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ー残暑の章25- 神帝暦645年 8月22日 その9

 あれ? ちょっと待ってくれよ?


「なあ、ジョウさん。勇者の鎧一式について、さっき話がでてきたじゃん? あれって広い意味での魔法の防具だろ? 着るモノを選ばず、【加護】を発揮できるっていう、勇者の鎧なのか疑わしいやつさ。魔法の防具を作成するテクノロジーが失われている現在の状況で、サイズ調整とかしたら、その鎧に施されている魔法や【加護】まで吹っ飛んじまうってことはないよな?」


「良い点に気付いたデュフね? ツキト殿は。実はデュフね? 伝説の防具や一部の魔法の防具はそれを装備するモノの体格に合わせて、若干ではあるデュフけど、防具自らがサイズ調整を行うのデュフよ」


 防具自らがサイズ調整を行う? いったい、どういうことだ? ジョウさんはいつも狂っているから、本気か冗談なのか、判断がつかないぞ? 俺をからかっているだけなのか?


「わかっていないという顔つきなのデュフ。ちょっと待つデュフ。伝説のスクール水着かあるから、実物を見せながら、説明するデュフ」


 ジョウさんがそう言うと、店の奥に行き、それから3分後に戻ってきて、俺たちに伝説のスクール水着とやらを見せてくる。そのスクール水着とやらは、全体が紺色に染まっており、しかしながら、胸の部分に白い長方形の大きな布が縫いつけられていやがる。


「なんか、色々とツッコミの入れ甲斐がありそうな布っきれだけどさ? まずはサイズ調整の話からいこうか?」


「ぶひひっ。ひとつひとつ解説していくのデュフ。まずはデュフ。ユーリ殿、アマノ殿、この伝説のスクール水着を視て、思うところはないデュフか?」


「んっとー。視た目のサイズ的に、12歳くらいの女の子が着れるくらいの大きさだよねー?」


「うふふっ。そうですわね。私には絶対に着れないサイズなのですわ? ユーリでも難しいといったところですわ?」


「感想ありがとうなのデュフ。この伝説のスクール水着が、今のサイズなのは、前の使用者が12歳くらいの黒髪ロングで眼鏡を装着し、さらにおっぱいがDカップの美少女だったと言われているのデュフううう!」


 おい。ジョウさんが解説しながら、ぶひひ! ぶひひ! って鼻息を荒くし始めたぞ?


「ヒデヨシ。いつでも通報できるようにしておけよ? ジョウさんがいつもの病気を発症したからな?」


「ウキキッ。おまわりさんとお医者さんのどちらに通報すべきなのでしょうね? ウキキッ!」


「そこは、おまわりさんにまず通報して、番所に連れて行ってもらって、そこでお医者さんを呼ぶべきだと思うんだゴマー」


 さすが、ゴマさんだぜ。よっし、おまわりさんに雷電話(テレッ・ホン)であらかじめ通報しておくか!


「って、なんだよ。ジョウさんの店に雷電話(テレッ・ホン)があるわけないじゃねえか! ったく、通報するなら、わざわざ、番所に行かなきゃならんな。面倒くさいから、ジョウさんはそのまま、お医者さんがいる隔離施設に放り込んできたほうが早いわ」


「ぶひひっ! さっきから黙って聞いていれば、ひとを病人扱いするのやめておくんだデュフ! 話が横にそれてしまったデュフ。この伝説のスクール水着は確かに、視た目、12歳くらいの美少女用のサイズなのデュフ」


 美少女用なんてわざわざ付け足して説明する必要性がどこにあるのかねえ?


「そんなの気持ちの問題デュフ! ここからが肝心なところなのデュフ。この伝説のスクール水着に認められると、そのひとの体型に合わせて、水着のサイズが若干変化するのデュフ。今は身長140センチメートルくらいの美少女用デュフけど、もし、ユーリ殿がこのスクール水着に使用者として認められれば、身長155センチメートルのサイズに変わるっぽいのデュフ!」


「ほっほお。そりゃ便利な布だなあ。いったい、全体、何の素材で出来てんだ? これ」


「なんでも、オリハルコンで作られた糸を使っていると言われているのデュフ。解体できるのであれば、解体して、分析をしてみたいところデュフけど、手に入れるのに金貨30枚(※日本円で約300万円)も支払った以上、そんなことおいそれとはできないのデュフ……」


