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ー残暑の章37- 神帝暦645年 8月22日 その21

 団長がジョウさんの防具店の店内を物色している間に、ユーリが試着室でササッと普段着に着替え終わってしまっていたりする。


「おおー。やっぱり伝説のスクール水着を脱ぐと、元通りになるんだねー。あたしの瞳の色も真紅の色に戻っているよー。これ、本当に不思議だなー?」


 ユーリが試着室の壁に設置してある鏡を通して、マジマジと不思議そうに自分の顔を視ているわけである。ユーリの髪の色も、漆黒から赤みかがった褐色へと元に戻っている。ふう。こうじゃないと、ユーリらしくないよなと俺は思ってしまうわけである。


「でも、悩ましいところだよー。せっかくDカップに生まれ変わったって言うのに、元のBカップに戻っちゃったよー。胸だけは変化したままで良いのに、けち臭い話だよー」


「ウキキッ。これでまた、ユーリ殿はわたくしの守備範囲外へと旅立って行ったのです……ウキキッ!」


 まあ、ヒデヨシはおっぱい聖人だから、しょうがないよな。ちなみに俺はおっぱい仙人だ。団長はおっぱい求道者だ。


「うふふっ? 何故、殿方は女性の胸のサイズに興味津々なのでしょうか? 聖人、仙人、求道者。国はそろそろ、男性全員に黒の首輪(ブラック・カラー)を装着させる義務を課すべきだと思うのですわ?」


「おっと、それはいけないぞ? 世の中にはジョウさんのように嫁が居ないだけでなく、彼女すらいない男性が多いんだ。そいつらが黒の首輪(ブラック・カラー)を装着する義務が発生したら、反乱が起きちまうぜ?」


「ぶひひっ。お言葉ですが、黒の首輪(ブラック・カラー)結婚指輪(エンゲージ・リング)と共に装着しなければ、呪いは発動しないのデュフ。困るのは既婚者だけなのデュフ!」


 ちっ。しまった……。そんな法の抜け穴が存在するとは! じゃあ、ジョウさんのような独り身だと、黒の首輪(ブラック・カラー)に首を絞められることもなく、道行く女性のおっぱいを横目でチラチラ見れるのかよ!


「って、問題はそこじゃねえよ! おっぱいから話題を変えようぜ。えっとだな、ジョウさん。この伝説のスクール水着はどうするんだ? これじゃあ、売り物にならないだろ?」


「ぶひひっ。確かに売り物にはならないのデュフ。しかしながら、ユーリ殿が着たことにより、ぼくちんの夜のオカズになるのデュフ!!」


「おーーーい、団長おおお! 俺の給料から天引きしてくれて良いから、この伝説のスクール水着の購入代金を俺に貸してくれえええ!」


「いや、その前に、先生はツキトくんに給料を出していましたっけ?」


 そんなツッコミ要らんわ! それより、ユーリが間接的にジョウさんに(けが)される事案が発生しかけてんだよ! 娘が嫁入り前に、ジョウさんに間接的に(けが)されるのだけは回避しなけりゃならんのだよ!


「うわあああ。全身に鳥肌が立ってきたよーーー。団長ーーー。あたしの給料からも天引きで良いから、お金を貸してよーーー!」


「いや、だから、ユーリくんにも先生から給料を出していませんよ?」


「そんなツッコミはどうでも良いから、早く、あたしが(けが)される前にどうにかしてーーー!」


 とまあ、こんな騒動が起きてしまい、ユーリの脱ぎたてホカホカの伝説のスクール水着をジョウさんに手渡してはいけないという流れになり、団長が金貨60枚で、ジョウさんから買い取ることになるのであった。


「ぶひひっ! 毎度、ありがとうございますデュフ! ぼくちんの神のような策謀が功を奏したのデュフ!」


「本当にジョウさんがコレを狙って、あんな発言をしたのであれば、俺はジョウさんを謀神(ぼうしん)と呼んでやるけどな? どっちかって言うと、怪我の功名だよな。これって」


「うふふっ。(けが)れの功名と言ったほうがしっくりくると思うのですわ?」


「ウキキッ。アマノ殿、上手いのです。座布団1枚、進呈なのですよウキキッ!」


 ヒデヨシの言う通りだな。さて、座布団はどこだったかな? 俺からもアマノには座布団1枚贈りたい気持ちだぜ。


「失敬な話デュフ。そんなにぼくちんは(けが)れているデュフか?」


「うん」


 ジョウさんの防具店にいる皆が、一斉にそう頷くんのであった。ジョウさんはウギギギギギギ! と発狂し始めるのである。まあ、ジョウさんが発狂するのはいつものことなので、ここは無視を決め込むのが一番だ。


