第1話 レッツ、召喚タイム!
2作品目です。
1作品目は全然完結してませんが、よろしくお願いします。予定してる1章までは不定期で急いで投稿しますが、その後は1〜2週間ごとの更新になると思います。
計算等々がめんどくさくて…
いやー、参ったなー。まさかこんなことになるとは。
目の前には王都の広場を埋め尽くさんほどの人々と、無数のふわふわ浮いた水晶のような球。
そして、隣にいる王様が大きな声を上げた。
「我が娘、第3王女リリーシア・ロイ・アーガレオンが、勇者を召喚したことを、ここに公表する!」
「うおぉおお! 姫様ばんざーい!!」
「「「勇者様、ばんざーい!!!」」」
うーん困った困った……。
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俺、甚堂黎は最近まで日本の、某トップ大学理学部博士課程に在籍し、研究に勤しみ、博士号取得に向けて頑張っていた。
昨日、友達が最近ネットで話題となっているらしい、『魔法陣』というものについて研究すると意気込んでいるのを聞き、ちょっと気になったため自分も調べていた。
ただの噂だ、と軽い気持ちで調べていたが、まあなんと物理法則を無視した効果が得られるような物が沢山あった。馬鹿馬鹿しいと思いつつも、面白いとも思ったため、思い切って『転移魔法陣』というものを自宅のアパートで描いてみたんだ。
ネットにあった魔法陣を描き終わって、やっぱり何も起こらないのを見、何やってるんだ俺……と呆れたのを覚えている。
そして、片付けようと魔法陣に手をかけた瞬間……
「え、嘘……。勇者召喚……できた……」
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「え、嘘……。勇者召喚……できた……」
ネット小説お約束の突然のフラッシュや、美人女神様との邂逅みたいな、なんらかの予兆や出来事はなく、ただなんかすごいお洒落で女の子の匂いのする部屋にいつの間にかいて、金色の髪をした少女が目の前にいた。
雰囲気からして高校生くらいだろうか。かなり派手だが色合いの良い、フリルが付いた前開きのドレス、ローブ・ア・ラ・フランセーズに近いだろうそれを身に纏っている。
錦糸のようなストレートの金髪は頬から流れるように垂れ、彼女が少し動くたびにふわりと揺れて、窓から差し込む陽光を弾き輝く。
エメラルドグリーンの透き通った宝石のような目は、困惑の色を示しつつも徐々に喜びが増しているのが分かる。
全体的に見て、彼女はお姫様と言っても過言ではない格好をしているだろう。
ただ、俺は今魔法陣を片付けようと、前屈み、とゆうか四つん這いになっている。そして彼女もだ。顔と顔を近づけ、今にもキスできそうな距離に相手の顔がある。
お姫様もハッとして、それに気付き始めたようだ。顔が真っ赤になり始めている。こ、ここは大人として、なんとか切り抜けねば!
「えっとー……、初め、まして? 俺、甚堂黎って言……」
「姫様、失礼します」
「っ!」
俺たちの左の方にあったドアが開き、騎士のような人が入ってきた。お姫様は驚き、体を伸ばすように立とうとする。あ、ちょっと! そこで体伸ばしたら……
ムチュッ
そんな音が聞こえそうな気がした。
2人の唇は見事に重なりあっていたのだった。
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そして、現在に至る。
まあ、騎士の人にはラノベよろしく誤解されたけど、どうにか誤解を解いたんです。そしたら王様らしき人の前まで連れてかれたわけですよ。すんごい貫禄。灰色のヒゲが胸くらいまで生えてんの。筋肉はめっちゃ厚そうだったし。漢として完全に負けてた気がします。俺研究ばっかしてたモヤシだし。
んで、騎士さんのお話だと、さっきのお姫様は本当にお姫様で、このアーガレオン王国の第3王女様らしいんです。いやー、事故とはいえお姫様にキスしちゃったよ。こりゃまずいなーって思ってました。
うん、思ってましたとも。
「異世界の者よ、我が娘の召喚に応じたおぬしに頼み事がある。それは死け「ゲフンゲフンッ、失礼」……この世界を脅かす魔王を退治して欲しいのだ」
「はあ……?」
召喚に応じた覚えはないし、俺に戦闘能力なんて無いんですが。どうやって魔王なんていうのを倒せと。
しかもこの王様死刑って言いかけたよね。全然キスの件許してないよね? 咳した大臣?さんがいなかったら俺死んでたよね? いつの時代も女の子のお父さんって怖いわー。
ちなみにくだらないこと考えてたけど、なんだかんだいろいろ頭がついていけていません。
「えっと……、質問してもいいですか? 礼儀がなっていないと思いますが、そこはご容赦いただきたいのですが……」
「うむ、許可しよう。言葉遣いは気にせん。ここは漢と漢の話し合いの場だ」
うへぇ、完全に愛娘を嫁に出すときのお父さんって感じだよ……。大臣?さんとかいるのにプライベートの話する気満々じゃんこの王様。
「え、えっと、それじゃあ、なぜ俺が戦うことになっているんですか? 俺、ただの健康的な今時の日本男子で、戦闘能力なんて無いんですが……。」
「ん? その話か。」
他に何の話があるんですか……。別に娘さんをくださいとか言いませんよ……。
「おぬしは我が娘リリーシアの勇者召喚に応じたであろう? 勇者召喚によって召喚された異世界の人間は、それはもう強大な力を持っているという伝説がある。最初は皆自分に力など無いと言うらしいが、結局は歴史に名を残すほどの功績を挙げている。故に、お前にも自分には分からぬ力があるはずなのだ。だから、我らが王国の為に、勇者として世界を脅かす魔王を倒してほしい」
