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むねざわめく砂浜で
夏の砂浜を男の子がひとり、歩いていた。
砂浜と、空と海とが、ただどこまでも広がっている。
かなたには雲がとどこおって、とりでのようだった。空は、とても高くて、とても遠くて、辿り着けそうもなかった。だれかが呼んでくれる声もしない。
あたりを見渡してみても、砂浜に人のすがたはなかった。何も、動くものはない。海の上には影のひとつさえない。打ち寄せる波にも、男の子をさらってくれる気はないらしかった。
男の子が砂浜に腰かけると、沖合いの海と空のあいまに、ぽっかりと四角い窓が口をあけた。窓の向こうはまっ黒だった。やがてその窓は映画館のスクリーンくらいのおおきさになって、こことは違う別の砂浜が映った。
たくさんの人達が動いていた。パラソルがあった。ビーチサンダルがあった。ジュースやアイスキャンディーがあった。かにがいた。スイカがわれていた。そこにいる人は皆、楽しそうに笑っていた。
皆、知らない顔ばかりだった。