「さて、防具の修繕も無事終わったし、ユーリは伝説のスクール水着を多額の借金を背負って、手に入れたし。これぞ、大団円だな!」


「うふふっ。多額の借金を返しきれずに、ユーリが団長のハーレム入りする未来が視えそうなのですわ? ユーリ? がっぽり稼いで、早めに団長にお金を返したほうが良いのですわ?」


「うん、がんばるー。団長のことは嫌いじゃないけど、あたしはハーレムを形成するような男のところに嫁入りする気はまったくもってないからねー」


「何かひどい言われような気がするんですが? 先生は女性に借金を背負わせて、身売りさせるような極道な趣味なんて、持ち合わせていませんからね? 先生は口説きたいという欲望の元にハーレム入りをさせるんですからね? そこのところを間違わないでほしいところですよ?」


 まあ、団長が借金を理由に女性を手籠めにするような男なんて、誰も思っていないけどな?


「冗談だよ、冗談。でも、夏が終わろうとしている時に、水着なんて購入してどうするんだろうな? 改めて考えてみると、金の無駄遣いも甚だしいよな」


「うふふっ。仕方ありませんわ? 団長は冗談で済まされても、ジョウさんのは冗談では済まされないのですわ?」


「本当に助かったよーーー。お父さんがあたしの着た水着をクンカクンカするのはまだギリギリ許せるけど、ジョウさんだけは身体の組織レベルで無理だよーーー」


「ウキキッ。娘の着た水着をクンカクンカする父親なんて、外道も外道な気がするのですが? ウキキッ!」


 ユーリがまた頭のおかしいことを言い出したな。そんな、娘が着た水着をクンカクンカハアハアするような父親なら、とっとと番所に突き出してしまえば良いのにな?


「まあ、ユーリの言っていることは、どっちがマシかって話だし、適当に聞いてりゃ良いよ。それよりもすっかり長居しちまったなあ。ジョウさんのお店にくると、何故か、時間を無駄に消費しちまうんだよな」


「ぶひひっ。時間だけでなく、お金も消費してほしいところなのデュフ。結局のところ、ツキト殿たちはお金をあまり落としてくれなかったのデュフよ?」


「そこは団長が伝説の水着のために金を落としてくれたから良いじゃんかよ。ありがとうな、団長。おかげで、ユーリは結婚するまでは清い身体でいられそうだぜ」


「まあ、先生としても、何故、ユーリくんが伝説の防具に認められたのか興味がありますからね。もしかしたら、ユーリくんは勇者になれる素質があるのかも知れませんよ?」


「まっさかあ。いや、でも、伝説の防具に認められているもんなあ……。もしかしたら、勇者の鎧一式にも装着者として認められるのか?」


「ぶひひっ。そこは難しいところデュフね。勇者の性別は伝承通りなら、男ばかりが選ばれると言われているのデュフ。このヒノモトノ国で、女勇者が存在したとは聞いたことがないのデュフ」


「店長の言う通りだゴマー。エルフ族に伝わる勇者の伝承でも、女性が勇者に選ばれたという話は聞いたことがないんだゴマー。だけど、魔王は別なのだゴマー」


 ん? ゴマさん、それはどういうことだ?


「魔王は性別が男の時もあれば、女の時もあったと伝承では残されているんだゴマー。でも、勇者は何故か男しか選ばれることはなかったのだゴマー」


「ちょっと待ってくれよ? 今、すっごく引っかかることを言わなかったか? ゴマさんよ。勇者が神から選ばれるのは聞いたことがあるけど、魔王ももしかして、何かから選ばれるって思って良いのか?」


「そうゴマーよ? 魔王もまた、神によって選ばれるのだゴマー。皮肉的に勇者と魔王は神同士の代理戦争の駒と言われているんだゴマー。知らなかったのか? ゴマー」


 マジかよ……。勇者ってのは、世界を滅ぼそうとする魔王を討つためにこの世に現れると思っていただけに、ゴマさんの語ったことは、俺、アマノ、ユーリ、団長、そしてついでにヒデヨシにとってはショッキングなことだったのだ。

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