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第2話 いなくなった仲間/緊急招集発令

 時は、十八歳くらいのハイルがガイルに腹部を突き刺された直後にまで遡る。


 ハイルを突き刺した後、ガイルは洞窟──ダンジョンを出て、街に向かっていた。


 そんな頃、ガイルが向かっている街では、ガイルやハイルの他の仲間達が家の中を走り回っていた。


 ちなみに、家は一軒家でハイル達パーティーが住んでおり、活動の拠点としている。


「いた?」

「いない……ハイルもガイルも……」

「どこに行ったんだ……」


 光りに照らされるとキラキラ輝く銀髪ロングヘアの少女──リアン。

 サファイアのような煌めきを放つ水色髪ボブヘアの少女──イリン。

 ひまわりのような力強さを持った黄色髪ミディアムヘアの少女──ミュリン。


 その三人が、家の一階、リビングに集まり焦りを抱かせながら話をしていた。


 リアン、イリン、ミュリンに共通しているのは大きな胸を持つという事。

 三人共、巨乳なのだ。

 リアン、ミュリンはGカップ。イリンはFカップ。


「ハイルが何も言わずにいなくなるなんて、絶対にありえない……一体どこに……」


 リアンが言う。


「ひょっとして、何か事件に巻き込まれたとか……」


 イリンが杖を握りしめながら言う。


「その可能性はある。だが、そもそもたった一人で行動するか? しかも誰にも何も言わずに」


 ミュリンが険しい表情を浮かべながら言う。


「「「……………」」」


 と、三人が考えていると──、


 ドンッ! ガチャ! バタンッ!


「「「っ!?」」」


 突然、玄関の方から大きな音が聞こえてきた。


 音からして、ドアにぶつかり、ドアを開け、そのまま倒れ込んだ。そんなような音だった。


 三人が玄関に急いで向かうと──、


「「「が、ガイル!?」」」


 そこには “傷だらけ” のガイルが倒れていた。


「ど、どうしたの!?」

「ガイルさん!?」

「酷い傷! 何があったの!?」


 三人は慌ててガイルに駆け寄る。


「だ、ダンジョンで……!?」

「説明は後にしてください! 今から治療します!」


 そう言って、イリンは杖をガイルに翳す。


「我が身に潜む運命(さだめ)られし(ちから)よ。我が呼び声に応え、その(ちから)を解放せよ! 治能(カバー)!」


 イリンがそう唱えると、杖から淡い緑色の光が放たれ、その光りがガイルを包みこんでいく。

 すると、みるみる内にガイルの傷が消えていく。


(あれ? この傷、治すの見た目より難しくない……? どういう事……?)


 イリンは心でそう思いながらも、ガイルの怪我を治していく。


「はぁはぁ……助かったよ、イリン」

「は、はい……!」


 完治したガイル。

 イリンにお礼を告げた後、ゆっくりと立ち上がる。が、ふらついてしまう。


「おっと! 大丈夫か?」

「あ、あぁ……すまない」

「っ……いや。気にするな」


 ミュリンがガイルを支える。

 申し訳なさそうな顔をしながら謝罪するガイルだったが、その謝罪を少し怪訝そうな顔を浮かべながら受け入れるミュリン。

 なぜそんな顔をしているのか。その理由はガイルの左手にあった。

 ガイルの左手は、ミュリンの胸を鷲掴みにしていた。


「………………へ、部屋に行こう。ガイルもゆっくり座ってた方がいいでしょ?」

「あぁ、そうだな。そうしてもらえると助かる」


 リアンが、ガイルのセクハラを軽蔑した目で見ていた。

 が、すぐに気を取り直して部屋に向かうことを提案した。


 そうして、四人はガイルの部屋へと向かった。


 これは余談だが、この三人は常日頃からガイルにセクハラを受けていた。

 しかし、ガイルはパーティーのリーダーである為、誰も何も言えずに、逆らえずにいた。

 ハイルはセクハラの事を知り、憤怒していた。

 その為、この件に関してハイルとガイルは何度も衝突を繰り返していた。


 ☆ ♡ ☆


「それで? 何があったんだ?」


 ガイルの部屋にやって来た四人。


 ガイルはベッドの上で座っており、他三人は脇に立っている。


「あぁ……今日の朝、ハイルに呼び出されたんだ。二人っきりで話したい事があるって。それで、俺は指定された場所、ダンジョンに向かったんだ」


 ガイルは、身に起きた事を説明し始めた。


「それで、ハイルの元に行った俺は、呼び出した理由を聞いたんだ。そしたら、突然ナイフで襲いかかってきたんだ……!」

「「「っ!?」」」


 ガイルの言葉に、三人が驚きの表情を浮かべる。


「は、ハイルが襲いかかってきた!?」

「そ、そんな!?」

「ありえんだろ!?」


「嘘じゃない……ハイルは俺を殺そうとしてきた……。死にたくなかった俺は、走って逃げたんだ。でも、ハイルはずっと追いかけてきた……」

「ハイルがガイルを襲う理由は……?」


「俺が英雄に選ばれたのが許せなかったそうだ……。常に前線に立っていたのは自分なのに、なんでお前がって、常に後方で支援しかしてないお前がって、これまで見た事がない形相で襲いかかってきた……」

