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スカウトマン、打ち合わせをする

「アレイト、ミレイト。送還の準備にどれくらいかかりますか?」


 王子が二人のマント姿の美人を呼ぶ。二人は足音もさせずに側に来ると長い銀の睫毛を瞬かせ、何か目配せし合った。


「「最短でも三時間はかかるかと思います」」


 紫と緑の髪の二人は瓜二つの顔で異口同音にそう答える。


「仕方ありません。それでお願いします。彼女達は国でも最高の召喚魔術師ですが、やはり難易度の高い儀式でして」


「あ、いいよ。三時間くらいなら。無理しない範囲で全然いいから。あ、でもこっちと向こうの時間の流れって差があるのかな」


「さて、それは分かりませんが……」


 三時間か。でもそれくらいで異界を行き来出来る魔法が存在してるって物凄いよな。やっぱり。もしかして俺にも何か魔法とか使えるようになってないだろうか。

 二人の魔術師はすでに魔方陣を描き換え始めている。王子みたいに無茶しなくていいんだからね?

 でも、その間どうしよう。


「爺、まずは彼に衣服を。それと何か軽食でも。後で彼に宝物庫に保管された魔法装具を見学してもらいます」


 王子がテキパキと指示を出している。俺がどうするかは決められていたようだ。


 すぐに別の部屋に連れて行かれ、服が用意された。

 下着とかどんなものかと思ったら、綿の短パンというか長めのボクサーパンツみたいなもので履き心地も悪くない。ズボンとシャツも着て、やっと寒さと恥ずかしさから解放された。

 あの美人魔術師達の前であの格好とかちょっとね。ある意味興奮しなくもないかもしれないけど。いや、俺にはそんな気はないはずだ。


 テーブルにお茶とクッキーとスコーンみたいな物が並べられた。

 そう言えば凄く喉が渇いてるな。お茶を飲んでみると不思議な味だった。薬草っぽいから紅茶ではなくてハーブティーらしい。クッキーとスコーンは結構いける。


 王子も俺の前でお茶とクッキーを食べてるんだけど、俺マナーとか知らないけど大丈夫かな。王子そういうの厳しそうだよな。時々チラリと見てくるが何も言ってはこない。少し気にはなるけど、口を出す気はないってとこかな。


「少しは落ち着きましたか?」


「え? ああうん、大丈夫だ」


「傷は治っていても、相当失血しているはずです。魔法である程度は回復していると思いますが。本当はしばらく休んでいてもらいたいところですが、せっかく三時間あるのです。有効に使いましょう」


 さっきから凄くダルいのはそのせいか。無理してでも食べておこう。


「改めて名乗ります。ジークリング・フォールレイ。このフォールレイ王国の王子です」


 王子っていうと金髪碧眼の優しい笑みを浮かべた爽やか系イケメンを想像しそうだが、この王子はそれとは違うタイプだった。金髪なのはその通りだけど、さっき言ったようにかなり目付きがキツくて表情も凄い硬質だ。高飛車な感じではないんだけど、堅物過ぎて取っ付き難そうな雰囲気を醸し出している。


「あ、はい。俺、いや僕は大石鉄人です」


「私に対して言葉遣いは直さなくて結構ですよ。話しやすいように話してください」


「そうですか、なら……じゃあまず、過去の人がその魔法少女を判別するのにどんな方法でやったのか、とかは伝わってる?」


「やり方はそれぞれだったそうです。各地で様々なテストを行い選んだとか、大勢を集めて直感で選んだとか」


 大勢を集めてって、オーディションとかそんな感じだろうか。何か特技を披露してください、とか?

