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第18話 集結するメンバー/捜査再開

 ハイルが目覚めた翌日。


 リアン、イリン、ミュリンの三人はロリスタンス王国の国境付近にある門の前に集まっていた。


 ロリスタンスから派遣される者達と共に、ショタリシアスへと帰るためだ。


「待たせてすまない」


 談笑しながら待っていると、動きやすさを重視した騎士服を着たエリィと、防御に徹した騎士服を着たドゥーザがやって来た。


「いえ。あれ? ヒメリ様は?」

「あいつは留守番だ。色々やらなければならない執務があるくせに、サボっていたからな」

「あいつらしい」

「あはは……では、お二人だけで?」

「いや」


 リアンが尋ねると、エリィとドゥーザが左右に分かれた。

 その真ん中にいたのは、騎士服を身に纏った三人の男性だった。


「お初にお目にかかります。私は【セイス近衛騎士団】団長、ユズィ・アギマと申します。この度の任務に同行させていただく事となりました。皆様をお守りできるよう、死力を尽くしますので何卒よろしくお願いいたします」


 真ん中に立つ貫禄のある男性──ユズィが自己紹介をしてくれる。

 彼は、ロリスタンス王国にある騎士団の中で、一番の実力を誇っており、彼が出向く戦場には一人も死者が出ない事で有名だった。


 それだけの強さを保持していながらも、おごらず、調子に乗らず、常に鍛錬を続けている。

 金髪だが、チャラさは一切なく、むしろ金髪のおかげで厳つさの中に柔らかさが加わっている。

 貫禄のある風貌で、一見すると六十代くらいに見えるが、実際は四十代後半と、まだ若かった。


 ユズィが自己紹介を終えると、その両脇にいる二人も慌てて自己紹介を行った。


「お、同じく【セイス近衛騎士団】に所属するモリーと申しますっ!」

「め、メザリですっ!」


 三人が頭を下げる。


「あ、り、リアンと申します! この度は協力を承諾してくださり、誠にありがとうございます!」


 リアンが代表して挨拶をし、三人に頭を上げさせる。


「それより、団長さんが直々に出向いてきて平気なんですか……? 団は……?」

「あぁ、それに関しては心配はご無用です。副団長に後を頼んできたので。彼は私に匹敵する強さを持った騎士ですから」

「な、なるほど……」

「まぁ、それなら安心だな」

「ささ、挨拶も済みましたし、そろそろ向かいましょう。ショタリシアスまでそれなりにかかりますから」


 挨拶を済ませ、会話をしていると、ドゥーザがそう言ってくる。

 それを受け、皆は馬車に乗り込み、ショタリシアス王国へと出発した。


 ☆ ♡ ☆


 移動中は特に問題は起こらず、スムーズに移動する事ができた。


 その為、予定よりも早くショタリシアス王国に到着した。


「そこを右に曲がってもらって……はい。そしたら直進して、次の分かれ道を左に……」


 リアンが御者に、道案内を行っている。

 一つでも間違えれば、王国内に入る事ができないからだ。


「はい。最後に右に曲がってもらえば、後は直進で大丈夫です」


 最後の右折を終えた馬車。後は直進するのみとなり、リアンも御者も安堵の表情を浮かべた。


 そして、直進すること数十分後。

 馬車は無事、王国内へと入る事に成功した。


『ありがとうございました!』


 一同が、御者にお礼を告げる。

 御者は安堵した表情を浮かべながら、去っていった。


「ショタリシアスに来るのも久しぶりだな」

「エリィは前に来た事あるんだっけ?」

「あぁ。数年前にな。そこでハイル様に出会い、助けてもらったんだ」

「そうだったんだ」

「あぁ。だからこそ、あの人が行方不明など信じられない。だから、何があっても必ず見つけ出してみせる」

「そうだね」


 エリィとドゥーザの会話を聞いてしまったイリンは、一人暗い表情を浮かべていた。


「それでは皆さん、ダンジョンに向かいましょう」


 リアンがそう言うと──、


「ダンジョンに? 王城ではなく?」


 と、エリィが首を傾げながら疑問を口にした。


「はい。国王様が、皆様を連れてきた後は直接ダンジョンに向かってほしいと。そこで、捜査をするパーティーを結成してほしいと」

「なるほど」

「クロハさん、いるのかな……」

「そりゃいるだろうよ。ってか、お前まだ謝ってねぇの?」

「しょ、しょうがないじゃないですか〜! た、タイミングが難しくて……」

「全く。そういうのは時間が経つにつれ余計謝れなくなるもんだ。タイミングとか気にしてないで、会ったらさっさと謝れ」

