第17話 ロリスタンスへ/結成するパーティー
「はぁ……」
「ミュリン、いい加減元気出したら?」
「分かってるけどさ〜……」
今、リアン、イリン、ミュリンの三人は、馬車に乗り、隣国のロリスタンスへと向かっていた。
そんな馬車の中で、ミュリンはずっと浮かない表情を浮かべ、意気消沈していた。
「一応幼馴染みなんでしょ? 久しぶりの再会を少しは喜びなさいな」
「どのくらい会ってないんです?」
「う〜ん……もう十年くらいになるかな。私がまだ八歳くらいの時に別れて以来だから」
「ミュリンが今十八歳だから、ちょうど十年くらいって事ですね」
「うん」
ミュリンは、ロリスタンス王国にいる幼馴染みのヒメリと言う人物に会いたくないようだった。
幼馴染みであれば、久しぶりの再会を喜びそうなものだが……。
この二人に何があったのだろうか。
「ヒメリ様って年上なんですよね?」
「あぁ。 三つ上だ」
「三つと言うことは、今は二十一歳って事ですね」
「あぁ」
そんな会話を続けていると、御者から声がかけられる。
「皆様、そろそろ到着いたします」
「「「はい」」」
三人を乗せた馬車は、隣国、ロリスタンス王国の国内へと入って行った。
☆ ♡ ☆
「ありがとうございました」
リアンが代表してお礼を述べ、三人は去っていく馬車に頭を下げる。
「それにしても、ロリスタンスに来るのも久しぶりですね〜。前に来た時は緊急任務でゆっくり観光もできませんでしたからね」
「そうね。でも、今日も観光してる暇はないよ? すぐに王城に行って、エリア国王陛下に会いに行かなきゃですから」
「は〜い……ぶ〜……」
「不貞腐れんな。後で時間もらって観光すりゃいいだろ。それに、ハイルを見つけ出してから観光した方が、楽しさ倍増だろ?」
「そ、そうですね! ハイルがいなきゃ、何事も楽しさ半減ですから!」
((ハイルが絡むと本当に素直だな〜……))
「それじゃあ、お城にしゅっぱ〜つ!」
「「お、お〜」」
三人は、王城へと向かった。
「相変わらず大きいね〜」
「お前、城見る度に言うよな、それ。城なんだから大きいのは当たり前だろ」
「そうなんですけど〜。やっぱり目の前に来ると、大きいな〜って思うんですよね〜」
「まぁ、なんとなくは分かりますよ。ほら、入りますよ」
「「は〜い」」
リアンが門番と話を終え、二人の元に戻ってきた。そして、二人と共に城の中へと入っていく。
そして、国王のエリアがいる部屋へと通された三人。
今は、片膝をついて右手を左胸に当て、頭を下げている。
「本日はお時間をお作りいただき、誠にありがとうございます。我が国、ショタリシアスの問題にご協力いただけるとの事。心より感謝申し上げます」
リアンが代表して言葉を紡ぐ。
「相変わらず君は真面目ね。そこまで礼儀正しくしなくていいと、前に言ったと思うのだけれど」
「いや、ですが……」
「三人共、頭を上げて?」
「は〜い」
イリンが真っ先に頭を上げる。
「ちょ、イリン!」
「ん? エリア様がいいって言ってくれたんですよ? だからいいんですよ〜」
「能天気にもほどがあるでしょ……」
「あはは! イリンちゃんは本当に面白い子だね〜。そういう子、私は好きだよ〜。ほら、リアンちゃんとミュリンちゃんも、頭を上げて。そして立ってくださいな」
「ではお言葉に甘えて……」
リアンとミュリンも頭を上げ、立ち上がる。
「それでは改めて……」
「いいいい。そういう堅苦しいのは嫌なのよ。だから、もう少しリラックスして、気軽に。ね?」
「は、はい……」
「ふふ。それで、ハイル様の件よね? メッセージでも伝えたけど、もちろん協力させてもらうわ。彼には返しても返しきれない恩がありますからね」
「エリア様……ありがとうございます……!」
「「ありがとうございます!」」
「それで、ハイル様はどうして、どこで、なぜ行方不明になってしまったの?」
「……………」
「それが……」
「分からないんです……」
エリアの尋ねにイリンは黙り、ミュリンが苦い表情を浮かべ、リアンが答えた。
「分からない?」
「はい……同じパーティーのメンバーから報告を受けただけで、詳しい事は何も……」
