第13話:酔いどれ鍛冶屋
訓練場に、クロナの荒い呼吸が反響していた。全身が疼き、腕には微かな赤みが残っている。今日、彼は初めてユミコの連撃をただ防ぐだけでなく、彼女の肩に触れることに成功したのだ。以前の彼なら不可能だったことだが、彼はすでに別の領域に達していた。
ユミコは、相変わらず疲れた様子も見せず、クロナの目の前の床にしなやかに腰を下ろした。
「……速くなりましたね、クロナ」彼女は彼の向こう側を透かし見るように、静かに呟いた。
息を切らしながら、クロナは彼女の露出した肌に目をやった。彼の視線は、袖の奥へと消えていく細く、微かな傷跡で止まった。
「ユミコ……それは、どこで? 君は悪魔だろう。傷は跡形もなく治るはずだ」
ユミコは数秒間沈黙した。その瞳が、氷のように冷たく澄んでいく。
「……魔界の魔法でさえ消し去ることのできない傷があるのです。龍崎一族の境界を守っていた時に負いました。あの日、私は剣の鋼が溶け始めるほどに多くの敵を屠りました。これは、忠誠の代償としての戒めです」
彼女は彼の方を向き、一瞬だけ、その鋼色の瞳に人間らしい感情が揺らめいた。
「私は感情を表に出すことに慣れていません。私にとって心は弱さでしかない。……ですが、貴方は……」彼女は言葉を切った。「……貴方は奇妙な人だ、クロナ。私に自らの流儀を曲げさせたのですから」
彼女が何を言わんとしているのか、彼女の「流儀」とは情け容赦なく皆殺しにすることだったということを、クロナは知る由もなかった。ユミコは鋭く立ち上がると、再び表情を鉄壁のものに戻した。非常に注意深い者にしか気づかぬほどの微かな笑みを浮かべ、彼女はタオルの塊を少年の顔面に放り投げた。
「シャワーへ行きなさい。焦げ臭いですよ」
訓練場を出ながら、クロナは思考に沈んでいた。ユミコやホタル、彼女たちの力は概ね理解でき、かつ威厳に満ちたものだった。だが、アマネは……。あの小さな堕天使が一動作で天使を霧散させ、虚無へと変え、そのまま力尽きて倒れたあの日を思い出す。それは恐怖であり、同時に魅了される光景でもあった。
「何を考え込んでいるんだい、私の愛弟子?」
斉藤が、例の無邪気な微笑みを湛えて虚空から姿を現した。
「……女の子たちのことが、何も分からないなと思って」クロナは正直に答えた。
斉藤の顔が、瞬時に真剣なものへと変わった。
「……情報がある。彼女たちは他の龍については何も知らない。悪魔や天使の歴史しか教えられていないからね。だが、私には……共鳴が聞こえる。君の黒龍以外に、この世界で目覚めようとしている者がいる。とても強力な存在だ。そして、そいつは近いうちに私たちを訪ねてくるだろう」
クロナは内側で自嘲気味に笑った。(「……聞いたか、クラヤミ。準備はいいか?」)
『いつでもいいぞ、小僧。』ドラゴンの声には、捕食者のような期待が混じっていた。『来るがいい。私の牙も、神の肉を欲していたところだ。』
「……だが、戦争が始まる前に」斉藤は不意にクロナの肩を叩き、その瞳を悪戯っぽく輝かせた。「最も重要な訓練が必要だ。……ビールの訓練(飲み比べ)だよ! より多く飲み、最後まで立っていた者が、どんな願いでも一つ叶えられる」
クロナは彼を狂人を見るような目で見た。
「……ただ俺の金で飲みたいだけだろ、このエセ教師」
だが、沈みゆく夕空を見上げ、自分もガス抜きが必要だと悟った。
「……分かったよ。行こう」
夕暮れのバーは、温かい光に包まれていた。クロナと斉藤は隅の席に座り、少年にとって意外なことに、「先生」は最高の話し相手だった。彼らは世界の仕組みについて語り、ホタルの大仰な振る舞いを笑い、ただ飲んだ。内側のクラヤミでさえ鼻で笑った。『……こんな光景を見ることになるとはな。龍の器と天使が人間の酒場で飲んでいるとは。お前は本当に、驚くべき小僧だ。』
ある瞬間、クロナは鋭く振り返った。通りの暗闇から、誰かの白い目が自分を見つめているような気がしたのだ。冷たく、瞬き一つしない目。だが、そこには誰もいなかった。
その頃、京子は自宅で、猛烈な勢いでノートパソコンを叩いていた。
「ドラゴン……神話、伝説、おとぎ話……。ダメだわ、使い物にならない!」彼女は心底苛立ったようにベッドに倒れ込んだ。「こんな人間のガラクタの中には、何も見つからない。……クロナと話さなきゃ。今すぐに」
彼女はジャケットを羽織って外へ飛び出し、数ブロック先でショックのあまり立ち尽くした。バーの入り口で、泥酔した二人の男が肩を組み、足をもつれさせながら歌を歌おうとしていたのだ。
「おぉーー! 見ろよ斉藤、俺たちのピンクのツンデレさんが来たぞー!」
クロナと斉藤は、彼女を見るなり声を揃えて叫んだ。
京子の額に青筋が浮かんだ。彼女は無言で二人に近づくと、一人を左肩に、もう一人を右肩に担ぎ上げた。そして彼らの酔っ払ったたわ言を無視し、城の方へと引きずっていった。彼女の力は驚異的だった。息一つ乱れていない。
京子が城のリビングに踏み込んだ時、ホタル、アマネ、ユミコは絶句した。学級委員長の肩に、泥酔した鍛冶屋と教師が担がれている光景は、彼女たちの理解を超えていた。
京子は容赦なく斉藤を絨毯の上に放り出し、クロナを自分の膝の上に座らせると、彼を正気に戻そうとした。
「……ちょっと、ハガネヤ! 起きなさい! ドラゴンのこと、話があるのよ!」
だが、クロнаは何かを呟いただけで、彼女の肩に頭を預けて完全に眠り込んでしまった。京子が顔を上げると、そこには燃えるような嫉妬を湛えた三対の瞳があった。ホタルは指先からエメラルドの火花が散るほど拳を握りしめ、ユミコは刀に手をかけ、アマネは傷ついた子供のように唇を尖らせていた。
京子は彼女たちの感情に気づいたが、今はどうでもよかった。彼女は眠っているクロナを、彼から伝わる温もりを感じながら、より強く抱きしめた。
意識の底、精神の宮殿の中で、クロナは深淵へと落ちていた。そして眠りのヴェール越しに、クラヤミの声を聴いた。ドラゴンはもう笑っていなかった。その声は、クロナがかつて聞いたこともないほどの、切迫した震えを帯びていた。
『……小僧、早く起きろ。……災厄が来る。とてつもない災厄がな。』
城の窓の外、暗闇の中で再び白い目が一瞬だけ輝き、すべては静寂に包まれた。




