたをしているけど、みんなもとは人間の子どもだった。
カシランはなぜか、うさぎやねこやいたちになるべき子どもを知っていて、ある時が来ると、雲の中から長い機械の腕をのばして、その子をさらっていってしまう。
カシランの城につくと、子どもはもうちいさなどうぶつにすがたを変えていて、ものがいっさいしゃべれなくなっている。
カシランは大きなくまほどもあるからだで、時計のかたちをしている。いつも平気で三時の顔をしている。三本のふとい足もある。
カシランはじぶんの子ども達を〝失われた子ども達〟と呼ぶ。
カシランは子どもらに、ねじをまくよろこびをおしえるのだ。
子ども達はねじをまきつづける――永遠の中の一瞬に、はみだす機会を見つけて、カシランの腕をのがれるまで。
その機会をのがせば、また果てることない時空のねじをまきつづけるのだ。
ものもしゃべれない、ちいさきどうぶつのかたちで。
〝失われた子ども達〟のままで。