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インスタントレインボー  作者: 神ヶ月雨音
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一話・「私と契約して!」

皆さんお久しぶりです。神ヶ月雨音です。

正直、このアカウントはこの作品を投稿するために使っていたと言っても過言ではありません。自分のできる限りの力を込めて紡ぐ、長編(予定)作品です。

なお、主人公の名前が垢名そのままですが、手抜きじゃありません。物語の中でくらい、自分も主人公になってみたかった。それだけです。

主人公と作者は別の存在。そう思ってくださいね。


それでは、インスタントレインボー。始まります。

綺麗な円卓に座っている、茶色いローブを着た男が言う。

「このままでは、とんでもないことになる。早く統率者を決めなければならない」

 それを聞いて、赤いローブを着た男が言った。

「このまま代理のあんたがなればいいだろ」

 すかさず青が口をはさむ。

「馬鹿言うな。そんなこと、黒や紫が許すわけないだろう」

 そう言って青が見やると、紫はコクリと頷いた。

「当たり前じゃない。統率者には私がなるのよ」

「黙れ紫。お前なんぞに統率者の座はやらん」

 と、黒。

 見かねた桃色が言った。

「話し合いじゃどうにかならないの?」

 黒や紫が顔を引きつらせる中、緑が優しい口調で言った。

「戦闘好きがいる中で話し合いは難しいと思うよ……?」

 その言葉を聞いて、白はさびしげな表情を浮かべた。

「じゃあさ、決闘で決めればどうだ?」

 黄色の発言に、白が不安げに言った。

「だ、ダメだよ。私たちは互角になるようになってるんだから……」

「クソッ! なんかいい案はねえのかよ!」

「うるさいから黙ってもらえるかしら?」

 一触即発の雰囲気の黒と紫を見て、全員がため息をつく。そんな中、藍色がポツリと呟いた。

「……人」

「あ?」

 今まで一言も話さなかった藍色の発言に、全員が藍色を見た。

「人間に、代理で戦わせるの……。そうすれば互角じゃないし……」

 皆が納得する中、緑が抗議する。

「でもそれだったら、強い人間を選べた人の勝ちにならないかな?」

「大丈夫……。『契約』して、『加護』を与えれば、その人の力を引き出せるし、私たちとの相性で強さが決まる……。それに、人間は強くなれるから、最後までどうなるか、わからない……」

 藍色のよく考えられた意見に、全員が納得した。

「灰色は……今日も来てないか」

 空いている一席を見て茶色が呟く。

「来てねえ奴のことはどうでもいい。俺は藍色の意見に賛成だ」

「私もよ」

 黒と紫は乗り気のようだ。他の者たちも口には出さないが、賛成しているようだった。

「じゃあそれでいこう。と言いたいところだが、どこでその人間と契約するんだ?」

 茶色の問いに、藍色は少し笑みを浮かべて答えた。

「……『リビド』に決まってるでしょ。これは、リビドの主権を奪い合う戦いでもあるんだから……」

 そう言う藍色からは、いつもとは少し違う異様な雰囲気が漂っていた。その様子に、一同が固唾を呑んだ。

「じゃあそうと決まれば早速始めようぜ。裁定(さいてい)戦争(せんそう)をよ」

 黒の言葉を最後に、皆円卓を立った。



 リビド。俗に言う異世界。いわゆる現実世界と科学技術はさほど変わらず、電気やコンピュータも存在するが、大きく違う点としては魔法や魔物が存在する点だろう。この世界では、現世で言う『国』のようなものが『街』として世界中に散布している。なお、科学技術については大都市と小さな都市とでは大きな差がある。

