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BLooDマジック  作者: ちゃむ
第一章
3/7

ようこそリヴァールへ

 

 雷が鳴り響く大雨の夜、彼女は立っていた。傘も差していないのに彼女は全く濡れていない。そう、この雨は魔法によって作り出されたものだ。雨を嫌う人間は誰一人外にはいない。いつもは昼夜問わず営業しているカジノですら、閉店している。時刻は0時47分。ミシェルは1時丁度の迎えを待っている。

 「やっぱりやめた方が良いわ。ジルも言っていたし。」

 「何を今さら。」

 「私は・・・もうこのままでも良いと思ってる。このまま3人で・・・」

 「3人!?ママは本当に3人だと思ってるの!?違うよね?」

 母子の会話をアーサーは黙って聞いていた。

 「ママだって後悔して苦しんだじゃない。だから私が探してくる。そして必ず連れてくるから。心配しないで?私はクイーンの子よ」

 母親に抱きつこうとしたが、もう触れられない。

 「ほらママ、もうすぐ15年。消えてしまう・・・。ママとパパの呪いも必ず解いてみせる。」

 遠くの方で汽笛が聞こえた。エリファスが『ガイス』と唱えると同時に指をパチンと鳴らすと、長い髪の毛が帽子の中へ隠れた。ミシェルの外見はまるで男の子。

 「そのままのあなたじゃジルにすぐ見つかるわ。入校できればジルでも追い返すことはできない。それまで隠し通すの。男の子っぽく振る舞うのも大切よ。」

 「うん、ありがとうママ。」

 「私たちはもうすぐ完全に魂のみになる。その時はお前の守護につこう。無理は絶対にしないと約束してくれ、ミシェル。」

 「うん、約束するよパパ。」

 大きな客船が近づいてくる。この船は海でも宇宙でもなく、空間を移動する船。リヴァールの入校のためにはこの船を逃してはならない。船尾のドアから黒いフードを被った男が降りてきた。

 「許可証は?」

 紙を差し出す。

 「うむ。間違いなく本校の許可証。自作したものではないことを確認。よし、乗れ。」

 中から大きな男が降りてきて、軽々しくミシェルの荷物を運び入れる。

 「パパ、ママ。いってきます」

 船に乗り込みドアが閉まると同時に、ミシェルの両親は光となって夜に溶け込んだ。



 「あれがリヴァールへの船か」

 男は船が飛び立つギリギリに船へと手をかけ、窓から中へ侵入した。



 「ヘヤ、ソコノカドヒダリ。コレ、ヘヤノカギ」

 大男が片言に話し、カギを突き出すといなくなった。長い廊下を辺りを見回しながら歩く。複数の部屋、部屋と部屋の間に売店もある。どの食べ物も魔法で黄金に輝いているが、「食欲をそそられて買う人がいるのかしら」などと考えながら部屋へ向かう。目の前から一人の女の子が歩いてくる。後ろには4人の男の子を連れている。すれ違い様に女の子が口を開いた。

 「あら?あなた。このわたくしに挨拶もなし?」

 彼女の名前は“ダイアン・レヴィ”。彼女も両親が魔法使いで、それなりの力を持っている。そのせいか高飛車な性格で、自慢の容姿から自信過剰な女の子。

 「この方は知る人ぞ知るダイアンさんだぞ!」

 後ろの取り巻きが言う。

 「知らない」

 ミシェルはその場を去ろうとする。が、彼女に腕を掴まれ止められた。

 「知らないですって?じゃあこれから知れば良いわ。私の奴隷になりなさいよ」

 クスッ、思わず笑ってしまった。ダイアンは顔を赤くして怒りをあらわにしている。

 「知ってるか?ここの中では多少能力が解放されて魔法を使うことが許可されている。実力があればその場で称号を得たり、実力のない奴は到着後、すぐに強制帰還されるんだぞ!」

 「俺たちがお前をねじ伏せて帰還にさせてやる。」

 取り巻きの男の子が次々と言う。ダイアンは後ろで微笑んでいる。

 「、、、は使えるか?」

 「はっ?」

 「空間移動魔法は使えるのか?と聞いたんだ。」

 「そ、そんなのこの年齢では・・・ましてや能力解放されてもいないのに使えるわけないだろう!?」

 「そうか、じゃあやってやろう。」

 ミシェルが空気中にループを作ると、5人は瞬時に消えた。

 「くだらない」

 ミシェルは指を鳴らすと、5人は戻って来た。ダイアンは目に涙を浮かべ、男の子たちは方針状態。

 「一度、地元に帰れて良かったね。寮に入れば最低2年は戻れないし」

 ミシェルはその場を去る。

 「いっ、今のは幻覚だろ!?騙されないぞ!」

 腰を抜かして座り込んだまま男の子が叫ぶ。

 「わたくし・・・」

 ダイアンが去るミシェルの背中を見えなくなるまで見ていた。


 ミシェルは角を曲がり、突き当たりの部屋についた。ドアを開けて部屋に入ると、さっき渡した荷物が置かれたいた。机に目を向けると、1枚の紙と本が置いてある。

 『この部屋はこのまま寮の部屋となります。お好きなレイアウトを。ただし、破損した場合は1箇所につき1ランク落とします。魔法の使い方は本を御覧下さい。能力解放前のレイアウトはくれぐれも慎重に。』

