戦いの始まり
ピピー!
けたたましい笛の音が近づいてくる。どうやら管理の先生が来たみたいだ。
「反則です!あなたは一つルビーを取ります」
腕を掴まれたのはダイアン。リヴァールの校則には、“上の階級の者へ会いに行く場合はその場で許可をしてもらうか、特別許可証を発行してもらわなければならない”とある。
「ちょっと待って!」
ミシェルは時間を止めてダイアンに痛くない少しの傷をつけた。
「私が怪我を負わせちゃって。だから調合した薬を使ったの。だから私が許可したのよ」
「しかし・・・」
「今回は良しとしよう。特に違反はない。」
声がする方を向くと、ジルが立っていた。管理の先生が「はっ!」と一言残し、足早にその場から去った。
「ダイアン、ご飯行こう。」
ミシェルはジルの存在などない素振りで食堂へ向かう。
食堂では長いテーブルにより、クラスが分かれていた。ミシェルとダイアンは背中合わせになるよう、近くに座る。
生徒が全員集まったのを確認し、ジルが現れた。
「今年の新入生は実にすばらしかった。残念ながら不適合者も数名いたが、まだまだ伸びる見込みがあります。そしてなんと今回は3人もコスモSの能力を持つ生徒がいます。10数年ぶりのことです。」
ジルの合図で椅子が浮かび上がり、ミシェル・アリス・デイスはジルの横に移動した。
「彼らには我々教師側として皆さんに魔力のコントロールなどを教えてもらう。」
ジルの紹介後、たくさんの生徒が集まってきた。質問攻め、エンブレムの見学、一時は騒然としたが、教師により連れ戻される。一部「バケモノじゃん」などの声も聞こえたが、3人は全く気にしていない。
コスモとソルの寮は棟が違うため、棟の分かれ道までダイアンと他愛もない話をしながら歩く。
「じゃあ、また明日。」
恥ずかしそうに言うダイアンに、ミシェルは一枚の紙を渡した。
「思考手紙(Think Lettera)。胸に当てて私へ問いかけて。電話禁止だけどこれならばれないから」
こそっと伝えてわざと「おやすみー」と大きな声で言って自室へ向かう。
眠れない。右手の痛みが治まらない。もう縛るのも限界に近づいている。一刻も早く返さなければ・・・。
うなされて起き上がる。まだ早朝5時。時々襲われる痛みにより目が覚め、睡眠不足だが、もう寝れそうにはない。
“今抑えるよ”
優しいエリファスの声とともに、痛みが和らぐ。
「ママ・・・自分でする。これ以上ママに負担かけたくない、やめて!」
ミシェルは見えない何かを振りほどく。
“我々の失態を娘に背負わせているのに、負担もなにもない”
アーサーの声が響く。
“私たちもまだ大丈夫よ”
エリファスの優しい声で少し眠りについた。
コンコン。
ノックの音で目を覚ました。ドアの前にはアリスとデイス。
「ミシェル、そろそろ授業・・・熱?」
「えっ?」
「あ、ごめんね。なんとなくだるそうに見えたから。」
「ううん、大丈夫。5分で用意する!」
扉を閉めて魔法を屈してシャワーとブローを済ませる。両手でほほを抑え、熱さを確認する。かすかに熱い。体調の変化に疎くて多少熱があっても元気なミシェルの熱があることに気づくのは両親とジルと・・・レイ。ふとレイのことを思い出した。レイは今、どこでなにをしているのだろうか・・・。
支度を済ませ、二人にごめんと軽く謝り、魔師室へ向かう。
魔師室には多くの教師が授業の準備をしていた。
「おはよう、小さな教師たちよ」
声をかけてきたのはスタニスラス・ガードナー。ジルの補佐としてもものすごい力を発揮するベテランの魔法使い。柱として動くことのできないジルに代わって学校の管理などもこなす。
「まずは君たちのエンブレムを見せてもらおうか」
そう言うと、エンブレムをはめた手が勝手に浮き出した。
ふむ・・・。ぼそっとつぶやき、杖を押し当てた。
するとエンブレムからミシェルは赤、アリスは黄色に近い緑、デイスは濃い青色の炎が産まれた。
「なるほど。ばらけたね。アリス、君は回復などのサポートに関する術の授業を。あと10分ほどで始業だからすぐに向かうように。資料はそこ、授業の進め方はお任せするよ。」
杖を一振りし、アリスの手元に資料が届いた。
一礼をし、一足早く授業に向かったアリスを見送り、残り二人の見極めを続けた。
「どっちがどっちでも良いんだが・・・デイス、君が基本術の授業担当で、ミシェルが攻撃術かな。」




