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第5話 ハルとしての第一歩/波乱の説明会?

 ハイルが目覚め、エルフの爆乳美少女──クロハにハルと名乗った翌日。


「ん……んん?」


 ふにょん♡ ふにゅん♡ ふにゃん♡


「なんだ……? なんか柔らかい感触が……」

「んんぅ♡ ハル君、大胆♡」

「え……?」


 ハイルは一瞬で寝ぼけていた意識が覚醒した。


「っっっっ!?」


 ベッドで眠るハイルの真横、そこには裸のクロハがいた。

 そして、ハイルは両手でクロハの爆乳を鷲掴みにし、揉みしだいていた。


 手のひらには、硬い感触もある。


「なっ……なっ……なっ……!?」

「おはよう♡ ハル君♡」


 恍惚とした表情を浮かべたクロハは、舌なめずりをしながらハイルに挨拶をする。


 そんなクロハに──、


「何してるんですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


 そう叫ぶハイルであった。


 ☆ ♡ ☆


「ごめんってば〜……許してよ〜ハルく〜ん……」

「別にもう怒ってません」

「じゃあ、なんでこっち向いてくれないの〜……」

「それはクロハさんが着替えてるからでしょうが!」


 朝から色々あった二人は、冒険者ギルド【ブリューヘル】へ向かうため、支度をしていた。


 ハイルは特に支度する必要はなかったが、クロハは外出用の服に着替える必要がある。


 なので着替えているのだが、先程からハイルに目を合わせてもらおうと声をかけている為、全く着替えが進んでいなかった。


 胸を隠すブラジャー、下半身を隠すパンツ、ガーターベルト、黒タイツを身に着けているだけで、服を着ていない。

 その為、ハイルは目を合わせたくても合わせられなかった。


 合わせようとすれば必然的に、クロハのあられもない姿を見ることになってしまうから。


 だから目を合わせないようにそっぽを向いているのだが、それをクロハはハイルが怒っていると勘違いしているらしく、声をかけ続けてきて着替えを全く進めない。


「ハルく〜ん……!」

「いいからさっさと着替えてくださいっ! 着替え終わったらいくらでも目を合わせますからっ!」

「本当っ! 分かった! すぐに着替えるから待ってて!」

「はぁ〜……」


 クロハはようやく、服を着始めた。


 ☆ ♡ ☆


 朝から色々あったが、なんとか外出する事ができた。

 ハイルとクロハは、並んで歩いている。


「な、なんで手繋いでるんですか……?」

「だって、ハル君子供だし。迷子になったら困るでしょ?」

「ま、まぁ……」


 ハイルはクロハと手を繋いでいた。

 いや、正確には繋がれていた。


 今のハイルは子供の姿なので、子供じゃないと言って手を離す事ができなかった。

 それに、クロハの手は柔らかくてひんやりしていて、ずっと握っていたいと思ってしまった。

 だから、ハイルは複雑な気持ちを抱きながらクロハと手を繋いでいた。


「ん? んふふ♡」


 手に力が入ったのを感じ、クロハは嬉しそうに微笑んだ。

 ハイルが甘えてきてくれてると思っているのだろう。

 クロハは浮足立った足取りで、ハイルは重たい足取りで目的地に向かった。


 ☆ ♡ ☆


「着いたよ」

「ここって……ギルド?」


 二人がやってきたのは、冒険者ギルド【ブリューヘル】だった。


 中に入ると、ギルドの受付嬢や冒険者達が慌ただしくしており、かなり騒々しかった。


「なんか、騒々しいですね」

「うん……ちょっと聞いてみようか」

「はい」


 二人は受付へ向かった。

 そこには、台の上に散らばった書類を整理したり、書き込んだりしている受付嬢がいた。

 その表情はとても慌てた様子で、忙しいのが伝わってきた。


「イシュちゃんっ」

「え? あ、クロハさん! いらっしゃいです! 何かお困り事ですか?」


 声をかけた受付嬢──イシュは切羽詰まった表情から、一気に笑顔に戻し、クロハに接した。


「いや、お困り事って言うか、そっちが困ってそうって言うか……なんか大変そうだけど、もしかしてS級モンスターの事?」


(どうしよう……声が聞こえない……)