「そ、そんな理由で……」


 三人はいまだ信じられないのか、戸惑った表情を浮かべている。


「俺は逃げながら何度も説得をしたんだ……! そんなに俺が気に食わないなら、追放でもなんでもしてくれていいと……! 英雄の称号も、ギルマスや国王に相談して、ハイルに任命するようにすると……! でも、それでもハイルは聞く耳を持ってくれなかった……! それどころか……」


 ガイルは奥歯を噛み締めながら──、


「追放するにしても、ただ追放するんじゃもの足りない。それに、追放した所で他のパーティーに加入して活躍されたら困る。だから、死んでもらう。って、俺にそう言ったんだ……」

「「「………………」」」


 三人は何も言わずに、ただ黙ってガイルの話を聞いている。


「俺は必死に逃げた……死にたくなかったから必死に逃げた……そんな時だった。奴が現れたのは……」

「「「奴?」」」


「あぁ……。見たこともない超巨大なモンスターが……」

「見たことがない──」

「超巨大な──」

「モンスター……!?」


「あぁ……。そのモンスターはなぜか俺とハイルを狙ってきた。ハイルは一時休戦だと言って、共に戦う事になったんだ。だけど……」

「だけど?」

「モンスターは二人がかりでも全く敵わないくらい強くて、俺達はあっという間にボロボロになった……。そんな時、ハイルが俺に言ったんだ。お前は先に逃げろ! ここは俺に任せろ! って……」


 ガイルは布団を強く握りしめ、汗を滴らせた。


「俺は、ハイルのその言葉に甘え、逃げてしまった……! ハイルを置き去りにしてしまったんだ……! 俺は、俺は……俺は! ハイルを見殺しにしてしまったんだ……!」


 ガイルは泣き叫んだ。

 瞳から大量の涙をこぼして、鼻水を垂らしている。


「ガイル……」

「そんなに自分を責めないでください……。ガイルさんは何も悪くありません……。ハイルが逃げろと行ったんです。ハイルにそう言われたら、ここにいる誰だってその言葉に従います」

