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第6話 結成する捜索隊と調査隊/始まる捜査と調査

「僕からハイルさん? と言う方の気配などを感じる理由は、僕にも分かりません。僕はハイルさんと言う方を存じ上げないですし、この街にだって初めて足を踏み入れたんですから」


 ハイルのその言葉に、周りにいた冒険者達がどよめく。

 長年冒険者をやっている者は当然。新人であっても噂程度で聞いた事はある。



【ダンジョン()(みん)】と言う存在を。



【ダンジョン遭民】については、前に説明したのでここでの説明は省くが、ハイルの言葉を聞いた冒険者達は、ハイルの言葉を受け全員がハイルの事を【ダンジョン遭民】だと思ったようだ。

 目の前にいるイリンでさえも。


「そ、そんなの答えになってない……ハイルの事知らないならなおさら! なおさらなんで……あんたからハイルの気配がするのよ!」

「だから、僕にも分からないと──」

「答えなさいよぉ!!!」

「うわぁ!?」


 ハイルの言葉を遮り、イリンはハルに向けて杖を構える。

 そして、叫びながら技能を使用し、ハルの体を宙に浮かせた。

 さらには、ハルの体を締め付け始めた。


「ぐっ……うっ……!?」


(相変わらず、イリンの拘束技は強力だな……)


 空中で体を締め付けられながらも、ハイルはイリンの力の強さに感心していた。

 ちなみに、ハルの体には何も纏わりついていない。

 鎖やロープなどで拘束をしている訳ではなく、空気を操って拘束しているのだ。


 この拘束技を使えるのは、世界でイリンを含め “二人”だけ。


「早く……! 早く答えなさい……!」

「がっ……!? ぐっ……!?」


 体を締め付けてくるだけではなく、首も締め付けられてくるので、ハイルはどんどん呼吸ができなくなっていく。

 おそらく、イリンは無意識にハイルの首を締めてしまっているのだろう。

 だから、ハイルが今どうなってるのかをイリンは分かってなかった。


「やめてっ!!! ハル君が苦しんでるっ!!!」


 クロハが立ち上がり、叫んだ。

 見るからにハイルが苦しんでいるので、クロハは許せなかった。


「拘束をしてるんです……! 苦しいのは当然です……!」

「そうじゃなくて!!! これ、息ができてないっ!!!」


 クロハの訴えにも、イリンは我を忘れているのか聞く耳を持たない。

 それどころか、力を込め、ハイルをより強く圧迫していく。


「がぁっ……!?」

「やめてっ!!!」


 ハイルの息が完全に止まってしまう寸前──、


(あやつり)()(のう)強制解除(キャンセリング)

「「っ!?」」

「がはっ!?」


 突如、イリンの技が解除され、ハイルが床に落下した。


「ハル君っ!?」


 落下したハイルの元に、クロハが駆け寄る。


「大丈夫っ!?」

「がはがはっ! は、はい……大丈夫です……」


 クロハがハイルの背中を擦っていると、イリンの力を強制解除させた人物が声を発した。


「少し落ち着きなさい。話はそれからです」

「ぎ、ギルマス……」


 イリンに声をかけたのは、冒険者ギルド【ブリューヘル】のギルドマスター、デストルだった。


 デストルは人間ではなく、ドワーフだった。


「遅れてすまないね。説明会に参加する人はこれで全員かな?」

「はい。ここに集まっている方々で全員です」


 デストルが、壁にかけられた筆記用ボードの前に立ち、見回しながら問いかけると、その隣に立っていた受付嬢のイシュが答えた。


「そうですか。それでは始めましょう。イリンさんも、席に着きなさい」

「は、はい……」


 イリンは、デストルに優しく促され、項垂れながら席に座る。

 ハイルは、クロハに抱えられる形で席につく。


 このギルドマスターであるデストル。

 彼は、S級の冒険者でもあった。


 もうすでに引退はしているが、実力は衰えておらず、今でもA級のモンスター数十体なら同時に相手にできるだろう。


 彼はドワーフだが、戦闘が得意だった。

 その逆に、武器を作ったりなどの鍛冶が苦手……と言うか、全くできなかった。


 ドワーフに生まれながら鍛冶ができない。

 それは、ドワーフとしては致命的だった。

 その為、デストルは鍛冶ができないと親に知られると、家を追い出され、さらにはドワーフの村を追放された。


 行くあてもなく、あちらこちらを彷徨ったデストル。

 空腹の限界を迎え、倒れた彼を “とある人物” が助け、食事や衣服、住み場を与えた。

 そして、 “その人物” は、デストルの戦闘の才を見抜き、冒険者を薦めた。


 その薦め通り冒険者になると、デストルはあっという間にS級になり【ブリューヘル】ギルドで最強となった。


 その後、デストルは自分を救ってくれた “人物” に恩返しする為に、 “彼” の後を継ぎギルマスとなり、ギルドを守っている。



 話を戻そう。



「冒険者諸君、この度は集まってくれたこと、感謝します。今回のこの説明会で話すことは、二つです」


 デストルが話を始めると、イシュがペンを手に取り、筆記用ボードに記入を始めていく。


「まず一つ目。一つ目はダンジョンに現れたと言う、S級モンスターについてです」


 デストルがそう言うと、集まっている冒険者達の表情が険しく引き締まった。


「真偽は定かではないのですが、国王様は真偽よりも、今後のことを考え行動を起こすことにしました。S級のモンスターなど存在しておらず、勘違いであればそれでよし。もし本当に存在しているのであれば、数が増えたりしないように、早急に駆除しなければなりません」