うっわー、なんてテンプレ展開。最近のネット小説でもこんなのやらねーよ。てか召喚してすぐに倒してー、って無理でしょ。こちらとら争いを好まない善良な日本人ですよ?どう考えてもすぐに戦うことなんてできねーよ。これはNOと言える日本人として、キッパリ断らねば……。
「えっと、申し訳あり……」
「見事魔王を倒してくれれば、先ほどの娘への無礼は見逃してやろう」
「はい、誠心誠意望ませていただきます!」
王様から尋常じゃない殺気が溢れ出してくる。テメェ、ウチの娘に手ェ出しといてオレの頼みを断ろうってのか?って暗に言ってるよ……。お父さんめっちゃ怖い。その件出されたら頷くしかありませんよ……。大臣?さん助けて。
「うむ、良かった。かたじけない。しばらくは戦い方の指導やこの世界についての説明等を、王宮にて行う。すぐに討伐に出てもらう訳ではないゆえ、心配するな」
「あ、ありがたきお言葉でございます……」
と、とりあえずすぐに戦えって訳じゃないのか。よかったぁ……。
「では、まずは国民にお前が召喚されたことを今から発表する。ロレンツ大臣、彼を着替えさせて広場に案内せよ」
「承知いたしました」
「……はい?」
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んで、冒頭のあのシーン。いやー、緊張した。しゃべることは無かったけど、あんなたくさんの人の前に立つのは初めてだったし、燕尾服着たのも初めてだったよ。学会で発表とかしたことはあるけど、あんなに人いなかったし。日本で燕尾服着ることなんて無いし。
ちなみに、王様の隣で突っ立てたからめっちゃ怖かった。それにお姫様も人前に立つとき以外終始顔真っ赤で、俺と目をあわせようとしないし。さらに王様の機嫌が悪くなったよ。あんなの人間に出せる殺気じゃねぇよ。
しかし、そんな色々緊張する俺お披露目会が終わっても、道が見えないほど集まった人が壁のようにいる。これどうやって帰んだよ。見てるだけでめっちゃ疲れる……。
けれど、やさしいロレンツ大臣がひとつひとつ今の状況を俺に解説しながら、人混みを大臣の手腕でさばいて通してくれることに。かなり助かり癒されました。まさかおっさんに癒される時が来ようとは……。
まず、俺を召喚したことの目的。いや、召喚なのか転移なのかはわかんないけどね。俺も魔法陣描いてたし。
召喚されたての時に王様が説明した大まかな内容とほとんど同じだったけど、より詳細に話された。今周りにいる無族とは違う、魔族という存在が、この世界の北方に存在し、その王が魔王と呼ばれるらしい。んで、現代の魔王が過激な人物らしく、無族の領土を侵略して自分の私欲に使おうとしている。しかし、魔王を討伐しようにも力が強すぎて無族では勝つことができない。そこで、異世界の勇者に頼ろうというわけらしい。やっぱなんで俺なんだろ……。
次に、この国について。
無族が住む大陸の中央の平野部に位置していて、海には面しておらず、平野なため山も無い。しかし、交通の便では他の国より群を抜いて有利なため、この国は交易によって成り立っている。交易を主軸にしているため、先ほどのように他国の人間含めて多くの人間が集まりやすい。多種多様な人種が集まるため、飽きないだろうとのことだ。
その他のこの世界の常識や詳細な情勢については、後日王宮にて勉強会を開くから楽しみにしてほしいとのこと。
「本日の予定はほとんど終了いたしましたので、お部屋へご案内いたしました後、ご自由にお過ごしください」
驚くべき早さで王宮の中に戻った後、ロレンツ大臣がそう言って王宮の日当たりのいい部屋に案内してくれた。
「明日の朝にはメイドが参りますので。それでは、ごゆっくり」
「ど、どうもです」
ふぃー、とりあえず1人になれた。これでゆっくりできるぜ。中々展開が早かったんじゃないかな。さて、まだ昼3時くらいか? 時計が無いからわかんないけどそれくらいだろ。
うーん、めっちゃ流されてて状況を分かってなかったけど、ぶっちゃけ色々今の状況に疑問がたくさんあるよな。王国の目的とかはロレンツ大臣が教えてくれたけど。
ネット小説の展開に酷似してるから、それと照らし合わせて考えると、色々疑問は湧いてくる。
まずは、言語だよな。言葉がなぜ通じてるのか分からない。お姫様とか金髪だったし、王宮の中の人たちを見てたら大体は西洋人って感じの顔立ちだった。人種が違えば文化が違うし、文化が違えば言葉が違う。たまたま日本語しゃべってるっていう可能性は限りなくゼロだろう。
あとは、この世界の文化のレベルだな。この部屋に時計が無いのが真っ先に例に上がるけど、だから中世レベルっていうのは早計だ。俺お披露目会では、謎の球体がふわふわ浮いてた。アレがどんなものかは知らないが、まず浮いてる時点で、地球の現代社会の科学技術を遥かに上回っているだろう。魔法とかか? それに、俺召喚!から、俺お披露目!の所までの時間がありえないほど短い。あれほどの人間をあの広場に集めるには、携帯電話を超える情報通信技術が必要だろう。
あとは……
「ねえ」
「うひゃあっ!」
「む、そんなに驚かなくてもいいでしょ。ノックはしたんだし。気付かない貴方が悪いのよ」
俺がうんうん考え事していたら、いつの間にか俺を召喚?したリリーシア姫様が、まだ顔を赤くしながらも、隣にいた。
今回は計算等々は入ってませんが、次回から入れていきます。
主人公の能力はわかってないのに、召喚のあとのくだりが超特急で進んでいます。
次回からはもう少しゆっくりとした展開になるかと。