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 第二章から続く「キソス編」が、ようやくこの章で終わります。

 毎回おなじみ(?)序章は、鬱陶しい謎の文面で始まります。


挿絵(By みてみん)


     ―序―



 エランは、大地にある様々なものから、種々の〈器〉を創り出されると、それに三度、息を吹き入れられた。


 ひとつの息は、ひとつの〈魂〉となり、故に、三度入れられたエランの息により、〈器〉には三つの魂――〈三魂さんこん〉が宿ることとなった。 そして、この〈三魂〉が揃うことにより、〈器〉は始めて、新しき生命として目覚めたのである。


 然る後、エランは新たな生命に《名》を与えられ、《名》を与えられた新しき生命は、《影》を伴い、〈光ある世界〉へと旅立った。



 〈三魂〉は、其々役割を異にしている。


 第一の魂は〈過去〉

 第二の魂は〈現在〉

 そして

 第三の魂は〈未来〉を担う。


 〈器〉である肉体が、〈光ある世界〉に生きるものとして存在する間、〈現在の魂〉が〈器〉のあるじとなり、〈器〉の意思となる。

 〈過去の魂〉は、〈現在〉の後見であり、〈未来〉は嬰児のごとく、傍らでただまどろんでいる。


 歳月が流れ、死が訪れた時、〈器〉は源である地へと還る。

 〈過去の魂〉は、今生の役割を終えた〈器〉に留まり、共に朽ち消えゆくを待つ。

 〈現在〉は、未だまどろむ〈未来〉を誘い、朽ちゆく〈器〉より離れ、新たな〈器〉を得る日まで、光と闇の狭間を彷徨する。


 幾千の昼と夜を超え、新たな〈器〉に辿り着いた時、ふたつの魂は、新たな〈魂〉へと変ずる。

 〈現在の魂〉は、見護るものである〈過去〉となり、まどろみ続けた〈未来の魂〉に、真の目覚めを促す。

 目覚めた〈未来の魂〉は、真新しき〈器〉の主である〈現在〉となる。

 これらふたつの新たな〈魂〉が、〈器〉で各々の役割を定めし後、新しき〈未来の魂〉が、〈器〉の内にて生じる。

 こうして新しき〈器〉は、〈三魂〉の揃いし、確かなひとつの存在と成るのである。


 〈光ある世界〉にある生命は、僅かな変化を繰り返しながら、エランより与えれし聖なる〈魂〉を、とこしえに継いでいくのである。


 〈器〉は、死により終焉を迎えるが

 〈魂〉は、死を超える、永久の存在である。



    《〈聖典〉「魂の章」より》


     *


 この〈聖典〉一節に記されているのは、「魂の永遠」「転生」に纏わる言葉である。


 死により今生の〈器〉――身体は失われても、何れの日にか〈魂〉は新たな〈器〉を得、〈光ある世界〉に再び戻ることが出来るのだと、信じる者は少なくない。

 〈聖神聖教(シン・エルナイ)〉に代表される、熱心なエラン信者の中には、〈三魂〉を与えられ、新たな〈器〉を繰り返し得ることが出来るのは、〈光ある世界〉の住人でも、人間だけであると主張する者達もある。


 だが、いずれで語られているものも、〈光ある世界〉の住人についてのみである。


 闇に棲むとされる存在。

 《名》と《影》を、エランより与えられなかったとされる〈闇に棲むもの〉は、どうなのか。


 民間の伝承では、それら〈闇に棲むもの〉は、神であるエランから〈ひとつの魂〉――〈三魂〉でいう〈過去の魂〉しか与えられず、それ故に、ひとたび〈死〉を迎えれば、〈器〉と共に〈魂〉は朽ち、再び生を得ることはないのだという。


 ひとつだけの、一度きりの生しか与えられなかった〈闇に棲むもの〉達は、引き換えに、〈三魂〉を持つ存在からは計り知れぬ長久の時を、生きることが出来ると云われている。


 何れの伝えとて、真偽は定かではない。


 だが

 これらの伝えが事実であったとする。


 そのうえで思う。


 死と生を繰り返す、〈光ある世界〉の住人と、一度きりではあるが、果てなく長い生を得た、〈闇に棲むもの〉達。


 この二者の〈生〉を選択できた時、人は、何れの生を選ぶであろう。


 そして――……。



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