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星渡りの約束  作者: 臥亜


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7/11

それでも君を想う

 離れたところで、想いは消えなかった。


 むしろ、距離ができた分だけ、はっきりと形を持ってしまった。


 ユウマは村の外れで、簡単な見張りの手伝いをしていた。自警団に正式に入ったわけではない。ただ、人手が足りないから、という理由だった。


 剣を振るうたび、息が乱れる。

 身体能力は高くない。才能もない。


 ――それでも。


「……リリア」


 名前を呼ぶだけで、胸の奥が熱くなる。


 その感情が、奇妙な感覚を連れてくることに、ユウマは気づき始めていた。


 集中した瞬間、視界が澄む。

 踏み込みが、ほんの少し速くなる。


「気のせい、か……?」


 否定しきれなかった。


 その日の夕方、嫌な知らせが村に届いた。


 近くの街道で、魔物が出た。

 しかも、治癒師を狙った、という噂。


 ユウマの思考は、そこで止まった。


「……治癒師?」


 嫌な予感が、背中を駆け上がる。


 リリアは、今日は隣村へ薬を届けに行く予定だった。


 考える前に、体が動いていた。


「おい、どこ行く!」


 呼び止める声を無視し、村を飛び出す。


 森の中。

 息が切れる。

 それでも、足を止めなかった。


 ――間に合え。


 ただ、それだけを願う。


 やがて、争う音が聞こえた。

 獣の唸り声。

 そして――聞き覚えのある、必死な声。


「……っ、来ないで……!」


 視界が、赤く染まった。


 ユウマは、叫びながら飛び出した。


「リリア!」


 そこには、大型の魔獣と、地面に倒れたリリアの姿。


 考える暇はなかった。


 剣を構え、突っ込む。

 当然、力は足りない。


 弾き飛ばされ、地面を転がる。


 ――それでも。


 立ち上がる。


 彼女が、恐怖に震えている。


 その光景が、胸を焼いた。


「……奪わせるか」


 声が、低くなる。


 胸の奥で、何かがはっきりと脈打った。


 リリアを想う気持ち。

 失いたくないという願い。


 それが、確かな形になって溢れ出す。


 ユウマの周囲に、淡い光が宿った。


「……え?」


 リリアの驚いた声。


 次の瞬間、ユウマの剣が魔獣を斬り裂いた。


 あり得ないほど、軽く。


 魔獣は悲鳴を上げ、逃げるように森へ消える。


 静寂。


 ユウマは、その場に膝をついた。


「……はは」


 笑うしかなかった。


 力は、自分のものじゃない。

 彼女を想った、その瞬間だけ。


「ユウマ……さん……」


 駆け寄ってきたリリアが、震える手で彼に触れる。


 その指先の温もりで、光は消えた。


「……無事で、よかった」


 それだけ言うと、視界が揺れた。


 意識が遠のく直前、

 リリアが泣いているのが見えた。


 それでも。


 彼女を想うことは、

 間違いじゃなかった。


 ユウマは、はっきりとそう思った。

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