 その中の一つ、小さな街ミラに、その少年はいた。

「はい、こちらが報酬になります。お疲れ様でした」

「ありがとうございます」

 報酬を受け取り、冒険家ギルドから出てきた少年の名は神ヶ月(みかづき)雨音(あまね)。しがない作家だが、冒険家の一端でもある。

「うえぇ、今回の報酬マズいなぁ。もうちょっと大きめの依頼受ければよかったかな」

 渡された報酬の中身はほんのお小遣い程度のもの。本業であるはずの作家活動があまり売れていないので、厳しい結果だ。

「……そろそろ新作書いた方がいいかな」

 実のところ、雨音はここ数か月まとまった新作を書いてはいなかった。短い短編や掌編はいくつも書いたが、世に出せるほどの本数はたまらなかった。

「ま、仕方ねえか」

 とぼとぼと歩きながら借りている宿に向かう。ここらの土地は魔物も少なく、比較的安全なので落ち着いて活動ができるのだ。

「ただいま戻りましたー」

「ああ、おかえりなさい。部屋のお掃除は済んでますよ」

「ありがとうございます」

 宿に入ると女将さんが出迎えてくれる。ここの職員は皆優しくていい人ばかりなので雨音も気に入っていた。部屋に戻ると、女将さんの言った通り綺麗に掃除がされていた。雨音はベッドの上に荷物を放り投げ、机についた。腰にぶら下げている本を開き、ペンを手に取る。この本は「インフィニティノート」という名前のマジックアイテムだ。この本にはページの上限がなく、めくればめくるほど新しいページが増える。それでも本の厚さは変わらず、持ち主が念じたページを瞬時に開くこともできるという代物だ。

マジックアイテムとは、魔法により特殊な加工がされた道具で、普通ではありないようなことを可能にするものだ。しかし、マジックアイテムを使うことにも魔法を必要とするで、ある程度魔法の得意な人でしか扱うことはできない。

「書き記すって言っても、今日の依頼特に書くことなかったからなぁ……」

 雨音は、依頼に出た時や一日の終わりにあった出来事を必ずこの本に記すようにしている。それは創作のためのネタ用でもあるし、自分の物語を記すためでもあった。

 冒険家は、ギルドを通じて依頼人から依頼を受け、依頼を達成することで報酬を得るという職業だ。だいたいは護衛や物資の運搬、魔物の討伐や撃退がほとんど。まれに抗争の鎮圧や戦争の兵として雇われることもある。ちなみに雨音は、戦争の類の依頼は一度も受けたことはない。

「はーあ、疲れた。今日はこの辺にして寝るか」

 雨音は本を閉じ、ペンを置いた。部屋に放置していた荷物の中から着替えを取り出し、シャワーだけ浴びて寝巻に着替えた。そしてそのままベッドに倒れこむ。

「明日はもうちょっとマシな依頼探そう」

 そう呟いて、雨音は意識を手放した。



 翌日、雨音は朝一番でギルドに赴き、盗賊退治の依頼を引き受けた。そしてその道中。

「ええと、アジトってこっちで合ってたよな……?」

 何もない山岳地帯を雨音は一人で歩いていた。基本的に、雨音は誰かとともに依頼を受けることはない。一人の方が報酬の取り分が多いからなのと、単純に人を誘うのも誘われるのも慣れていないからだ。

「遠いなぁ……。馬車とか出たらいいのに……って、盗賊退治だからそうもいかないか」

 とぼとぼと一人で歩く雨音。鞄(とは言っても腰につけるポーチのようなものだが)の中から干し芋を取り出して噛み千切る。黙々と租借しながら目的地へと向かっていると、突然、頭上から声がした。

「きゃぁぁぁぁぁ!」

 女の子の声だ。雨音がはっと上を向くと、真っ白な服を着た少女が上空から降ってきた。

「はぁ?! いや、どういう状況だよ!?」

 落下してくる少女を雨音は上手くキャッチ……できず、下敷きになった。幸い、少女は無事なようだ。

「いってぇ……」

「わ! ご、ごめんなさい!」

 慌てて雨音の上から降りる少女。雨音はふらふらと立ち上がると、少女を観察した。ぱっと見普通の可愛らしい少女だが、来ている真っ白な服はドレスとまでは行かないが、何処かの国のお姫様のようだった。

「ええと、君は一体……? っていうか、どうして空から……」

「お、お願い! 私と契約して!」

 雨音が言い終わるより早く、少女が言い寄った。

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