 頭上で会話をする二人。

 だが、子供の姿のハイルには二人の声が届いていなかった。

 おそらく、普段であれば聞こえているのだろうが、周りが騒々しいので、二人の声が全く聞こえなかった。


「S級モンスターもそうなんですが、実はハイルさんが行方不明になってしまったんです」

「え!?」

「?」


 会話は聞こえないが、クロハが驚きの声を上げたのは分かったので、ハイルは首を傾げクロハを見上げる。


 ちなみに、クロハの格好は、超が付くほどのミニスカート。

 フリルのスカートから覗く緑色のパンツは、背の低いハイルからは丸見えだった。

 黒いタイツやガーターベルトも、妖艶さを醸し出している。

 見ないようにするのが必死なのは、言わずもがな。


 トップスも、おへそ丸出しの格好で、大きい胸がトップスの下からこぼれ落ちてしまうのではないかと心配になるほどだ。

 緑色のブラをしてるにも関わらず、下乳の主張がすごく、ハイルは上を向く度にドキドキしていた。


 そんな格好だが、それよりもクロハが何に驚いているのかが気になるので見上げた。


「は、ハイルさんってあの英雄パーティーの人だよね!? ゆ、行方不明ってどういう事!?」

「詳しい話はこの後の説明会で話されるのですが、どうやらS級モンスターに襲われたらしいんです……」

「そう……なんだ……その説明会って私も参加できる?」

「はい。このギルドに登録している冒険者であれば誰でも参加可能です。こちらに名前とパーティー名、階級を記入してもらえますか?」

「うん、分かった」


 イシュから紙とペンを手渡され、そこに情報を記入していく。


 記入しているクロハを見ていたイシュだが、クロハの足元に子供がいるのに気が付き、首を傾げる。


「クロハさん……そ、その子は……」

「ん? あ、そうそう。今日はこの子の事で来たんだ。昨日、緊急招集があった時、私ダンジョンにいたんだけど、帰る時にダンジョン内で倒れてるのを見つけたの」

「ダンジョン内で!? そ、それって……」

「うん。多分ダンジョン()(みん)だと思う」


 クロハがそう告げると、イシュは青ざめた表情を浮かべた。


【ダンジョン()(みん)】。それは、ダンジョン内で迷子になったり、行方不明になったり、またはダンジョン内で生まれた子供の事を指す言葉。


 クロハは、ハイル──ハルの事を、ダンジョン内で迷子になり、記憶が混濁しているダンジョン遭民だと思っているようだ。


「そうでしたか……できればそちらについても対応したいのですが……」

「今は無理だね……大丈夫。会話はちゃんとできるし、食事とかも問題ないから、今度ゆっくりでね」

「はい。ありがとうございます。できれば、クロハさんのパーティーメンバーに全員集合していただければありがたいのですが……」

「ごめんね……あの子達今、遠征中だから……帰って来るのだいぶ先になるんだよね……」

「そうですよね……いえ、ごめんなさい。今、皆さんには危険な任務に当たってもらってるんです。甘えた事は言えません。すみませんでした。では、あちらの部屋に向かってください」

「ありがとう。じゃ、ハル君、行こう」

「はい」


 クロハは、ハイルの手を取り、指さされた部屋へと向かうことに。

 クロハの手を取ろうと、一歩踏み出した時、目の前に人が現れ、後ろに転んでしまった。


「うぁ!?」

「ハル君っ!?」

「あっ!? ご、ごめんなさいっ!?」


 ハイルがぶつかったのは、銀と水色を基調とした騎士服のような服を着た少女だった。

 ヒラヒラのミニスカートが可愛らしく、騎士服っぽい見た目の中にキュートさが入っていた。

 胸の主張も中々なもので、クロハほどではないが、かなりの大きさを誇っている。


「だ、大丈夫でしたか!? お、お怪我とかは……!?」

「い、いえ……大丈夫、です……」


 差し出された手を握ろうと、顔を上げるハイル。

 手を差し出す少女の顔を見ると、黙ってしまう。


「どうしました……?」


 ピンクの髪色で、ボブカットの髪型。

 その髪色と髪型は見たことがないが、可愛らしいその顔に、ハイルは見覚えがあった。


(でも……一体どこで……)