「S級モンスターが現れ、二人で戦ったけど敵わなくて、ハイルが逃がしてくれた。それだけしか聞いてないんだ……」
ロリスタンスへ報告した事は二つ。
ハイルが行方不明になった事と、S級モンスターが出現したかもしれない事。
この二つしか報告しておらず、ハイルから報告を受けた “ハイルがガイルを殺そうとした” 事は報告していなかった。
リアン、ミュリンがエリアにそう答えた時、後ろの扉が開き、声が聞こえてきた。
「分からないなんて曖昧な回答、許されると思ってますの?」
その声を聞いた瞬間、ミュリンは顔を引きつらせた。
「この耳障りな声は……!」
ミュリンが歯を食いしばり始めると、カツカツとリアン達に向かって歩いてくる足音が聞こえ始める。
そして、ミュリンの真横を通り、エリアの所にまで行くと、前を向き、再び声を発する。
「全く。協力要請を出しておいて何も情報がないだなんて、私達を舐めてますの?」
「ヒメリ……!」
サファイアのようにキラキラと輝く、深くスリットの入ったセクシーなドレスを身にまとう水色髪の美女。
彼女は『ヒメリ・ロリスタンス』。
ロリスタンス王国第一王子の婚約者であり、ミュリンの幼馴染み。
21歳にしては子供のような顔立ちで、ミュリンよりも年下に見える幼さ。
身長はミュリンより高いが、それも数センチの差。
違いがあるとすれば、体つきだろう。
ミュリンがGカップなのに対して、ヒメリはEカップ。
ヒメリ本人は、胸の小ささを気にしているが、ドレスを少し持ち上げてしまうほどの大きなお尻をしているので、実質プラマイゼロだ。
(ミュリンはお尻がそこまで大きくない)。
ちなみに、ミュリンは身長が低い事をコンプレックスに感じている。
「なんの情報もなしに無条件で協力しろとでも? ふざけるのも大概にしてほしいですの。私達も暇ではなく、母国で起こる色々な問題に対処しなければなりませんの。そこを協力してあげると言っているのに、なんの情報もないだなんて、頭おかしいんじゃないんですの?」
「くっ……!」
ヒメリは、高圧的な態度でどんどん文句を口にしていく。
それを受け、リアンとイリンは下を俯いてしまう。
「その辺に──」
エリアがヒメリに注意をしようとした瞬間、その声を遮り、ミュリンが声を上げる。
「さっきから黙って聞いてりゃ好き勝手言ってくれやがって! こっちだってなんの情報もない事に関しては申し訳ねぇと思ってんだ! それに、情報は私達が何よりもほしいんだよ! そもそも! こっちが協力を仰いだのはロリスタンス王国であって、お前じゃないわ!」
「はぁ?! ロリスタンスに協力を仰いだのなら、それは私に協力を仰いだのと同義でしょうが! そんな事も分からないなんて、昔より頭悪くなってるんじゃないですの? 冒険者になって脳みそが筋肉に支配されてしまったんじゃないの〜?」
「てめぇ……!」
一触即発の空気。
その時、後ろから入室してくる者達が。
「ヒメリ、冒険者を馬鹿にする発言は、私が許さないぞ」
「っ!?」
入室してきた一人の女性の言葉により、ヒメリは黙り込む。
その言葉の主ともう一人が、リアン達の前に立つ。
「我が義妹がすまなかった」
「い、いえ……! そんな……! 頭をお上げください、エリィ王女……!」
リアンが頭を下げてくる女性に対し、慌てふためき声をかける。
ヒメリを黙らせ、リアン達に謝罪をしたのは、ロリスタンス王国の第一王女『エリィ・ロリスタンス』だった。
左腰に剣を帯刀し、動きやすさを重視した騎士服を身にまとう金髪の女性で、普段は髪を戦いの邪魔にならないようにポニーテールにまとめている。
引き締まった体つきで、胸はDとやや小さめだがお尻は中々の大きさ。
騎士服で隠れていないので、下に身に着けている薄いボディスーツが、お尻の大きさ、形、妖艶さ、魅力を際立たせている。
「そ、そうですよエリィお義姉様……! そんな奴らにお義姉さまが頭を下げるなど……!」
「先に無礼を働いたのはお前だろ!」
「ひっ……!?」
エリィに駆け寄ってくるヒメリ。
頭を上げたエリィは、そんなヒメリに対し怒鳴り込む。