 筆記用ボードには、『S級モンスターの確認。実在していれば早急に討伐を!』と書かれている。


「それにより、S級モンスターを調査する調査隊を発足したいと思います。二つ目の話の後に希望者を募集するので、今からどうするかしっかりと話を聞き、決めてください」


 冒険者達が全員、つばを飲み込んだ。


「次に二つ目。今回の説明会、一番の目的はこの二つ目にあります。英雄の称号を与えられた冒険者、ハイル殿が消息不明となりました」

『っ!?』


 デストルが告げた言葉に、集まった冒険者達は驚きの表情を浮かべた。


「は、ハイルさんが!?」「一体どういう事だ!?」

「あの最強のハイルさんが、いなくなった!?」

「そんなのありえないだろ!?」


 など、冒険者達は様々な意見を同時に叫びだす。


「皆の気持ちは分かる! 私だって信じたくはない! だが、これに至っては真実で事実なのです! 取り乱す気持ちも分かるが、今は落ち着いて話を聞いてください!」


 ザワザワと騒ぎ出す冒険者達に、デストルは声を大きくして言う。

 そしてなんとか冒険者達を鎮める。


 そして、筆記用ボードには『英雄・ハイルが消息不明!? 早急に捜索を!』と書かれている。


「昨日、国王様との会議で、何においてもハイル殿を見つけ出すと言う事が決定しました。それに伴い、ハイル殿捜索隊を結成します。明日の昼に、それぞれの場所で決めた調査隊と捜索隊を集め、作戦を決行します。よって、今から、S級モンスターの調査隊、ハイル殿の捜索隊、それぞれを決めいたいと思います。希望する方に参加してください」


 そう言って、デストルはドア付近に向かう。

 筆記用ボードに記入していたイシュは、窓側へと向かう。


「私の方がS級モンスター調査隊。イシュさんの方がハイル殿捜索隊。希望する方に向かい、前に並んでください。大切な事なので、簡単に決めたりはせず、ゆっくりと考えるように」


 冒険者達は考え始めた。

 一人でじっくり考える者や、パーティーで集まって考える者。


 それぞれがじっくり考える中で、全く迷わず動いた者がいた。


「私はここにします」


 セシリアだった。


「イシュさんの方……と言う事は、ハイル殿捜索隊への参加、でよろしいですか?」

「はい。ハイルさんは私の憧れの方。私が冒険者を志すキッカケになった人です。その人がいなくなったとあれば、捜索に手を上げるのは当然です」


(俺、あの人と会った事、あったっけ……?)


 セシリアの事は、今日初めて知った。

 その為、ハイルはセシリアの事が分からず、必死に思い出そうとしていた。が、全く思い出せない。


 セシリアが動いたのを皮切りに、冒険者達はそれぞれ参加する方に動き始める。


「クロハさんは、どっちにするんですか?」

「そうだね……S級のモンスターがいるんなら、多分私じゃないと倒せないし……でも、ハイルさんの方も気になるし……」

「クロハさん……?」


 ハイルは、クロハの真面目な顔を見て少し心配になった。

 どこか危険さを孕んだ表情を浮かべていたからだ。

 放っておくと、すぐにいなくなってしまいそうな、すぐに消えてしまいそうな、そんな様子があり、ハイルは心配になってしまった。


「クロハさん……?」

「ん? あっ、ご、ごめんね……! 変な顔しちゃって。私はハイルさんの捜索に参加しようかな。やっぱり、ダンジョンでいなくなったって聞くと、心配だから」

「じゃあ、僕もそっちで」

「え?」

「え?」


 二人は目を見合わせる。


「は、ハル君も参加するの……?」

「え……? は、はい……。だ、駄目ですか……?」

「う〜ん……駄目、じゃないとは思うんだけど……とりあえず、後でイシュちゃんに聞いとくね」

「はい」


 そして、クロハはハイルと手を繋いでイシュの前にできた列に並ぶ。


 トータルで、ハイル捜索隊の方が参加人数が多かった。


「うむ。それでは、これで確定します。明日の昼、王城前にある広場に集まってください。イシュさんと私も広場にいますので、S級モンスター調査が私の方に。ハイル殿捜索はイシュさんの方に並んでください。よろしいですか?」