 見覚えがあるが、どこで見たのかを思い出せないハイル。

 考え込んでいるため、ハイルは少女の手を取るのが遅れた。


「は、ハル君!? 大丈夫!? どっか怪我したの!?」


 手を取るのが遅れた為、クロハに心配をかけてしまったらしく、クロハは尻もちをつくハイルに駆け寄ってくる。


「立てる?」

「は、はい。大丈夫です」

「お尻痛くない? 怪我してない?」

「く、クロハさん、大丈夫ですって……」


 クロハは、立ち上がったハイルのお尻の埃を払う。

 しかし、払うその手つきはお尻をはたくのではなく、撫で回すようないやらしい手つきだった。


「く、クロハさん!?」

「はっ!? ご、ごめん!? 大丈夫なら、ほら、行こう!」


 クロハがハイルの手を取り、走り出す。


「ちょ、ちょっと待ってくださいぃ!?」


 引っ張られ連れて行かれるハイルは、先程の少女に何も言えずにその場を後にしてしまった。


「あ、え、えっと……」


 呆然と立ち尽くす少女。そんな少女にイシュが声をかける。


「セシリアさん。大丈夫ですか?」

「ふぇ……? あ、は、はい……! あの子は……」

「すみません……個人情報になってしまうので……」

「あ、そうですよね。すみません」

「いえ。それで? 本日のご用件は?」

「あ、あの……! ハイル様──いや、ハイルさんが行方不明になったって噂を聞いて……本当なんですか……!?」

「はい。それについての説明をあちらの部屋でこれから行います。セシリアさんもご参加されますか?」

「は、はい……!」

「畏まりました。では、こちらにお名前とパーティーに所属していればパーティー名を。後階級のご記入をお願いします」

「は、はい……!」


 ピンクのボブカット少女──セシリアは、イシュから紙とペンを受け取り、必要事項を記入していく。


「記入を終えたら、あちらの部屋に向かってください」

「は、はい……!」


 セシリアは、紙に記入を終えた後、クロハ達が向かった部屋へと向かった。


 階級の欄には【A級】と書かれていた。


 ☆ ♡ ☆


「すごい人……」


 ハイルとクロハの二人は、説明会が行われる部屋へと入室した。


 入室すると、部屋の中には大勢の人が集まっていた。

 並べられた椅子に座ったり、壁際に立っていたりなど。

 机は長机になっており、四つの長机が並んでいる。

 そこに、複数の椅子が備え付けられており、一つの長机の所に十数人が並んで座れる。


「ハル君、あそこに座ろう」

「はい」


 クロハに手を引かれ、真ん中の長机の所に向かった。



「ほら、ハル君」

「え、えっと……?」

「ハル君、小さいから前が見えないでしょ? だからこ〜こ」


 クロハは、自身の膝の上をポンポンと叩きハイルに座るように促してくる。


「で、ですが……」

「遠慮しなくていいから。ほら、座って。…………け、決して邪な気持ちはないからね!?」

「え〜……」


 別に何も思ってなかったのだが、その言葉で一気に不安になってきたハイルであった。


 ハイルがクロハの膝の上に座るのを躊躇っていたのは、女子の膝に男が座る事に抵抗があったからだ。

 体重をかけるのが気が引けるのだ。


 ハイルはまだ、自分が子供になった自覚がなかった。

 まぁ、当然と言えば当然なのだが。


「まぁ、そういう事なら……失礼します」

「うん♡」


 ハイルは、恐る恐るクロハの膝の上にゆっくり座る。


 お尻に感じるのは、クロハの柔らかい太ももの感触。

 そして、背中を後ろに預けると、太ももよりも柔らかく、かつ弾力がある大きな膨らみ。

 ポヨンポヨン♡ と少し体を動かすだけでその膨らみが背中を押し返してくる。


「っ……」


 ハイルは顔を真っ赤にしながら、恥ずかしさとその感触に耐えていた。


 部屋の中に、どんどん冒険者が集まっていく。

 椅子が足りず、立つ人数が増えていく。


 階級によっての差別などはないが、皆、自然と階級が高い人に座るのを譲っていた。

 譲られた一人に、先程、ハイルとぶつかってしまったピンク髪のボブカット少女がいた。


 それを見たハイルは、彼女が高い階級であるのだと知り、心の中で失礼ながらも軽く驚いていた。


 ガチャ。


 ドアは先程から何回も開いているのだが、ハイルは今回たまたまドアが開いたタイミングでそちらを見てしまった。

 すると、そこにはイリンが立っていた。


(い、イリン!)


 ハイルのパーティーメンバーであるイリン。

 ハイルは仲間を見れた嬉しさで、心の中で叫んだ訳ではなかった。


(ど、どうしよう……イリンは勘が鋭いから、もしかしたら俺がハイルだって気がつくかもしれない……気がついてくれるのは大いに助かるんだけど、そうなったらクロハさんに正体がバレるし、何よりガイルが何をしでかすか分からない……)