 メモを読み終えたと同時に爆発音。音は斜め向かえの部屋からだ。時間潰しも暇だし、ミシェルは野次馬をすることにした。

 部屋の外には既に野次馬がたくさん。部屋の男の子は呆然と立っている。

 「エリアB-2からの爆発だ。」

 「こっちだ!」

 監視の声が近づいてくる。

 「だ、誰か助けてくれ!この爆発はぼくがしたんじゃないんだ!」

 みんな目を背ける。

 「本当かよ?」

 「レイアウト失敗の言い訳?ださっ。」

 「認めなよ、みっともない」

 次々に言葉が飛び交い、笑い声が止まらない。

 男の子は悔しそうに下を向く。

 「ここだ、、、あぁひどいな」

 監視が到着した。無線で何かを話していた監視が魔法をかけるが術が発動しない。てのひらに魔法陣を作り出すこともできなかった。

 「やはりこ・・・」

 監視が喋り出して、時間が止まった。誰かが時間を止めたようだ。ミシェルはこの術には左右されず動くことができるが、母の教えにより身動きが取れないふりをしていた。時間を止めた人物を気配で探る。

 !!!

 何かが近づいてくるのがわかったが、目の前を過ぎ確認できるのを待った。

 「ここにはいないか」

 ミシェルの前を通る寸前で、その者は一言つぶやき、去る。

 思わず動いて去った方を見た瞬間、背後からの視線に気づいた。まずい、と思い構えるが、もうその視線は消えていた。

 次の瞬間、魔法が切れてみんなが動くようになった。気が付いた時には部屋が元通りになっていて、男の子は部屋に戻された。

 いつ修復したのかわからない部屋をみて、魔法に更なる興味を持つ者もいれば、こんなことできるのかと不安になる者もいた。

 それぞれが部屋に戻されるまえに、罵声を浴びせた3人だけ残され、部屋の外からは悲観の叫びが聞こえた。


 「校長、一時魔法の発動ができませんでした」

 てのひらに浮かんだモニターにジルの姿があった。

 「それで、さっきの爆発の原因は?」

 「不明です。ですがやはり外部からのもので何者かの侵入以外考えられません。」

 「・・・そうか。到着するまでなんとか対策をする。くれぐれも注意を怠るな。」

 「はっ!」


 迎えが1時。

 船に乗り込み変な女の子に絡まれ爆破騒動。

 もうすぐ3時になろうとしていた。あと30時間後には学校に着く。ぼんやりと考えているうちに深い眠りについた。

 『ドンドン、ドンドン』

 部屋の扉を叩かれる音で目を覚ます。ふと時計に目を向けると正午を過ぎていた。鏡をみると、ちゃんと男の子の格好のままだ。

 “大丈夫よ”

 エリファスの声が聞こえた気がする。のそっとドアに近づき開ける。目の前にはダイアンの姿があった。

 「昼食を誘いに来ましたの」

 満面の笑みのダイアン。そういえばお腹が空いている。ダイアンと、というのは気がすすまないが、とにかく食堂へ向かった。

 何人もの生徒が集まっていたが、広すぎて狭さは感じない。相変わらず魔法で黄金にされた食べ物がある。適当に美味しそうな食べ物を取り、食事を始める。

 食べ終わったあとはぶらぶらと中を見物する。

 大きな図書室、講堂、談話室。とても船の中とは思えない。再度図書室に戻り、適当に本を選び部屋へ戻る。2000ページ以上ありそうな分厚い本を一気に隅々まで読み尽くす。

 『ドンドン、ドンドン』

 デジャブ、、、。時刻は午後7時。ドアの前にはダイアン。

 「夕食のお誘いにきました。」


 部屋のお風呂にゆっくり浸かる。何事もなかったはずなのに疲れていた。明日には女だとバレるからダイアンの取り巻きも終わるだろう、髪を乾かし明日に備えて寝る。



 七時丁度

 ピローン、ピローン

 何とも間の抜けた音がなり響く。

 「おはようございます。本日9時から講堂で集会があります。生徒のみなさんは起床し、朝食を取って下さい。食堂は8時半までです。」

 放送がかかった。放送は2度繰り返された。

 七時四十五分

 身支度をし食堂へ向かう。

 「どうして置いていくの?」

 目を潤ませたダイアンが隣に座った。


 八時十分 

 ピローン、ピローン

 再度放送が流れた。

 「生徒のみなさんは速やかに講堂へお集まり下さい。」

 ミシェルは食事を途中でやめ、立ち上がる。

 「まだお食事が」

 お皿を片付けようとするダイアンの腕をつかみ

 「だめ、ここではお上品にやっていたら残れない」

 そう言い引っ張り気味で講堂へ向かう。食堂から講堂まで距離があるので早足で向かう。


 はぁはぁ。

 『急がなきゃ。八時半になっちゃう・・・』

 一生懸命走る一人の生徒。その目の前に立ちはだかる謎の人物。

 「魔法を学んで薬作って、親の治療?不適合な君には無理だよ。」

 淡々と話す人物に戸惑う。

 「君のお母さんはもう治したよ。だから帰りな、そして貸して。」

 まばゆい光に包まれ、生徒は一人だけになった。  


 講堂には次々に生徒が集まり、8時半丁度に講堂の扉は閉ざされた。

 数十名の生徒は扉の外で騒いでいる。

 「選ばれた魔法使いの卵たちよ。よく時間内に講堂に来たね」

 格好はシンプルだが、派手な演出でジルが現れた。

 「きゃー」「ジル先生」「ジル様」

 女の子たちの黄色い声が聞こえる。

 「ようこそリヴァールへ。」

 ジルが指を鳴らすと扉も消え、船が学校へ溶け込んでいく。



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