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進藤の供述①

 増田暁子(ますだあきこ)殺害について、進藤智明(しんどうともあき)からの事情聴取が行われた。

 四日前、品川にあるリバーシティ・ホテルの七階の一室、七○六号室で増田暁子が死体となって発見された。午後になってもチェック・アウトに現れないことから、部屋に入ったハウスキーパーがベッドの上で冷たくなっている暁子を発見した。

 暁子は広島出身の二十九歳、独身。埼玉県三郷市にあるアパートで独り暮らしをしている。ホテル近くにある東京アーバン銀行に勤務するOLだ。

 死因は絞殺。備え付けのクローゼットに吊り下げられていたバスローブの腰紐が抜き取られて、ベッドの上に投げ出されていた。この腰紐が暁子殺害の凶器であると、検死により確定されている。

 ホテルの一室で遺体が発見されたが、生前に性交渉をした形跡は見られなかった。

 暁子は前日、金曜日の夜、八時過ぎにホテルにチェック・インしたことが、ホテルのフロントと防犯カメラの映像から確認されている。

 暁子名義で部屋は予約されていた。

 死亡推定時刻は、チェック・インから二時間が経過した夜の十時から十二時の間と見られている。

 埼玉県三郷市在住の暁子が、金曜日の夜に品川のホテルに部屋を取っていることから、恋人との逢瀬が考えられた。

 銀行の同僚に話を聞いて回ったところ、石田(いしだ)美麻(みま)と言う女子行員から、暁子の交友関係に関する証言を得た。石田は暁子と仲が良く、三郷のアパートに泊まりに行ったことがあると言う。暁子は随分と性質の悪い男に引っ掛かっていたようだが、最近、縁が切れて、今は特定の恋人はいなかったはずだと証言した。

 同僚がホテルの一室で殺害されたとあって、石田は事件に興味津々の様子だった。「犯人の目星はついているのですか?」、「何故、増田さんは殺されたのですか?」と聞き込みに来た警視庁捜査一課の竹村を質問責めにした。

 竹村聡(たけむらさとし)は百八十センチを超える長身で、学生時代に野球に熱中していたというだけあって、筋骨隆々の逞しい体だ。目が細く、やや額が突き出ている。団ごっ鼻にぶ厚い唇と、いかにも男臭い風貌だ。

「恋人はいないみたいだったけど、お相手はいたみたいでした」

 石田は意味深な言い方をした。

「どう言うことです?」と竹村の相棒、吉田が尋ねる。

 吉田健吾(よしだけんご)は竹村の六つ下、スラリと背が高いが、竹村と並ぶと、流石に小さく見えてしまう。細身で目付きが鋭く、見るからに頭が切れそうな面構えだ。一重瞼で、ぐっと吊り上った眉毛がりりしい。笑うと目が線のように細くなった。

「ええ~でも~私の口からは言い難いわ~」と石田は言い渋った。自分から話を振っておいて、言い難いも何もない。石田が話したがっていることは明白だった。

「情報元は絶対に明かしませんから」という竹村の一言であっさりと陥落した。


――増田さんは、不倫をしていたんじゃないかと思います。


 不倫については、「女の感」と言う、はなはだ心もとない証拠しかないと言う。

「何時も残業ばかりしていた増田さんが、たまに早く帰るようになった」、「恋人が出来たのかと聞いても、はぐらかして答えない」

 という程度のことで、石田は不倫をしているのではと疑っていたと言う。

 だが、石田以外にも暁子の不倫をほのめかす同僚がいた。女性が多い職場とあって、不倫の噂が広まるのが早かったようだ。噂の出所は石田であったかもしれない。

 とは言え、不倫関係であったなら、周囲に知れないように気を遣っていたであろうから、暁子の不倫相手が誰なのか、簡単には分かるはずなかった。

「これはお手上げですね」という吉田を「手なんか上げていないで、足を動かせ。不倫をしていたのなら、相手が誰なのか探り出すんだ」と竹村は叱咤した。

 ひょんなことから不倫相手が知れた。


――携帯を二台持ちしていた!?


 暁子の遺体が発見されたホテルの部屋から、携帯電話が見つかっていたが、銀行口座を調べたところ、更にもう一台、携帯電話を契約していたことが分かった。

 一台は仕事用で、勤務先に連絡先として電話番号が登録していたが、これとは別にプライベート用にもう一台、携帯電話を持っていたのだ。携帯電話を二台持ちしている者は少なくない。プライベート用の携帯電話は犯行後に犯人により持ち去られたのか、部屋に残されていなかった。仕事用の携帯電話が部屋に残っていたので、捜査員は不審を抱かなかった。

 改めてプライベート用の携帯電話の通話先を調べてみたところ、頻繁に連絡を取り合っている番号が見つかった。しかも、犯行当日、暁子が殺される直前にも通話をした履歴があった。

 携帯電話会社から、通話先の人物の情報提供を受けた。そして、ついに不倫相手と思しき人物が浮かび上がった。

 進藤智明、三十三歳。既婚者で暁子と同じ東京アーバン銀行に勤務している。しかも、暁子の直属上司と言う間柄だった。同じ職場で、進藤が既婚者であることから、二人の間に不倫関係があったとすると、それは絶対に口外できなかったはずだ。

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