「情報がないと言うのはそれだけ緊急だと言う事。それだけ切迫していると言う事。情報がないなんて私達にとっては日常茶飯時だろ。それに、ダンジョンで起こった出来事と言う情報があるだけまだマシだろう。それすらもないのが普通なのだから」
「そ、それはそうですが……」
「そもそも、なぜお前が代表して言葉を発しているんだ? こういった場面での発言権は国王にあると思うが?」
「うぐっ……は、はい……」
「大体な……」
「あ〜はいはい! エリィ、そこまでにしとこう? ヒメリちゃんも反省してるようだし、ね?」
「しかしだな……」
「それにほら、皆さんを置いてけぼりにするのはどうかと思うよ? それこそ、無礼に当たるんじゃない?」
「っ! そ、それはそうだな。皆、失礼した」
「「「い、いえ……!」」」
ヒメリに対し、長々と説教を続けようとしたエリィを止めたのは、エリィと同じく騎士服を着た男性『ドゥーザ・ロリスタンス』だった。
ドゥーザはエリィの夫で、同じ冒険者パーティーのメンバー。
騎士服はエリィのよりもゴツく、守りに徹したような鎧のような物。
エリィの暴走を止められるのは、世界で唯一、ドゥーザだけだった。
なので、ショタリシアス王国に届いた【声記手紙】に乱入したエリィを止めたのも彼だった。
【声記手紙】の時とエリィの様子が違うのは、ドゥーザに怒られたからなのか、それとも、ヒメリがいるからなのか。
シリシアが言っていたのは、この事なのかもしれない。
「落ち着いた?」
騒ぎが一段落したのを感じたエリアが、優しい声音で尋ねてくる。
「は、はい。ご迷惑をおかけしました」
「ドゥーザさんは悪くないでしょう。悪いのはそっちの娘と義理の娘だもの。ね?」
「「は、はい……」」
ドゥーザが代表して謝ると、エリアはエリィとヒメリをそれぞれ見た後、笑みを浮かべた。
その笑みに、エリィとヒメリは背筋を凍らせ、素直に首を縦に振った。
「まぁ、過ぎたことはもういいでしょう。これからあなた達はショタリシアスへ向かう準備をしなきゃならないし、その後、作戦会議もしなきゃ。色々と忙しいんだから、いざこざはこれで終了。ね?」
「「「は、はい……!」」」
エリアの笑みの圧に押され、エリィ、ヒメリ、ミュリンの三人は元気よく? 返事をした。
「「「あはは……」」」
そんな三人を見て、リアン、イリン、ドゥーザの三人は苦笑いを浮かべていた。
☆ ♡ ☆
「いや〜思った以上にあっさりまとまったね〜!」
「あっさりって……五時間以上続いた作戦会議の、どこがあっさりなのよ……」
リアン、イリン、ミュリンの三人は、用意された客室でくつろいでいた。
客室と言えど、かなりの広さで、この部屋だけでリアン達の住む一軒家の広さを超えているだろう。
部屋の中には、ベッドが5つ。テーブルが3つ。椅子が3つの机に4つずつの計12個設置されている。
イリンがベッドに仰向けでダイブしながら言った言葉に、リアンが呆れ気味にツッコんだ。
「まぁ、長かったけど、話のまとまり的にはすんなりだったでしょ?」
「まぁ、それはそうだけど……」
そんな二人をよそに──、
「すぅ〜……すぅ〜……」
「ミュリン、部屋に着くなり眠ちゃいましたね」
「まぁ、今日一日ずっと気を張っていたからね。緊張が解けたんでしょう」
ミュリンは眠っていた。
ちなみに、三人ともパジャマを着ていた。
リアンは、黄色のモコモコパジャマ。
イリンは、紫色のモコモコパジャマ。
ミュリンは、オレンジ色のモコモコパジャマ。
「さぁ、明日は皆さんと一緒にショタリシアスに戻るんです。朝早いからもう寝ますよ。イリンは寝覚めが悪いんですから、さっさと寝てください」
「ひど〜い! 夜型なだけだもん!」
「それを寝覚めが悪いと言ってるんですよ……」
「む〜! 明日はリアンよりも早く起きてやる!」
「はいはい。頑張ってください」
「む〜〜〜〜! 起きるもん! おやすみっ!」
「は〜い。おやすみなさい」
そうして、二人も眠りに就いた。
ちなみに、翌日の朝、全く起きる気配がないイリンにリアンの雷が落ちるのは言わずもがな。




