No.3 熱い大地で
あなたがいない間の、誰かの気持ち。
片隅で、君を待つ。
遠くから、話し声。
ごうごうと唸る換気扇。
ドアの隙間から、冷たい空気が入ってくる。
でも、寒くはない。
ただ、熱いのだ。
やることがないので、息を吐いてみた。
白く昇る、水素と酸素の気化物。
どこまでも、ふわり。
でも残念、途中で見えなくなってしまう。
いつか私も、こうして消えてしまうのだろうか。
そんなセンチメンタルに浸ってみる。
君はまだ来ない。
だから私は動かない。
いや、動けない。
何だか寂しくなってきた。
声を出して君を呼びたいけれど、まだその時ではないらしい。
体が熱い。
ぐらぐらと、煮えたぎっている。
もう少し。もう少ししたら、君は帰ってきてくれるよね。
私はいつも、君が私を救ってくれる瞬間が大好きだ。
だってここは、あまりにも熱すぎるから。
仲間には、それは甘えだと言われたけれど。
もう限界だ。
私は我慢強くない。
カタカタと音を立てる。
白い蒸気はあちこちから溢れ出して。
ピー!
「あ、沸いた沸いた」
ようやく君は、私を灼熱の大地から救い出してくれた。
今度はもっと、側で待っていてほしいな。
お湯が沸くまでのヤカンの気持ちでした。