「は、はい……」

「皆さん、行きますよ」


 一行は、ダンジョンへと向かった。


 ☆ ♡ ☆


 ダンジョンへ到着した一行。


「中々に人がいるな」

「だね。こんなに今回の任務に参加してるなんて、それだけみんな、ハイルさんの事を慕ってるってことだね」

「あぁ」


 ダンジョン前に集まっている冒険者達を見て、エリィとドゥーザはどこか嬉しそうだった。


「あ、クロハさん」

「ん? あ! リアンさん!」


 リアン、イリン、ミュリンが先導して歩いていると、リアンがクロハを見つけた。


「お久しぶりです」

「はい! お久しぶりです!」

「ハルさんは?」

「しっかりと目覚めましたよ! ほら、ハル君」

「お久しぶりです。ご心配をおかけしてしまい、すみません……」

「いえ。無事なのならいいんです」

「ハルく〜〜〜ん!!!」

「うぐっ!?」


 イリンがハイルに駆け寄り、勢いよく抱きしめる。

 力強く抱きしめられているので、ハイルは苦しそうだった。


「よかったです〜……! 目を覚ましてくれて〜……!」

「ちょっと! ハル君が苦しそうでしょう!」

「あ、ご、ごめんなさい……!?」

「ごほごほ……! だ、大丈夫です……」


 クロハに注意され、イリンはハイルを解放する。


「全く……」

「あ、あの……」

「ん?」


 立ち上がり、クロハに向き合うイリン。


「あの……その……ご、ごめんなさい……!」

「え、えっと……い、今の事、そんなに謝らなくても……」

「そうじゃないんです……」

「え……?」

「今の事もそうなんですけど……そうじゃなくて、これまで、クロハさんに対して失礼な態度ばっかり取って来たこと、ちゃ、ちゃんと謝れてなかったので……ずっと謝りたいと思ってて……だから、本当にごめんなさい……!」


 イリンの謝罪を受け、クロハは驚いていたが、すぐに気を取り直し、頭を下げるイリンの肩を掴み頭を上げさせる。


「私こそごめんなさい。イリンさんに散々失礼な事を言ったり、態度を取ってるのに、全然謝れなくて……」

「い、いえ……悪いのは全部私なので……」

「そんな事は……私、ハル君の事になると感情が先に出ちゃって……後先考えられなくなるの……だから、あの時もイリンさんに酷い事や酷い態度を……」

「そ、それを言うなら私だって、ハイルの事となると周りが見えなくなって、後先考えられなくなるので……だから、あの時、ずっと不機嫌で態度を悪くして……」


 お互いがお互いに欠点を言い合い、目を見つめ合う。

 そして、おかしくなったのか──、


「「ぷっ!」」


 吹き出して笑い始めた。


「「あははははは!」」

「私達って、結構似てるかもね!」

「そうですね! 私はハイルの事で」

「私はハル君の事で。ふふ。お互い、大事な人の為におかしくなってしまうんだね」

「そうですね。そんな似た者同士、仲良くしませんか?」

「もちろん! イリンちゃんって呼んでもいい?」

「もちろんです! じゃあ、私はクロハちゃんって呼んでもいいですか?」

「もちろんだよ〜! 改めて、これからよろしくね! イリンちゃん!」

「はい! お願いします! クロハちゃん!」


 握手をしながら、その場でテンション高く飛び跳ねる二人。

 そんな二人を見て──、


((いやいや、急に仲良くなりすぎでしょ……))


 と思う、リアンとミュリンだった。


「そろそろいいかな?」


 仲良く飛び跳ねる二人に、エリィが声をかけた事で一気に空気が元に戻った。


「あ、す、すみません。クロハさん、ハルさん。ご紹介します。この人達が、ハイルの捜索に協力してくださる方々です」


 リアンが慌ててクロハ達に紹介をする。


「初めまして。ロリスタンス王国、第一王女、エリィ・ロリスタンスと申します。ロリスタンスの冒険者ギルド【ツインヘル】で冒険者をしております。一応、S級です。そして【セイヴァー】と言うパーティーのリーダーを努めております」


 エリィが最初に自己紹介を行い、次いで──、


「初めまして。【ツインヘル】で冒険者をしている、S級のドゥーザ・ロリスタンスと申します。【セイヴァー】では副リーダーを努めています。防御に徹した戦闘スタイルで、守りには自信があります。そして、エリィの夫です」


 ドゥーザが自己紹介をする。

 ドゥーザがエリィの夫と言った瞬間、クロハとハイルは顔を赤くした。


 エリィを見たハイルは──。


(この人……数年前にダンジョン内で死にかけてた人……だよな? 立派な冒険者になれたんだ……ってか、S級って俺より強くなってるじゃん!)


