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BLooDマジック  作者: ちゃむ
第一章
4/7

能力解放

 


 「ねぇ、どうしてお食事をやめたの?」

 隣にいるダイアンが小声で聞いてきた。

 「確かに食堂は8時半で集会は9時から。ギリギリなのは常識として有り得ないし、さっきの放送では“速やかに”が強調されていた。隊列を組むにしても上層部の指示に的確に反応して行動を取らなければ魔法使いにはなれない」

 横からメガネの男の子が説明した。

 「僕は今年度の生徒の中で、一番の優等生だから何でも聞いてくれたまえ。」

 男の子は誇らしげな顔をして立っている。

 一度閉め出され別室にいた生徒たちも呼ばれ、新入生300人が揃った。

 ジルの合図で先生二人が双協魔法で部屋全体に広がる大きな魔法陣を繰り出した。

 適当に並んでいた生徒が一定の塊に振り分けらていく。

 左側から39人、75人、29人、56人、75人、23人、3人。

 「ふむ。これはなかなか・・・」

 校長が話し出す。

 「この学校には先輩も後輩もありません。能力の高いものが優勢です。ただし、その力を悪用したり、力任せの者については強制剥奪。どんな手でも使います」

 笑顔で話すジルだが、どす黒いオーラが放たれている。何人かは生唾を飲み込む。

 「でも、ここはあくまでも能力解放、そして能力値をあげるための学校にすぎません。上の者は下の者に教え、下の者は上の者からその術を学ぶ。怖いことは何もないので、楽しんで授業に参加して下さい。さて。」

 ジルはグループを別室に移動させた。


 「我らが君はいかほどのものなのかしら」

 また水晶を覗いている女たち。

 「上まで上りつめてもらわないとこちらとしても手が出せない。」

 「使えなければ殺してしまえばいい。それだけでも奴等は混乱するし、十分な収穫だ。」

 「それまで監視させてもらいますか。」

 不気味な笑い声が闇に広がる。


  

 メガネの男の子はそわそわしていた。周りをキョロキョロ見回し、自分が居る棟が何のかを探る。よく見るとあちらこちらに太陽のマークがある。彼がいるのはソル棟。

 ソルグループで仕分けられたのは98人。この中から能力が高ければさらに絞られていく。

 「ようこそ、ソルへ」

 いかにも魔女という格好をした生徒が現れた。

 「私はソルの管理生パピュス・ド・ウェイト。先輩も後輩もないってジル先生が言っていたけど、この棟では私に従ってもらいます。まずこれを。」

 パピュスが配布したのは盾の形をした金色のエンブレム。真ん中には丸い真っ赤なルビーが埋め込まれていた。

 「これを利き手の甲にあててください。いい?いくよ」

 パピュスの合図とともに、エンブレムが甲に入っていく。

 「これで生徒同士のエンブレムの盗難は起こりません。必要時にかざすとエンブレムは光を放ちます。これはあなたたちの身分証となり、命だと思って下さい。次に能力値の解放を行います」

 さっきまで壁だった場所にカーテンが現れ、別の生徒が紐をひっぱるとそのカーテンは開いた。

 カーテンの向こうには壁いっぱいに描かれた大きな太陽がある。

 パピュスの指示通り一番大きな太陽に向かって手の甲をかざすと、いつもより力が漲る気がした。

 23人のエンブレムに変化が現れた。さっきまで丸いルビーだけだったのに、その丸いルビーの周りに4つの三角のルビーが追加されていた。

 “ソルS”の証。

 「98人中、23人がソルSとなりました。素晴らしいですね。ソルAの者はソルSを目指し、ソルSの者は私と同じソルSSを目指して下さい。」

 パピュスのエンブレムは更に丸いサファイアが追加されていて、ソルの中で一番きれいな光を放っていた。

 「私もグズグズしていられないの、コスモを目指さなきゃ。さ、今日はたくさんはしゃぎましょう!」

 ソルの生徒が全員集まり、大歓迎が始まった。


 同様のことがルナ棟でも行われ、今回の新入生は「ソルS23人」「ソルA75人」「ルナSS57」「ルナS29人」「ルナA75人」に振り分けられた。

 39人は魔法不適合とみなされ、一年間基礎値の上昇を目指す。それでもルナに到達しないものは帰還となる。


 「さて、君たち3人はとても15歳とは思えないね。」

 嬉しそうに話すジルの前には女の子一人と男の子が二人。

 「15歳でコスモか、でもこれは逆に制御が必要だな。君たちはどちらかと言えばもう生徒ではなく教師側だ。常に私の管理の元、動いてもらいたい。」

 ジルから貰ったエンブレムを貰い、奥の部屋へ通された。

 机の上に水晶のようなものがあり、その中には宇宙のようなものが見える。

 「これはこの世界。今は私がこの世界を統べるための柱。」

 ジルはどことなく遠くをみて話す。

 「さぁ、手の甲をかざしてごらん。この私にその能力を示すがいい!」

 吸い込まれそうな感覚の中、何かが入ってくる感覚も同時に起こる。

 ジルを含め4人ともコスモSの輝きを放っている。

 これからは3人での行動が多くなるからと、自己紹介の時間を与えられた。

 3人は数分の沈黙の後、自己紹介を始めた。

 フードを被った男の子は“デイス・P・ザブル”。言葉は一切発さない。会話の全ては魔法によってできる煙の文字。フードで顔はほとんど見えないが、たまに見える笑顔にはあどけなさがあるように見えた。