『はい!』

「それでは、解散といたします。また、明日の昼に」


 そう言って、デストルは部屋を出ていった。


「皆様、ギルドの受付場に参加証明カードを用意してありますので、それぞれ参加する方のカードをお持ちになり、お帰りください」


 イシュが追加事項を伝える。

 それを聞いた冒険者達は、それぞれ返事をし、部屋を出ていった。


 部屋の中には、クロハ、ハイル、セシリア、イシュ、イリンの五人が残った。


「えっと……クロハさん?」

「はい」

「私、セシリアと申します。これから、よろしくお願いします」

「うん。よろしくね」


 セシリアとクロハは握手をした。その後、セシリアはハルをチラッと見た後、部屋を出ていった。


「っ!?」


 ハイルは、鋭い視線を感じ、視線のする方を見る。

 すると、そこにはハイルを睨みつけるイリンがいた。


「あの子……怪しい……徹底的に調べてやる……!」


 イリンはそう呟き、部屋を出ていった。


(イリン……ごめんな……)


 ハイルは、心の中で静かに謝罪をした。


「イシュちゃん」

「はい?」


 そんなハイルをよそに、クロハはイシュに声をかける。


「ちょっと相談があるんだけど……」

「はい」


 ☆ ♡ ☆


 翌日の昼。


 王城前の広場には、大勢の冒険者や騎士達が集まっていた。


「北の冒険者ギルド所属の冒険者の皆さんは、こちらに!」

「南の冒険者ギルドは、こっちで〜す!」

「西はこっちで〜す!」


 広場には、様々な冒険者ギルドが集まっていた。


 それぞれの受付嬢が、冒険者達を集めていた。

 そんな中、王城所属の騎士達は──、


「我々は、S級モンスター調査に参加する! ダンジョンに数日、いや、数カ月、いや、数年潜る事になるかもしれない! 準備は整えてきたか!」

『はい!』

「王の側近である、アガザ様もご参加なさる! 失礼のないようにしながら、調査に専念するように! いいな!」

『はい!』


 騎士達は、S級モンスターの調査に参加するようだ。

 気迫と気合がすごく、騎士達の周りには誰も寄って行こうとしない。


「東の冒険者ギルド【ブリューヘル】の冒険者の皆様はこちらに集合してください!」


 イシュが、騎士達の大きな声に負けないように声を張り上げ、【ブリューヘル】の所属冒険者達を集めていた。


「私の方にハイルさん捜索に参加される方は並んでください! デストル様の方に、S級モンスター調査に参加される方は並んでください!」


 イシュが、テキパキと指示を出していく。


「うわぁ、凄い。いっぱい集まってる」

「すごいですね」


 そこに、クロハとハイルもやってくる。


「あ、クロハさん」

「ん? あ、セシリアさん。おはよう」

「おはようございます。人、多いですね」

「ね〜。まぁ、それだけ緊急事態だからね」

「はい。それで……そ、その子も捜索に……?」


 セシリアは、クロハの隣にいるハイルを見て、戸惑った表情を浮かべた。

 調査や捜索には、少なからず危険が伴う。

 そんなものに、子供が参加するなど、本来であればあってはならない。


「うん。特例で認めてもらったんだ。冒険者の仮登録しようとしたんだけど、登録できなくて。申請とかもなんでか全部通らなくて」

「え!? そうなんですか!? 申請が通らないって、名前とか年齢とか分からないって事ですよね!?」

「そうなの……だから本来であればこの任務に参加したりはできないんだけど、ダンジョンに再び入る事で、何か思い出せる事があるじゃないなと思って。必死に頼み込んだの。そしたら、ギルマスが特例で許可を出してくれて」

「そうなんですね……。と、と言うか、そ、その子……」

「ハル君ね」

「は、ハルさんは記憶が……?」

「う〜ん……はっきり記憶喪失って分かった訳じゃないんだけど、ダンジョン内での話をしようとすると苦しそうな顔をするの。だから、もしかしたら記憶がないんじゃないかなって。憶測でしかないんだけど」

「なるほど……では、ダンジョン内では私もハルさんを守ります!」

「ありがとう♪」


 そんな会話をしていると、イシュが冒険者達に声をかける。


「この後、ダンジョンへと向かいます! S級モンスター調査隊は十人一組。ハイルさん捜索隊は五人一組となってダンジョンに潜っていただきます! 編成はこちらで決めさせていただきましたので、ダンジョン前に到着次第、お伝えさせていただきます!」


 そのイシュの言葉を聞いて──、


「一緒になれるといいね♪」

「ですね♪」


 クロハとセシリアはそう言いながら、移動を始めた。クロハはハイルの手を握って。


 そして、ダンジョン前に到着した冒険者達。


「え、えっと……」


 セシリアは困惑していた。


「なんであんたと……」

「それはこっちのセリフですけどね」


 クロハ、ハイル、セシリアと組む事になったのは──、


(まさか、リアン、イリン、ミュリンと一緒とは……)


 なんと、ハイルのパーティーメンバーの三人だった。

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