 ハイルは、イリンに正体がバレるのを忌避していた。

 別に、ハイル自身はイリンに気づいてもらいたい気持ちはあった。

 だが、ガイルはハイルを殺したと思っている。

 なので、もし、ハイルが生きていればガイルは何をしでかすか分からない。

 もしかしたら、ハイルだけでなく仲間までも殺してしまうかもしれない。

 ガイルは “元のメンバー” を “奴隷扱いしていた” 過去がある。

 そんな最低最悪な人間だ。殺したと思っていた奴が実は生きてました。なんて知ったら、とんでもない暴走を起こしてしまうかもしれない。


 だから、ハイルはイリンに正体がバレていいのかどうかが分からず、内心怯えていた。


 そしてもう一つ。

 自分の正体が実は “成人している青年” だとクロハが知ったら、ショックを受けるかもしれない。

 クロハは自分が子供だから、あられもない姿を晒しても何も気にしていない。

 だが、もし、その子供が実は子供じゃなかったら、クロハの心には一生消えない傷が残ってしまうだろう。

 自分のあられもない姿を、男に見られてしまったと言う、深い傷が。


 まぁ、クロハに関しては気にしなくていいような気もするが、この時のハイルはクロハの本性を知らないのでいたしかない。


 ハイルはすぐに視線をイリンからそらし、下を俯く。

 下を見るとクロハの膝があった。そこを見ないように必死に床を見てイリンが席に向かうのを待つ。


 イリンが歩き始め、クロハの横を通る。

 ハイルの心臓は、これでもかと言うくらい早鐘を打っていた。


 イリンが隣を通る瞬間だけ、まるで時がスローになったように感じた。

 一秒が一分に感じる。

 そのくらい、ハイルは緊張していた。


 イリンがクロハの横を通過した。


「ふぅ〜……」


 ホッとしたハイルは、小さなため息をつく。


「ハル君? 大丈夫? 人が多くて疲れちゃったかな?」


 そんなハイルに、クロハが声をかけてくる。

 突然ハイルがため息をついたので、疲れてしまったのではないかと心配したようだ。

 しかし、このクロハの声掛けが、ハイルを再び緊張させてしまう事となる。


「ハル……?」


 クロハが口にした『ハル』と言う名を聞き、足を止め、クロハの方を見た。


「っ!?」


 イリンはクロハの膝の上に座るハルを見た瞬間、目を見開いた。


「あなた!」

「「っ!?」」


 イリンはクロハに近づき、ハルに向かって指を指す。


「えっと、イリンさん……? ど、どうしたの……?」


 クロハが驚きつつもイリンに尋ねる。


「あなたに用はありません。用があるのはそこの子供です!」


 イリンはクロハを冷たくあしらい、ハルに用があると告げる。

 ハイルは全身を震わせた。

 まさか、バレてしまったのではないかと。


「ぼ、僕に、何か……?」


 小さく、か弱い声でイリンに尋ねる。

 すると、イリンは鋭くハルを睨みつけながら──、


「なんであなたから、ハイルの気配がするんですか! それにこの能量(エネルギー)とは違う感じ……これはハイルにしかない特別なものです! それがなぜ! あなたから感じるんですか!」


 と、声を荒らげながら言った。


 その言葉に、部屋に集まっていた冒険者達が一気に私語を止め、イリン達に注目した。


「は、ハル君からハイルさんの気配が? そんな訳ないよ。ハル君はハル君なんだから。ね?」

「は、はい……」

「ふざけないでください……私がハイルの事で間違えを犯す事なんてありえません……私はハイルの事ならなんでも把握してるんですから!」


(そ、それはそれで怖いよ!?)


 イリンの言葉に、心の中でついツッコミを入れてしまうハイル。


「その子供……ハル、でしたっけ? ハルから、ハイルの気配、ハイルしか持ち得ない力、ハイルの匂い、ハイルの感覚を感じます! 一体どういう事なんですか!」

「だから! この子はハイルさんじゃないってば! この子はハル君! ハイルさんとは別人なの!」

「あなたは黙っていてください! 私はハル本人に聞いてるんです! それに、別人であるからこそどうしてなのか気になって聞いてるんです! まるで私がハイルとハルを同一人物だと思っているような言い方は止めてください!」


 クロハとイリンが言い争う。


 その言い争いを聞いて、ハイルは安堵していた。


(よかった〜……! 正体がバレた訳ではないのね……!)


 ハイルは、クロハの上から降り、椅子の上に立つ。


「は、ハル君……?」


 クロハが心配そうな目でハイルを見つめる。


「僕からハイルさん? と言う方の気配などを感じる理由は、僕にも分かりません。僕はハイルさんと言う方を存じ上げないですし、この街にだって初めて足を踏み入れたんですから」


 ハイルのその言葉に、周りにいた冒険者達がどよめく。

 長年冒険者をやっている者は当然。新人であっても噂程度で聞いた事はある。


【ダンジョン()(みん)】と言う存在を。

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