表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/9

鈴木の証言③

 事件当夜、二十時五十八分から二十三時二十二分までの防犯カメラの映像が見直された。都内の有名ホテルとあって、二十分足らずの時間にも係らず、七階でエレベーターを乗り降りした人間は十八名に登った。

 この十八名を当日の宿泊客と照らし合わせ、消し込みを行っていった。幸い、十八名全員が宿泊客で、十八名全員の身元を照合することが出来た。

「ええ、七○六号室の部屋のドアが開いていたのを見ました」

 宿泊客の一人から、鈴木の証言を裏付ける証言を得ることが出来た。エレベーター・ホールから部屋へと向かう廊下で、七○六号室の部屋のドアがドア・ロックにより、半開きの状態になっていたことを覚えていた宿泊客がいた。

「物騒だなと思ったので、覚えています」と宿泊客は証言した。

 無論、部屋のドアが開いていたからといって、鈴木が暁子を殺害していない証拠にはならない。だが、鈴木は嘘を吐いていなかったと言うことになる。

 防犯カメラの映像は空振りに終わってしまったが、七階の宿泊客を虱潰しに洗い直す過程で、一人の怪しい人物が浮かび上がって来た。

――中村裕司(なかむらゆうじ)、三十歳。東京アーバン銀行に勤務しており、被害者である増田暁子の同僚だった。事件当夜、暁子と同じリバーシティ・ホテルの七階、七二三号室に宿泊している。

 ホテルの宿泊記録によると、中村は暁子よりも早い十九時十一分にチェック・インを行い、翌日の十時十八分にチェック・アウトしている。

 防犯カメラの映像を確認すると、ホテルにチェック・インした後、十九時三十二分に中村は一旦、部屋を後にしている。そして、その後、二十一時二十八分にエレベーター・ホールに姿を現し、部屋に戻っていた。

 その後、翌日にチェック・アウトするまで、防犯カメラに中村の姿は映っていなかった。

「同じ職場の人間が、たまたま同じ日に同じホテルの同じフロアに宿泊していたなんて、あまりに都合、良過ぎないか?」

 竹村が口にするまでもなく、吉田も中村のことを怪しいと思った。同じフロアに宿泊していたのなら、エレベーター・ホールの防犯カメラの映像に記録されることなく、暁子の部屋を訪れ、殺害することが可能だったからだ。

「先輩、こいつの話を聞きに行きましょう!」

 二人は中村より事情を聴取する為に、東京アーバン銀行へと向かった。

 二人の刑事を迎えた中村は、「えっ!? 僕ですか? 僕から話を聞きたいのですか?」と何度も念を押した。何故、刑事から事情聴取を受けるのか分からないと言った様子だった。これが芝居だとすると、堂に行ったものだ。

 銀行の会議室を空けてもらい、中村から事情聴取を行った。

「あなた、先週の金曜日の夜に、リバーシティ・ホテルに宿泊されていますよね?」

 開口一番、竹村が尋ねると、中村は、「ああ、それで――」と得心が行った様子だった。

「ええ、泊まりました。後で同じフロアで殺人事件があったと知って、びっくりしました。しかも、殺されたのが増田さんでしょう。もしかしたら、自分が殺されていたかもしれないと思うと、増田さんには悪いけど、ほっとしました」

「何か、命を狙われる訳でもあるのですか?」

「嫌だなあ~刑事さん。そう言う意味ではありません。ただ、殺されたのが増田さんだったので、うちの銀行の人間を狙った犯行だったのではと思っただけです」

「増田さんとは親しかったのですか?」

「そりゃあ、同じ職場ですからね。増田さんのことは、よく知っています。年は近いし、会えば話もします。忘年会とか飲み会で一緒になったりします。僕の仕事は窓口業務には直接、関係ありませんが、それでも一緒に仕事をしたこともあります」

「仕事以外では如何でしょうか?」

「プライベートと言う意味ですか? いえ、全然。入社したての頃に、合コンをアレンジしてもらったことがありますけど、それくらいですかね?」

「プライベートでのお付き合いは無かったと。では、何故、同じ夜に同じホテルの同じフロアに宿泊していたのですか?」

「宿泊券をもらったのです」

 中村は得意そうに言った。誰かが、銀行の得意先からリバーシティ・ホテルの宿泊券をもらったようで、その宿泊券が木曜日に中村のもとに回って来た。よく見ると、使用期限が金曜日までになっていた。そこで、「勿体ない」と早速、使用した。

 宿泊券は何枚か行内に出回っていたと言うことで、「僕、以外に宿泊券を利用した人間がいるはずですよ。調べて見て下さい」と中村は答えた。

 調べてみると、確かに金曜日の夜に宿泊券を利用してリバーシティ・ホテルに宿泊した行員が他にも見つかった。中村以外に二人の行員が金曜日の夜にリバーシティ・ホテルに宿泊していた。そして、被害者である暁子も宿泊券の利用者だった。

 中村はたまたま暁子と同じ宿泊フロアになっただけのようだった。

 調べて見ると、宿泊券はナリタ・エンタープライズと言う大手のデベロッパーが購入したもので、得意先に配られた後、金券ショップに売り払われたものだった。それがどうして東京アーバン銀行内で出回ったのか不明だった。


――増田さんからもらいました。


 宿泊券がどういうルートで出回ったか、出元を突き止めるべく、行内を聞き込んで回ると、最終的に宿泊券の出元は暁子であることが分かって来た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