「金貨30枚で仕入れたモノをユーリに金貨90枚で売りつけようなんて、さすがにジョウさんはいつもながら狂っているよな?」


「そりゃ、ユーリ殿がこの伝説のスクール水着に選ばれるわけがないのがわかりきっているからデュフ。ちなみに、この水着に使用者として選ばれると、この胸の部分のネーム・タグに名前が刻まれるという仕様なのデュフ」


 はあ。なるほど。この胸の部分の白い長方形の布はネーム・タグってことなのかあ。


「なんだか、あたしが美少女じゃないって、暗にジョウさんにけなされている気がするよー? 試しにでいいから、ジョウさん、あたしにそのスクール水着を手渡してよー?」


「ぶひひっ。ニンゲン、諦めが肝心と言う言葉を知らない小娘なのデュフ! もし、使用者と認められれば、その伝説のスクール水着を金貨89枚で譲るのデュフ!」


 そこは無料(ただ)で譲ってくれるもんじゃないのかねえ? しかも値切ってくれるのは金貨1枚ってさあ?


 と、俺は思っていたのだが、まあ、そんな伝説に謳われるような防具がおいそれと使用者を決めるわけがないだろうとタカを括っていたのである。


 しかしだ。ユーリがジョウさんから、伝説のスクール水着を手渡してもらうと、驚くべきことが起きたのだ!


「あ、あれ? 伝説のスクール水着を手にもったと同時にネーム・タグに見慣れない文字が浮かび上がってきたよー!?」


「な、なんだこれ! うわっ! まぶしい!」


 ジョウさんの防具店の中が輝かしいばかりの光に包まれるのである。伝説のスクール水着から発せられた、その光は10秒ほど続いて、やがてその主張をやめるのである。


「ぶ、ぶひひ!? 伝説のスクール水着のネーム・タグに名前らしきモノが浮き出ているのデュフよ!? これ、なんて読むんだぶひい!?」


「おい。この文字って【漢字】だぞ? なんでネーム・タグに【漢字】が表記されてんだ?」


【漢字】。それ自体は別に失われた言語とかそんなわけではない。だが、俺たちが何に驚いているかというとだな?


「このヒノモトノ国では【名前に漢字を使用する】のは【禁じられている】のですわ。これ、【悠里】と漢字で書かれていますが、多分、【ユーリ】と呼むのだと思うのですわ?」


 そうである。アマノの言う通り、このヒノモトノ国ではヒトの名前に【漢字を使用する】ことが禁じられているのだ。なのに、なぜか、この伝説のスクール水着のネームタグには、ユーリを表す【漢字】での名前が表記されているのである。だからこそ、俺たちは驚いたわけなのだ。


 例えばだ。商店名に【自分の名前プラスなんとか店】と表記する場合、ジョウさんの防具店なら【ジョウ・ジョウ防具店】のように【防具店】の部分は漢字を使っても良い。だが、【ジョウ】の部分はヒトの名前なので、ここには漢字を使ってはいけないのである。


 俺たちの名前もそうだ。ツキトやユーリは漢字ではなく、片仮名で【ツキト】、【ユーリ】なのである。ちなみに役職名でヒトを呼ぶ時は漢字を使用するのは許される。その一例が【欲望の団(デザイア・グループ)】の首魁である団長である。


 団長の名前は【ノブナガ】であるが、普段は皆、【団長】と呼んだり、領収書や暑中見舞いのハガキに【欲望の団(デザイア・グループ)・団長様】と書いたりしているのはそういうわけがあったりする。


 【二つ名】と呼ばれるモノにおいては何故か知らんが、例外的に漢字の使用を認められていたりするから、わけがわからないんだよな。有名どころといえば、【人妻斬り(ジュクジョ・ダイスキ)】とか【性欲魔人(タチッパナシ)】とかな? でも、ヒトの本名自体を【漢字で書く】のは固く禁止されているのである。


「お、おい。これ、どうすんだ? ユーリが下手したら、番所に連れていかれるんじゃないのか!?」


「伝説のスクール水着に認められたのも驚きですが、それ以上にこの【漢字】表記ですわね?」


「ぶひひっ。困ったことになったんデュフ。これでは売り物にならないのデュフ。ユーリ殿。責任もって買い取ってほしいデュフ!」


 ジョウさん。あのさ? 心配するところが間違ってないか?

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