 あ、でもそうだ。


「俺を呼んだ召喚魔法みたいに魔法っていうのがこの世界にはあるなら、その魔法の能力の有無とか強弱とかが関係してたりする?」


「その場合もなくはないと思いますが。強力な魔術師でかつ魔法装具の適性もあった人物もいたそうですし。しかし今現在この国が抱えている唯一の使い手は魔法の素質はないようですがね」


「って、一人いるの!?」


「ええ。極稀に魔法装具が所持すべき者を見出すことがあるのです。その場合は適性も極めて高く、強力な戦力になります。が、さすがに一人でこの国全体を守る事は不可能ですから」


 王子が目線を手にしたカップに落としながら言う。確かにいくら強くても一人で国全体なんてカバー出来ないよなぁ。


「へー、会ってみたいなぁ。やっぱりどこか普通の人とは違う雰囲気があったりするの? 特別な力があるとか」


「いえ……どうでしょう、特にそういうことはないと思います。異世界人の貴方になら何か分かるのかもしれませんが。しかし、今はここからかなり遠くに行っているようですから、すぐに呼び戻すのは無理でしょう」


 そっか。きっと移動手段は馬とかだろうし、時間かかりそうだもんな。

 かなりゆっくり休憩してから、王子が魔法装具を見に行きましょうと立ち上がった。



 ガチャと分厚い扉が開かれる。こんな扉がこれで三つ目だ。さすがに厳重なんだな。窓がなくて、埃っぽい部屋だ。

 王子がサッサと入り、壁のロウソクに火を点けていく。


「こちらです。奥へどうぞ」


 豪華な鎧やら剣やら、宝石類などが並べられたさらに奥、大きなガラス蓋の金属ケースの前に王子が立っている。


「ケースに近付き過ぎないように。警護の術式は切ってませんからね。この中にあるのがこの国で管理している魔法装具です」


「おおー、やっぱり厳重な警戒なんだなぁ」


 思わず出していた手を引っ込めた。

 中に鎮座しているのは、色や形は異なるが何かの宝石の取り付けられた、槍といったすぐ武器と分かる物から楽器のような物まで様々だった。

 散々眺めてふと気付く。

 あれ、宝石だけの状態の物もあるぞ。


「これって……魔法装具だっけ、本体はこの宝石ってこと?」


 俺の言葉に王子は少しだけ口元に笑みを作る。お、当たりかな?


「その通りです。使い手の得意不得意に合わせて剣にしたり槍にしたりとしますがね。単純に攻撃をするための物以外にも違う効果を発揮する物もあるそうです」


「これが夜の獣に有効な武器って言ってたじゃん。他の普通の武器だとどうなの? 傷も付けられないとか?」


「一応傷は付けられます。でもすぐに再生してしまうんですよ。多少の時間稼ぎは出来ますが、倒すまでは出来ないんです」


「なるほどねぇ」


 王子は懐から何かを取り出す。懐中時計的な物だったのか、時間を確認したらしい。


「そろそろ三時間ですね。少し早いですが広間に戻りましょう。次に来ていただけるのはいつですか?」


 歩き始めながら王子が聞いてきた。

 うーん、一人でもいいから早く見つけてあげたいよな。

 あ、でもトラックに轢かれて無傷で戻るって相当変な話だよなぁ。親になんて言えばいいだろう。

 大学近くのアパートに一人暮らししてるけど、実家は他県で結構遠いんだ。きっと警察とかから連絡もいっているだろうし。意外と軽傷で済んで、親切な人に世話してもらってる、とかか? いややっぱり入院してなきゃ変か。


「俺の世界の人と連絡を取れる魔法とかはないよね?」


「ありません」


 にべもなく言い切られた。


「次に貴方が来る時に、王都の女性達を集められるだけ集めておきます。ひとまず、年齢は幅広く十代から二十代くらいでいいですか? もう少し絞り込みますか? 既婚か未婚か、魔法能力の有無などでも」


「出来るだけ大勢を見てみたほうがいいってことなら、それくらいでいいんじゃないかな。でも確かに、いくら適性があっても妊婦さんとかじゃ戦わせられないし……あんまり小さい子でも無理だろうし」


 王子は目を閉じて少し考え込む。


「分かりました。では健康に問題がなく、且つ未婚の女性に限りましょう。それでも数百人はいるはずです」


 うわー、それでも結構な人数だな。何となく世界観的に結婚年齢早そうだから、もっと減るのかと思ったら。

 だけどどんな子がいるんだろう。あんまり多いと一人ずつ顔を見るだけでも大変だろうな。何か武器を振る様子とか見せてもらえばいいのかなぁ。いや、魔法があるんだからそれを披露とかでもいいのか。


「うーん。そうだな、一人ずつ何か特技でも見せてもらえれば」

読んでいただきありがとうございます。


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