 と、エリィの事を思い出していた。


「それで、こっちが……」


 エリィが【セイス近衛騎士団】を紹介しようとした時、ユズィがハイルの前に出てくる。そして、ハイルを睨みながら声を上げる。


「もしや、この子供もダンジョンに入るとは言いませんな!」

「ひっ!?」

「もちろん、ハル君もダンジョンに入りますが、それが何か?」

「何をさも当然のように……。あなた達はダンジョンを舐めているのか!!! ダンジョンとは危険な場所! 命をいつ落としてもおかしくない危険地帯だ! そこを子供を連れて入る? 遊び感覚で来られては困るんだよ! これは命を懸けた任務だ。子供のおもりなら、遊場にでも連れて行け!!」


 ユズィの怒鳴りに、誰も何も言えなかった。


 ユズィの言う事が正しいからだ。


 クロハ達は、最初からハルと共に行動をしているので何も気にしていなかった。

 だが、本来であればダンジョンに子供の立ち入りは禁止されている。

 それどころか、ダンジョン付近を訪れる事すら本来であればできない。


 それを、特例で認めてもらっているだけなのだ。


 周りにいる他の冒険者達も、ユズィの怒鳴りを聞いてはいるが、何も言えなかった。


「全く。冒険者のくせにそんな常識も分かっていないとは。ほら、君は家に帰るんだ」

「ちょ、ちょっと離して……! 僕は帰りたくない……!」


 ユズィは、ハルの手を掴み歩き出す。

 ハルをこの場から追い出すためだ。


「ま、待ってください……!」

「君は保護者なのだろう? だったら、しっかりと躾をしておけ! 子供のワガママを聞くだけが親じゃない! それに、子供を死地に連れてくるなど、我が国であれば極刑だぞ!」


(別にそこまで重たい刑にはならないけど……)


 エリィはそう思っていた。


「ほら、行くぞ!」

「嫌っ!? 嫌だっ!? 嫌だーーー!!!」


 抵抗をするハイル。しかし、子供の体では、大人の力には敵わない。

 どんどんとダンジョンから遠ざかってしまう。


 そんな時、ユズィ達の背後から声が聞こえてきた。


「待ってください」


 全員が後ろを向く。

 そこには、ダンジョンから出てきたばっかりであろう、ピンク髪ボブカット少女──セシリアがいた。


「セシリアさん!」


 セシリアは、クロハ達に軽く微笑んだ後、ユズィに近づいていく。

 そして、目の前で立ち止まり、ユズィの目を見つめる。


「どういうつもりだ? 君は子供を危険にさらすつもりなのか?」

「いえ。そんなつもりはさらさらありません」

「ではなぜ止める?」

「その子がダンジョンに入っても、問題ないからです」

「何?」

「私は、リアンさんやクロハさん達とダンジョンに一緒に潜っていました。そこにはこの子もいました。ですが、決して彼がいたせいで危険な目に遭ったり、彼が必要以上に危険な目に遭ったりした事はありませんでした」

「それは結果論に過ぎない。その時起こらずとも、これから起こる可能性は大いにある。だから、未然に防ぐ必要があるんだ」


 セシリアの訴えに、ユズィも一歩も引かない。


「私達は彼に助けられました」

「何?」

「彼はダンジョン内と言う、精神がおかしくなりそうな場所で、心を保つ癒しとして私達を助けてくださいました」

「それでは理由に──」

「それに、彼のダンジョン入りは、ギルドマスターが許可を出してくれています。なので、あなたにとやかく言われる筋合いはありません」

「…………だとしても、子供を命の危険があるダンジョンに連れていく訳にはいかない。何かあってからでは遅いのだぞ」

「これでも、ですか?」

「ん?」


 セシリアは、冒険者の身分証明書である【ギルドカード】をユズィに見せた。

 そこには【セシリア A級】と書かれていた。


「A級である私が、彼を必ず守ります。何かあったとしても、必ず私が守ります。それでも駄目ですか?」

「………………しかしな……」

「ユズィ」

「エリィ様」


 食い下がるユズィに、エリィが声をかけてくる。


「確かに、子供をダンジョンに連れていくのは私も心配だし反対だ。しかしな、ここにはここのルールがあって、周りの冒険者達が彼を認めている。よって、我々がそれに対してとやかく言う権利はない」

「そ、それは……」

「それに、彼には何か、特別な力を感じるんだ」

「特別な、力……?」

「あぁ。よくは分からないが、彼ならダンジョンに入っても全く問題がないように思えるほどの、強力な力を、な。だから、彼のダンジョン入りを認めてやれ」

「…………まぁ、エリィ様がそう言うのであれば……無理矢理引っ張って、すまなかった」

「い、いえ……」

「ハルく〜〜〜〜〜ん!!!」


 ハルの手を離したユズィ。

 解放されたハルに、クロハが駆け寄ってくる。


「うぶっ!?」


 クロハに抱きしめられるハイル。

 大きな胸が顔を圧迫しているので、ハイルは呼吸ができなくなってしまっている。


「く、クロハちゃん……ハル君が呼吸できてないよ……」

「え!? あ、ご、ごめんね!? ハル君大丈夫!?」

「ごほごほ……! は、はい。大丈夫です……」

「話はまとまりましたね。それでは、ダンジョンの中に向かいましょう」


 セシリアがそう言うと、クロハ、ハル、リアン、イリン、ミュリン、エリィ、ドゥーザ、ユズィ、モリー、メザリが声を揃え返事をした。


 そして、一行はダンジョン内へと入って行った。

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