「そうだぜ。それによ、ハイルはまだ死んだって決まった訳じゃない。もしかしたらどうにかして逃げ切れてるかもしれない」

「うん。だから、ギルドに報告して、調査と捜索を頼もう。ね? だからガイル。自分をそんなに責めないで」

「みんな……ありがとう……!」


 三人の優しい言葉に、ガイルはさらに涙を流した。


「そのモンスター、階級で言うとどのくらいだ?」

「あれは……多分、 “S級” だ」

「「「っ!?」」」


「え、S級!?」

「S級なんてダンジョンが誕生してから、モンスターが生まれてから一度も確認、発見されてないんだぞ!? それが本当だとすると、歴史を大きく揺るがす大事件だぞ!?」

「そ、それも踏まえてギルドに報告しないと、ですよね……!?」


 ガイルから報告を受けた三人は、すぐさまギルドへと向かった。


「ち〜と盛り込み過ぎたか? まぁ、特に問題はないだろう」


 ガイルは外に出た三人の背中を見送りながら、そう独り言ちた。

 この “嘘” が、今後このパーティーに、街に、国に、そして自分自身にとてつもない影響を及ぼしてしまうと言うことを、まだ知らなかった。


 ☆ ♡ ☆


 ギルドへの報告を終えた三人。

 三人の報告を受けたギルドは、すぐに行動を起こした。

 国へ起こった事態を報告し、街全体、そしてダンジョンに緊急警戒体制を発令。

 そして、冒険者達には緊急招集を発令した。


 その緊急招集が発令された時、(くだん)のダンジョンに入っている一人の少女がいた。


「ん? ギルドからの緊急招集……? 緊急招集なんて初めてよね……? 一体何が……とにかく今は、戻らないと」


 長い耳をしたエメラルドのような輝きを放つ緑色髪ショートの少女──クロハは、何よりも目を引く特大なモノ。爆乳を揺らしながら走り出す。


「はぁはぁ……ん? あれって……」


 クロハは足を止める。

 クロハの視線の先には、血溜まりの上に横たわる人の姿があった。


「ひ、人っ!? あ、あの! 大丈夫ですか!?」


 クロハは急いで倒れている人の元へ駆け寄る。


「えっ!? こ、子供!? なんでダンジョンに子供が!?」


 倒れている人は、なんと “十歳くらい” の男の子だった。


「この血溜まりって……この子の……!? でも、見た感じ “怪我はしてない” ように見える……でも、こんな所に一人で放っておくわけにはいかないよね。よし!」


 クロハは気を失っている男の子を抱きかかえ、走り出した。


 ☆ ♡ ☆


 ギルドへの報告を終えたリアン、イリン、ミュリンの三人は、家へと戻ってきていた。

 リアンとミュリンの二人は、帰宅するやいなやすぐに自室に向かい眠ってしまった。

 時刻が夜遅い事もあり、二人は睡魔が限界だったようだ。

 イリンは、ガイルの様子が気になったので、ガイルに挨拶をしてから眠ろうと思い、ガイルの部屋へと向かった。

 しかし、ドアの前で立ち止まるだけで、中に入る事はできなかった。


 イリンがドアの前にやってきたのとほぼ同タイミングで、ガイルは部屋の中に声をかけた。


「おい、いるんだろ? 姿を見せたらどうだ?」

「ギヘヘッ。さすがだなぁ〜。完全に気配を消していたんだが」

「はっ。殺気をダダ漏らしにしてたくせに、よく言うぜ」

「ギヘヘッ」


 ガイルが声をかけると、何もない場所から真っ黒なローブを身にまとい、フードで顔を隠した男が姿を現した。


「それにしても、さっきは名演技だったなぁ〜。ギヘヘッ。まさか涙まで流すとは」

「ふっ。まぁ俺にかかれば演技なんてお手の物さ」

「ギヘヘッ。最高に最低で最高に最悪な奴だなぁ〜。あそこまで作り話を悪びれもせずに語れる奴は、お前くらいなもんだ〜。ギヘヘッ」

「ふっ。本当は襲ったのはハイルではなく俺で、S級モンスターも嘘。そして、ハイルはもう生きていないだろう。俺が腹を抉ってやったからな」


 ガイルは窓の外、月明かりが照らす夜空を、妖しい笑みを浮かべながら言う。

 だが、その表情は少しだけ暗くなり──、


「一つだけ心配事があるとすれば、ギルドが派遣する調査隊や捜査隊にハイルの遺体を見つけられてしまう事だな。それを見つけられてしまっては俺の嘘がバレてしまう」

「ギヘヘッ。まぁ、それに関しては大丈夫だと思うがな〜」

「どういうことだ?」

「いや、こっちの話だ。俺はそろそろ戻るぜ〜。あんまり遅いと “姫” がうるさいからな。ギヘヘッ」

「あぁ」

「ギヘッ、ギヘヘッ」


 謎の男は、闇に溶け込むかのごとく姿を消した。


「ふっ。これで、このパーティーは俺だけのモノになった。俺だけのハーレムだ!」


 ガイルは嬉々として、静寂な部屋に叫んだ。


 ☆ ♡ ☆


「はぁはぁ……!」


 イリンは走っていた。


「ハイル……! ハイル……! ハイル……!」


 ガイルの部屋のドアの前でたまたま聞いてしまっていたのだ。

 ガイルが自分達に話した事が、全て嘘だったと言うことを。

 ガイルがハイルを襲い、殺したと言う事を。

 それを聞いたイリンは、居ても立ってもいられなかった。

 今ならもしかしたら間に合うかもしれない。助けられるかもしれない。

 そう思ったイリンは、ダンジョンに向かっていた。


 しばらく走り続けたイリンは、ダンジョンの入口にたどり着いた。

 しかし、緊急警戒体制が敷かれてる為、ダンジョン前には見張りをする二人の人物がいた。


「お、おい君! こんな時間に何してるんだ!」

「今は緊急警戒体制が発令されている! ダンジョンへの立ち入りは禁止だぞ!」

「ごめんなさい、眠って!」

「「っ!?」」


 イリンは、走りながら二人に技能(ぎのう)を施し、眠らせた。

 それによりイリンは、難なくダンジョンへと入る事ができた。


 ダンジョンの中に入ったイリンは──、


「ハイルー!!! ハイルーーー!!! ハイルーーーー!!!」


 ハイルの名前を叫びながら、走り回っていた。


「どこ……どこなの……どこにいるの……ハイル……!」


 大量の汗を額に浮かべるイリン。

 その表情は、焦りで歪んでいた。


「お願いハイル……無事でいて……!」


 この後、夜が明けるまでハイルを探し続けたイリンだったが、ハイルを見つける事はできなかった。


 ハイルが元々倒れていた所には、 “なんの痕跡も残っておらず” 、イリンはハイルがどこにいたのかさえ分からなかった。


 ハイルが爆乳美少女──クロハの家のベッドの上で目を覚ましたのは、日が昇った後、朝の事だった。

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