 女の子は“アリス・シェイネ”。可愛らしい顔立ちをしたツインテールの女の子。そして、、、

 「君は?リストには顔写真はないが。」

 勢いよく捲られるページには在校生と船に乗ってリヴァールに来た新入生の写真が載っていた。

 「ついこの前まではコスモAだったのに、さすがねジル校長センセ♡」

 モーション無しに魔法が解ける。ジルの顔が青ざめた。


 ソル棟とルナ棟は隣接しているため、すぐに2棟混合でお祭り騒ぎが始まった。光の花火。水龍による舞。まさにお祭り騒ぎ。時には魔力を使いすぎて保健室に運ばれる者も。

 高度な魔法を使えば使うほど体力の消費が激しい。優れた魔法使いは自身の体力まで考慮して魔法を使う。しばらく休んで体力が回復したら、再度魔法が使える様にはなるが、稀にそのまま値が下がってランクが落ちる者もいる。


 真っ昼間から始まったお祭り。まだ16時も過ぎていなかった。再度生徒全員が講堂に集められた。これから先生の手により部屋が移動し始める。

 ルナAの女の子は「ルナG-3」、ソルSSな男の子ならば「ソルB-1」に振り分けられる。

 講堂が揺れ、扉の外から微かに地響きのような音も聞こえる。


 ダイアンはソルの集団から抜け出し、靴を頼りに人を探していた。

 “スニーカーで横に青とピンクのような色のライン、輝く白い紐”

 在校生は指定の靴だが、まだ制服に着替えていない新入生は私服のまま。靴さえ被っていなければ見つけることは簡単。

 何百人もの人をかき分け靴を見分け進んでいく。移動する者もいるから見落としたかもしれない。心が折れかけていたその時、やっと見つけた。

 “あ、あの靴は!!”

 人ごみを縫うように抜け、その人物の元へたどり着く。再会の喜びを抑え、ゆっくりと顔をあげる。

 「えっ?」

 ダイアンは小さく声を漏らした。靴だけでなく着ているものも全て一致しているのに、目の前にいるのは女の子。

 「ダイアン・・・」

 ミシェルもまた思わず口に出してしまった。

 「どうして私の名前を知っているの?」

 ダイアンには女の子の友達がいない。みんな彼女の悪口を言い、離れていく。彼女にはなんの心当たりもなかったが、言いがかりをつけてくるのは決まって女の子。それならば女の子の友達はいらないし、男に言い寄られるのは悪い気分ではなかったから取り巻きを作った。

 「だって私にはもう女の友達なんて・・・」

 「ダイアンごめんね、騙すつもりではなかったんだ。私はミシェル・ロイス。男の子じゃなくて女の子なの」

 「生徒たちは一度部屋に戻り、18時から夕食をとって下さい」

 先生の声が遠く聞こえた。


 夕食の前にミシェルは校長室に呼び出された。

 バシッ。乾いた音が部屋に響く。

 「お前!なんで来たんだ!」

 頬を抑え倒れこむミシェルにジルが怒鳴る。ミシェルは無言のまま睨んでいる。

 我に返ったジルがミシェルに駆け寄った。

 「ごめん、ミシェル。違うんだ・・・。」

 「いいよ、別に。」

 明らかに不機嫌なミシェル。

 「お前だけは危険に晒したくなかったんだ。」

 「どういう意味?」

 「詳しくはまだ話せない。でも良くないことが・・・」

 「15年目。」

 ミシェルが“15年”の言葉を発してジルは一瞬動揺した。

 「ジルは昔からウソつけないんだね。私、知ってるよ、何が起こるか。」

 淡々と話すミシェル。ジルは再び動揺した。

 「私ね、どうしても阻止しなきゃならないの。パパとママを助けるためにも。・・・あとお兄ちゃん。」

 「え?」

 「ううん、なんでもない。もう食堂に行かなきゃ、お腹すいた。」

 ミシェルは部屋を出る。ジルはその場に座り込んだ。



 一度部屋に戻ったミシェルは頬を確認する。あまり赤くなっていない。部屋を出ようとしたらノックが聞こえた。開けるとダイアンが立っていた。

 「初めて会ったときに、すごい能力だと思って尊敬したの。一目ぼれだったのかもしれない。でもソルにはいなかった。今年度私たちがソルで一番上だと思っていたわ。」

 勢いよくダイアンが話す。

 「この年齢でコスモなんて考えられない。でもあの時の彼ならコスモでも納得いった。余計に好きになった。なのに、なのに女の子だったなんて。」

 「ダイアン、だからあの。」

 「責任とってよ!」

 「責任?」

 「私と・・・・・って。」

 「えっ?」

 「私と・・・やっぱりいいわ。」

 何かに怯えるようなダイアンをみて、ミシェルはそっと右手をとった。ダイアンの過去の記憶が流れてくる。

 “あぁなんて純粋でかわいいんだろう”

 ミシェルは思った。

 「ねぇダイアン。私と友達になってよ。」





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